5月19日(土)13:30開場 14:00~17:00
会場:京都大学吉田南キャンパス 総合人間学部棟1階1102教室
参加費:カンパ制
(報告)境 敦(ルネサンス研究所関西運営委員)
過去の大きな物語といえば、社会主義・共産主義でした。弁証法や史的唯物得諭を前提に、生産力と生産関係の矛盾から、社会変革の不可避性を物語っていました。しかし、ソ連崩壊後、この物語は人々の間では影響力を失いました。
新自由主義が、英米で政治権力を掌握して、30年近くたち、ソ連崩壊時には新自由主義は世界制覇をしましたが、しかし、先進国では格差が拡大し、労働者の非正規化が進み、社会の安定が失われてきています。そしてそれに対抗する様々な運動が世界中で巻き起こっています。その一つの運動基盤として社会的連帯経済があります。これは古い物語ではとらえきれない運動です。このような現実に超面している現在、古い物語に代わる新しい大きな物語を紡ぎ出すことには重要な意義があるのではないでしょうか。このような観点から、社会的連帯経済理解のための話題提供と創作的な討論を呼びかけることにしました。奮ってご参加ください。
新しい大きな物語を紡ぎ出そう大きな物語について
大きな物語といえば、ソ連崩壊までは、今の社会を変革して社会主義・共産主義をどのようにして創り出すか、というお話でした。いまそれは魅力のないお話として影響力を失っています。しかしだからといって、現在の資本主義社会が安定しているわけではないですね。
ソ連崩壊後、世界体制となった時の資本主義のイデオロギーは新自由主義でした。天下を取った新自由主義は、民営化と規制緩和を掲げ、特に金融の分野でグローバルな体制を作りましたが、それは債務を土台とした非資本主義的なシステム(負債経済)をはびこらせ、リーマン・ショックで負債経済の破綻を招きました。しかしその後、負債経済を救済するために、各国中央銀行は前例なき金融緩和に踏み切り、超低金利政策を続けています。その結果資本に利子がつくという資本主義の大前提がゆがめられ、非資本主義的な負債経済を救済するために、資本主義の存在そのものが破局的な事態にさらされるようになり、格差拡大、債務を抱えた人々の増大、等々(橋本健二『新・日本の階級社会』、講談社現代新書、参照)で社会の維持が困難となり、国家は危機管理国家としての機能をますます強化してきています。
このような現状は、この間大衆運動が低調だった日本でも、政治運動、社会運動の新たな展開を創り出していますが、それぞれ頑張っているのですが、しかし個別での闘いになり、全体としてのパワーを創り出せず、5年間にわたり、安倍を引きずり下ろすことに成功してきませんでした。
運動の側に欠落しているものは何でしょうか。いろいろありますが、私はやはり、過去の大きな物語が魅力を失っている状態で、人々が現在の社会を変革するための新しい大きな物語を紡ぎだせていないということに注目しています。それで、「政治運動と社会運動を横断する新しい大きな物語を紡ぎ出そう」という課題を掲げました。
この問題意識は、たとえば今皆さんが注目している社会的連帯経済自体、新自由主義の鬼子であるということと関連しています。新自由主義が官業の民営化や行政の仕事の民間委託などを実行したことによって、社会的企業が生まれ、それが成長することで、社会的連帯経済が形を成していったという関連があります。古い大きな物語からすれば、新自由主義のこの動きは、福祉国家の解体であり絶対反対という視点に立ちますから、社会的企業自体も何か、妥協の産物的と捉えられ、それを運動の中に位置づけられません。これでは現在の運動を発展させるという要請にこたえることは出来ないでしょう。
当日の問題提起
私は、政治運動30年、その後社会運動30年を経験しました。それで最初に「私はなぜ政治運動から社会運動に転身したか」についてお話します。1959年から政治運動30年、その総括から1988年から社会運動の参与観察をはじめますが、その理由について説明したいのです。
次に、社会運動も30年になりました。社会運動の意義についていくつかの問題提起ができます。それで「現段階での社会運動の意義」というテーマでお話します。 何分あまり聞きなれない事柄が多いと思いますので、質問を受け付け、議論をする時間を十分もうけたいと考えています。
主催:京都大学社会科学研究会 ピース・ナビ
連絡 e-mail peacenavi@gmail.com