ルネサンス研究所 3月定例研究会「資本主義世界システムとは何か――社会思想史の視角から」


イベント詳細


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3月8日(火)18:30開始(3時間弱)
オンライン
資料代:500円
以下のメールアドレスに参加予約を頂いた方に招待メールを送ります。
renaissanceinstitutetokyo@yahoo.co.jp 「参加希望」のメールをお送りください。こちらからの確認メールで資料代の払い方をご案内します。
報告者:植村邦彦(関西大学)
著書に『隠された奴隷制』(集英社, 2019)、『壊れゆく資本主義をどう生きるか――人種・国民・階級2.0』(若森章孝共著, 唯学書房, 2017)、
『ローザの子供たち、あるいは資本主義の不可能性:世界システムの思想史』(平凡社, 2016)、
訳書にカール・マルクス『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』(平凡社, 2008)など多数。
フランスの政治哲学者エティエンヌ・バリバールはウォーラーステインとの共著において、
民族(エスニック)的、ジェンダー的な多様な敵対関係の現象を「階級なき階級闘争」として分析する視点を提起しました。
沖縄県沖縄市の若者らによる警察署投石事件(一月)をきっかけにネット上で異様な「沖縄ヘイト」が噴出していますが、
このようなレイシズムと対抗するために、現在でもバリバールの視点は有効であると考えられます。
しかし他方でコロナ禍が露呈させたように、格差が拡大し多くの人が生存権を脅かされており、「階級」の回帰は誰の目にも明らかです。
人種差別批判・性差別批判の「(階級なき)階級」闘争と、経済的「階級」闘争との節合が今ほど必要とされている時はないのではないでしょうか。
二十世紀の歴史を振り返ってみれば、民族の解放(=反レイシズム)を経済との関連で考えてきたのはマルクス主義者たちです。
今回お招きする植村邦彦さんは近著で、ローザ・ルクセンブルクから従属理論派を経て世界システム論にいたる「資本主義の終焉」論の系譜を研究し、
また資本主義世界にとっての植民地支配と奴隷制の意味を考察しています。思想史を通して現在の課題に迫っていければと考えます。
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2008年のリーマンショックと2011年の欧州経済危機以来、いわゆる先進資本主義諸国では「資本主義の終焉」が大きな話題になってきました。
その指標とされたのは、経済成長率の低下、国債をはじめとする負債の増大、経済格差の急拡大、などです。
2019年に始まる新型コロナ感染症の拡大は、これらの傾向をさらに加速しました。
このパンデミックの世界的拡がりは、それ自体がグローバリゼーションの一つの側面であると同時に、
その反面で、サプライチェーンの機能停止に象徴される新自由主義的グローバリゼーションの限界をも露呈させました。
日本の首相が「新しい資本主義」を主張するという悲喜劇もまた、その産物の一つだと思います。
このような状況をどう考えたらいいのか。ここでは、時間的視野を広く取って、マルクスからローザ・ルクセンブルクを経て20世紀後半の世界システム論へ、
さらには21世紀の「資本主義の終焉」論にいたるまでの、150年にわたる資本主義世界システム認識の言説をたどり直すことにしたいと思います。
それらを確認することで、実践のための直接的な指針は得られないまでも、少なくとも資本主義世界システムの基本的矛盾を確認することによって、
現在の私たちが置かれている状況を考えるための議論の水準を上げることができるのではないでしょうか。(植村邦彦)

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