韓国徴用工判決・猛反発する日本は異常 設置理念に則ったピースおおさかを取り戻す会・共同代表 井上 純

日本政府・企業・報道は真摯に反省を徴用工への謝罪・賠償は済んでいない

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 韓国大法院の新日鉄住金元徴用工判決に対し、マスコミ、政府、経団連など加害企業側、日本会議系など歴史修正主義者たちが凄まじい攻撃をかけている。それは、相手を徹底的にこき下ろし、事実をフェイクだと攻撃するトランプの手法と全く似通ったものだ。

 徴用工問題は、植民地下朝鮮で日本が行った非道=22万人の朝鮮人徴用工、幼い少女を日本の軍需工場に強制連行し、強制労働を強いた勤労女子挺身隊の問題は、双方の司法の場で疑いなき史実と認定されている。

 原告敗訴となった日本の裁判は、1965年の日韓基本条約の解釈問題をもとにした「国家無答責」「時効」といった、被告側と一体となった裁判所の司法権放棄の結果である。日本国内訴訟でも、日本軍「慰安婦」問題では唯一、控訴審で逆転敗訴となったが、関釜裁判での一審判決で原告が勝訴している(日本軍「慰安婦」被害者と勤労挺身隊被害者が原告となった)。

 また徴用工問題でも、1999年「日本鋼管訴訟」で一審勝訴・和解が成立しており、2000年7月、「第一次不二越訴訟」では、最高裁の和解指揮によって謝罪なき和解が成立している。

 安倍首相は、判決について「国際法上あり得ないこと」「1965年日韓請求権協定で完全に解決済み」「大企業に迷惑はかけられない」などと表明した。しかし1965年の日韓条約と同時締結の日韓請求権協定がいう「無償3億ドル有償2億ドル」は、賠償金ではなく、あくまで時の日韓両国政府の間の「経済協力金」であって、個々の被害者への賠償ではない。

 交渉開始から締結まで10余年に及んだ日韓条約交渉は、植民地支配下の被害者にとって最低限必要な個人的賠償はほとんど議題とならず、徴用工の員数や勤労挺身隊の少女の数、「慰安婦」被害の女性の人数などは、交渉の机上に乗ることもなかった。

 この日韓交渉がいかにずさんだったかは、久保田外交官発言を見ればはっきりする。久保田は「朝鮮統治は悪い面もあったがいい面もあった」「韓国人の気質は、強き者には屈し弱き者には横暴となる」など、すさまじい差別的なものだ。

戦後の賠償金は被害者に渡らず八幡製鉄など日本の大企業へ

 ドイツでの「過去・責任・未来基金」による強制労働被害者への補償は、全く異なるものだ。補償金は全世界100カ国の166万人に支払われ、合計44億ユーロ。基金の半分はドイツ国家が拠出し、半分はフォルクスワーゲンとかジーメンス、バイエルなど大手企業ほか約6500社が拠出している。

 一方、日本の賠償金は、韓国の経済的発展をもたらしたといえ、被害者には全く届かなかった。無償3億ドル、有償2億ドルは、日本の大企業に届けられたのだ。典型的例は浦項製鉄所だ。浦項製鉄所に旧八幡製鉄などが大々的に乗り込み、1億1950万ドルを投入し、浦項総合製鉄所を建設したのである。いわゆるОDA方式だ。

 強制連行・強制労働=徴用工加害企業は、戦前は給料すら支払わないか、差別的賃金を強制して収奪し、戦後補償でも賠償していない。日本の戦犯大企業は戦後も居直り続けている。

 1944年12月15日発刊の「軍需會社と徴用法規集」という古書に、次のような会社が一覧化されている。

 三菱重工業株式会社、日本鋼管株式会社、川崎重工業株式会社、株式会社神戸製鋼所、株式会社日立製作所、住友化学工業株式会社、古河電機株式会社、東洋工業株式会社、日立造船株式会社、不二越鋼材株式会社などなど、現存する企業が名を連ねている。

 最後に、今回の韓国大法院の判決は、まったく真っ当な、そして勇気ある判決である。日本の政府、加害企業、マスメディアその他が韓国の判決に応えなければならない。

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