ルネサンス研究所 4月定例研究会 「ロシアのウクライナ侵略以降の世界の多極化の行方」


イベント詳細


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4月12日(火)18:30開始(3時間弱)
オンライン
資料代:500円
報告:佐原徹哉(バルカン現代史・明治大学教員/『中東民族問題の起源: オスマン帝国とアルメニア人』(白水社)
主催:ルネサンス研究所
連絡:renaissanceinstitutetokyo@yahoo.co.jp <mailto:renaissanceinstitutetokyo@yahoo.co.jp>
「参加希望」のメールをお送りください。こちらからの確認メールで資料代の払い方をご案内します。
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今年2月に入り急に始まったかのように見えたウクライナ=ロシア戦争。しかし背後には長く続いた「前史」がありました。
ロシア(プーチン)側の言い分としては、
米国は冷戦崩壊の際にはNATOを東欧圏にまで拡大することはないと約束していたにもかかわらず、
ロシアを仮想敵としたうえでロシアの近隣諸国までNATOに加盟させるのは約束違反だと。
しかし、必ずしも主権国家体制を不可侵のものとは考えない私たちから見ても、今回のプーチンによるウクライナ軍事侵攻には一片の正当性もありません。
いったい何がプーチンをここまで暴走させたのでしょうか。また、今回の戦争が終わった後の世界秩序はどのように変貌するのでしょう
か。米中の貿易摩擦から世界的な米中二極体制の成立と米中対立構造の確立を予想してきた私たちも国際情勢認識の練り直しを迫られています。
今回は、バルカン半島やトルコの現代史を専門とする研究者を招いてお話を伺います。
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「過去30年間、わたしたちはアメリカの戦争を何度も経験し、それへの対応にも慣れていますが、
ロシアのウクライナ侵略は全く逆の構図であるため戸惑っています。
欧州や日本の社会民主主義者や「共産党」や「リベラル」の態度は
「自由」を守るためにロシアの侵略と戦うウクライナ人に武器を送れと主張する保守派やファシストたちと殆ど変わりません。
彼らには、武器を送れば戦争が激化し、核戦争に発展するという想像力が欠けています。
一方、日本の反ファシズム勢力も、ロシアの侵略反対は掲げても、
戦争の責任はアメリカの帝国主義であり「日米同盟」を通じて我々自身にも責任があるという当たり前のことすらはっきり言えない状況にあります。
わたしたちはどこかで間違ってしまったのです。

私には、原因の一つが、私たちが世界をアメリカ帝国主義とそれに対抗する勢力の相剋と捉えてきたことにあるように思えます。
私たちはアメリカのアフガンとイラクへの侵略に反対してきましたが、アフガンとイラクの人々をアメリカ帝国主義の犠牲者と考え、
かなり無邪気に彼らとの連帯を主張してました。そして結果的にジハード主義者の台頭に手を貸したのでしたが、
今回の事態でも同じ間違いが繰り返されつつあります。ウクライナ支援キャンペーンは、この国の好戦的排外主義者を一層増長させるだけでなく、
ゼレンスキー政権を支持するかしないかの一点で世界を二分化する「新冷戦」型の思考様式を定着させることになるでしょう。
保守派やファシストは、ゼレンスキー政権を支持しない者は「親露派」であり「権威主義陣営」の手先であると強弁していますが、
我々はこれに対抗する論理を持たねばなりません。そのためには我々の世界観を再検討する必要があるのではないでしょうか。

ウクライナ侵略でロシアは世界から孤立していると日本のメディアは伝えていますが、
対露経済制裁に参加しているのは西欧・北米・豪州など「西側」諸国だけで、世界の国々の大部分は中立を維持しています。
こうした国々は、この戦争が「西側」とロシアの戦争であって、自分達が巻き込まれるいわれはないと考えています。
中立諸国の大部分がアジアやアフリカや中南米の植民地経験国ですから、
中立の背景には「西側」が作り上げてきた帝国主義の世界秩序の中で不当な扱いを受けてきたという共通の思いがあるとも言えます。
こうした態度が取れることは、既に世界が変わっていることを示しています。中立はアメリカ一極集中の時代には不可能でした。
世界はアメリカ一極集中の構造から多極化に向かっているのです。

多極化とは、複数の主導的国家が台頭し、様々な地域機構や経済圏が生まれてゆく状態を意味します。
その背景には21世紀に急速に進んできた新興国の経済発展があります。
新興国は世界の財の大半を生産しているのに、その利益は金融制度や「知的財産権」を通じて「西側」の大企業に吸い上げられています。
新興国はこうした不当な「ルール」の変更を求めていますが、アメリカと同盟国はそれを「国際秩序」への挑戦と捉えています。
これが「新冷戦」型の思考様式の基盤です。こうした世界観の影響はウクライナ侵略でもはっきり現れています。
「西側」は中立国を「権威主義陣営」だと不当なレッテルばりを行っています。
日本のメディアが中国の中立政策を非難するのはその典型で、中国をロシアの「同盟国」だとする嘘までまかり通っている始末です。
ファシストはこうした手口によって世界を二分化し、「新冷戦」型の思考様式を定着させようとしていますから、それと戦うことは大前提です。

しかし、ここから飛躍して、ウクライナ侵略を「ファシズム対反ファシズム」の構図で理解したり、
世界が帝国主義と反帝国主義に二分化されていると結論することも間違っています。
中立国は様々な思惑を抱えており、その中には地域大国化して独自の小帝国主義を目指す国々も含まれています。
考えてみれば、今回の戦争も「共産党抜きのソ連の再建」というプーチンの小帝国主義が原因でした。
多極化は「西側」対「新興国」という対立軸だけでなく、「西側」内部の対立と「新興国」同士の軋轢を含んで複合的に展開されているのです。

多極化は、圧倒的多数の従属状態にある国々にとって、歓迎すべき現象です。
西側モデル以外の選択肢が出現したことで、各国の条件に適った経済発展政策を立案する余地が広がりますし、
交渉力も高まり、相対的自立性が確保できるからです。
しかし、多極化とは、基本的には資本主義国家の相剋であって、新植民地主義の打倒や人間の解放をもたらすとは限りません。
新興の地域大国が跳梁跋扈してゆけば、古典的帝国主義戦争の時代に逆戻りする可能性すらあります。
多極化によって出現したチャンスを人間の解放につなげるには、国家の論理に対抗できる民衆運動の力が不可欠です。

今回の企画では、世界の多極化という観点から考察した場合、ロシアのウクライナ侵略はどのように捉えられるのかを説明し、
今回の出来事がこれからの世界にどのような影響を与えるのか、
そして、反ファシズム勢力はどのような行動を取るべきなのかを皆さんと議論したいと考えます。(佐原徹哉)」

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