タリバン・政府軍が一時停戦

「戦いを止めよ!」と訴えアフガニスタンで平和行進 キャッシ―・ケリー(米国・「創造的非暴力抵抗」コーディネーター) 翻訳・脇浜義明

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17年間の戦争に民衆はうんざり

 パシュトー族の男たちがアフガニスタンヘルマンド州から首都カーブル市までの400マイルを平和行進し、アフガニスタンの各戦闘グループに戦いを止めよと訴えた。6月8日、ガズニー州ではハザーラ族の女性たちが加わり、みんな一緒にアフガニスタン国歌を歌った。男たちのほとんどは素足にサンダル履きで、休憩するたびにサンダルの破れや足にできたまめの手入れをしなければならなかった。しかし、歩き続ける中で彼らの使命感が強くなった。

 ガズニー州では数百人の住民が宗教指導者とともに彼らを出迎え、彼らの希望と勇気を褒め、連帯を表明した。

 一般のアフガニスタン人は、部族や宗派の如何にかかわらず、この長い戦争を終わらせたい気持ちを共通してもっている。米国がアフガニスタンで戦争を始めて17年間も経っており、平和行進を迎えた若者たちの人生よりも長いのだ。

 6月7日、アフガニスタン大統領アシュラフーガニーはターリバーンへの攻撃を1週間停止すると宣言した。9日には、人数も得体もはっきりしないターリバーン関係戦闘員を代表するスポークスマンが停戦受け入れを表明、続いて米軍もターリバーン攻撃を一時停止することに同意した。

 この停戦から交渉が生まれ、終戦となるのであろうか?  6月初旬に私がカーブルで見た状況から思うと、和平を実現するためには、まず人々が仕事に就いて家族に食料や水を供給できる状態になることが必要だ。

 政府軍だろうが反乱軍だろうが、人々が戦闘員になるのは極貧のためである。賃金になる仕事がないので、米軍を含め部族の軍や民兵団に入って給料を得ようとするのである。カーブルの子どもたちは、父親や兄弟は殺したり殺されたりするのは嫌だけれど、他に家族を養える収入を得る道がないので軍隊や民兵団に入るのだ、と私に説明してくれた。

 中央統計局と国際的NGOの共同調査によると、アフガニスタン国民の54%が貧困ライン以下の生活を余儀なくされている。

協同組合運動を通じて自立的経済建設を目指す

 先週私は「アフガン・ピース・ボランティアーズ」(APV)を訪問した。APVの男性たちはブルカと呼ばれる布を頭に巻き、女装姿で女性の地位向上を訴えてカーブルでデモ行進を行ったことがある。彼らは人間の基本的必要を充たす経済体制の構築を目的として、現在協同組合作り運動を行っている。労働者協同組合を結成、お針子さんたちに衣服仕立て協同組合を作ることを企画・指導し、大工さんたちに木工協同組合を作らせることも検討している。これらはすべて、彼らが目的とする自立的経済建設の一環である。

 APVは「ムスリムのガンジー」と呼ばれたバドシャー・カーンを精神の父としている。カーンは1919年にガンジーに会って影響を受け、現在パキスタンとアフガニスタンの国境にあたる地域でパシュトゥン人を教育し、英国の占領への非暴力抵抗運動を組織した。彼らは「クダイ・キドゥマトゥガル」(神の僕)と名乗り、英国への協力を拒否、自立生活を追求した。

 自らの生活空間建設計画を立て、英国の厳しい弾圧に負けなかった。カルフォルニア大学のマイケル・ネーグレー教授は「神の僕」運動について、「1930年英国がペシャーワルで虐殺を行ったため、『神の僕』運動は数百人規模から8万人規模に拡大した」と書いている。彼らは武装闘争を行わず、ガンジーの教えに従って非暴力抵抗に徹した。彼らの闘いがアフガニスタンの英国支配からの解放に大きく貢献した。

 バドシャー・カーンは好んで徒歩で移動した。身を守る武器を持たず、善意と自分の主張の正しさだけに依拠して、山村や離村をつなぐ山道を歩いた。

 カーブルのAPV事務所の入り口に彼の肖像があり、その下に彼の信念の言葉が刻まれている。「私の宗教は真理、愛、そして神と人類への奉仕である」

 私の国、米国、の宗教は軍国主義である。他国の人々に友好の手を差し伸べることをしないで、アフガニスタンで見られるように、支配と軍事力で自国の安全保障に外国を利用するだけ。

 そのためにその国の人々が飢え、苦しもうと平気である。しかし、そんなやり方は安全への脅威を増やすだけだ。ヘルマンド州からカーブルまでの平和行進こそが平和への確実な道であることを示している ― 隣人と仲良くすること、同じような素朴な生活を営むこと、他者が直面している困難と不安を、たとえ部分的であっても、共有する気持ちだ。

 この平和行進が、アフガニスタンの普通の人々だけでなく、アフガニスタンに流血と破壊をもたらしている国々や武装集団に届くことを、望んでやまない。

 

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