オルテガ政治に大衆が反乱
「サンディニスタ革命運動」で地位を確立したオルテガ大統領。しかし4月、政府の年金改革政策に反対する大衆デモに対し、死者数十人、負傷者数百人にのぼる弾圧にを行い、彼の反革命性が露呈した。
米国や旧寡頭勢力は、ニカラグア政府を自分たちの意のままにするため、オルテガと組んでいる。またサンディニスタ側も、1980年代革命以降の過程で、次第に国家官僚エリートに同化、2007年選挙で勝利し、第二次オルテガ政権を形成してからは、積極的に資本主義的発展を目指すようになった。オルテガらFSLN(サンディニスタ民族解放戦線)は、資本と国家のヘゲモニーのもとで、左翼用語を使ってポピュリスト的階級連合政治を形成、資本主義の道を歩んだ。
FSLNは、農民と都市貧困層に基盤を持つ政党だが、指導者は旧寡頭勢力や外国企業と同盟関係を結び国家資源を収奪して肥え太り、自身に反対する民衆を、軍と警察と民兵を使って弾圧した。この路線が危機に陥り、年金カットなど労働者にしわ寄せする政策で乗り切ろうとしたため、4月の大衆反乱となった。
一方、1990年の政権交代のとき公的資源を私物化した指導者たちは、新サンディニスタ・エリートとして再登場した。彼らは、反革命的資本主義建設に抵抗する草の根民衆を無視し、ブルジョア層と混じり合い、FSLNの権威と影響力を利用して、大衆を丸め込もうとした。革命左翼の言葉を使ってネオリベラル政治に加担したのである。
私腹を肥やすエリート指導層
1999年、FSLNは旧寡頭の一部自由同盟(AL)と同盟関係になった。そして、軍と警察を使って、農地改革で土地を手に入れた農民から土地を奪い、自主管理工場から労働者を追い出し、平和的デモを弾圧する政策を黙認した。
2006年選挙で、FSLNは経済利益を擁護すると言ってブルジョア層と外国企業を安心させて、辛うじて勝利した(34~36%の支持票で辛勝)。経済政策として「新サンディニスタ計画」を発表、弱小企業の大企業への吸収、私的財産尊重、自由貿易、外国企業の誘致、農業企業化などが内容で、それを「公と民のパートナーシップ」で進めようというもの。
しかし、同時に、医療部門や教育の再公営化や社会福祉支出の拡大も含まれていた。ただし、この福祉面はFSLNの縁故関係で支給されることが多く、FSLN党勢拡大のための利益供与という特徴が強かった。オルテガの経済顧問はこの計画を「貧者を選択的に優遇する市場経済」と呼んだ。政権に返り咲いたサンディニスタ・エリートは私腹を肥やした。
ニカラグアの問題は、資本主義発展を追い求めることから生じる矛盾である。自然資源乱採掘、農業企業化、観光、メガ・インフラ建設、外国企業へのタックス・ヘイブンなど、グローバル資本主義が生み出す矛盾である。
批判される弾圧大衆運動は続く
自由貿易地区で働く10万人以上の若い女性労働者は、低賃金と劣悪な労働環境に放置されたまま。平均月収は157ドルで、生活費の33%を充たす程度。2016年、労働者がストで抗議したが、暴力的に弾圧された。
天然資源採掘やインフラ建設による環境破壊に、環境活動家、農民、先住民、アフリカ系民衆たちが抗議したが、中国企業とオルテガ政府によって非人道的な弾圧を受けた。
国際左翼の中には、FSLNや南アのアフリカ民族会議を貧困民衆や労働者階級の利益になる革命勢力だという幻想を抱いていて、上述した矛盾をすべて米国の介入のせいにする人々がいる。しかし、ラテン・アメリカ社会科学学界は、もっと理性的な見解である。学界も旧寡頭勢力と外国資本や米国介入や国際メディアを批判するが、ニカラグア政府の民衆弾圧を批判する声明も出している。
4月反乱の結果、オルテガは年金改革を撤回したが、資本主義政権と民衆の対立は、まだまだ続く。
(出典:Truthout/2018・5・18)