ルネサンス研究所 2020年1月研究会≪テーマ≫友常勉『夢と爆弾ーサバルタンの表現と闘争』(航思社)を読む


イベント詳細

  • 日付:
  • カテゴリ:

Pocket

1月14日(火)18:00  18:30開始
会場:専修大学神田校舎7号館7階774教室
資料代¥500
<提題者>小美濃彰(東京外国語大学大学院博士課程)/羽黒仁史(大学生)<リプライ>友常勉(東京外国語大学国際日本学研究院)
本書『夢と爆弾』(航思社、2019年5月)は、友常勉氏のきわめて濃密な思考に満たされた一冊である。「流動的下層労働者」/「東アジア反日武装戦線」/「サバルタンと部落史」/「アイヌ民族」/「表現と革命」。
「サバルタンの表現と革命」という主題を支えるこれらのトピックは、著者が長きにわたって思索と叙述を重ねてきたもので、本書に収録された論考はこれまでにも多くの示唆を読者に与えてきたのではないだろうか。
この一冊を通じて、また新たな読者が大きな刺激を受けていくであろうことは間違いない。しかし、当然ながら本書の意義は単行本化だけにあるのではない。
書き下ろしのひとつ、「商品の反ラプソディックな実在論とラプソディックな革命論」(102-122頁)は、井上康・崎山政毅『マルクスと商品語』(社会評論社、2017年)との対話を経て紡ぎ出されたひとつの手がかり――「西洋中心主義でも近代化論でもないラプソディックな結合による革命論」(121頁)――を提示している。
そして、International Journal of Japanese Sociology(2019年3月号)に発表された原稿を日本語に訳出した「ヘテロな空間をつくりだせ」(8-37頁)は、その革命論を寄せ場の運動史に見出そうと試み、そこで展開された階級闘争を思想史的に、かつ現在の状況に接続させながら位置づけるための重要な提起として読むことができるのではないか。そこに、もうひとつの書き下ろしである「アンダークラスと獄中者組合」(37-44頁)が加えられ、「アンダークラスが、自身の解放闘争を通じて世界とつながっていく回路」(44頁)を開いた獄中者組合の実践が描かれる。合評会では収録された著作のうち最近のものを本書のひとつの軸として捉え、寄せ場の資料調査にも携わっている報告者の立場を自覚しながら提題を行ないたい。寄せ場をめぐる本書の叙述は、とくに1970~80年代に展開された闘争が、“階級闘争”をという言葉を陳腐化してしまう狭隘な想像力を爆破するような強靭な思考に満ちていたことを明らかにしている。
それに対して現在の寄せ場はどのような課題に直面しているのか、山谷における闘争はすでに焦土化してしまったのだろうか?このような問いはおそらく、「部落解放運動の現在とこれから」(233-250頁)での著者の問題提起にも通じる。ヘテロな空間をつくりだせ」という著者の声に応じて、これからの闘争に向けた議論を深めていきたい。本書の構成は寄せ場から各地の運動、そして様々な表現闘争へと展開している。しかし、実際には逆方向の思考を積み重ねていくことによってこ寄せ場の重要性が浮かび上がっているということを忘れるべきでない。このことを意識しながら、すべての参加者が自由に発想を交わすための一助となるように議論を提起できればと思う。小美濃彰
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
友常勉氏はかつて『戦後部落解放運動史』において〈身分〉を「生きた労働主体が有する性別、人種、文化、言語、慣習などの個別性」と身分概念を拡大解釈しつつ、〈身分〉と〈階級〉のアポリアについて部落解放運動を通して論じた。『夢と爆弾』では、山谷や東アジア反日武装戦線、部落史、あるいは吉本隆明や石牟礼道子など多岐にわたる「サバルタンの表現と闘争」を通じて、「生きた労働主体の有する個別性=身体性を剥奪して〈国民〉あるいは〈労働力〉として平準化する国民国家と資本主義社会システムを「脱構成」する主体化の契機を提示してみせている。と同時に、国民国家と資本主義社会システムに統治される人びとのあいだに横たわる差異を同化と差別(あるいは包摂と排除)へと転化しないよういかにして連帯するか、換言すれば「反身分差別闘争・反帝国主義闘争・階級闘争の結合」が可能になる地平=「ヘテロな空間」をいかにして獲得するかという問題意識に貫かれているといえるだろう。こういった視点から本書を読み解いていきたい。  羽黒仁史、
主催:ルネサンス研究所

Pocket