「ゲノム編集食品」の届け出の受け付けが、10月1日から始まった。7月のこの欄で、遺伝子を壊すだけの手法の場合、厚労省は安全性審査をせず事業者からの届け出のみとすることをすでに決めていて、消費者庁は表示を義務化しない方針を固めたことを伝えたが、この方針が見直されることなく届け出制度の運用が始まってしまった。
昨年の調査で「食べたくない」が4割を超え、9月25日には規制と表示を求める署名8万筆が関係省庁に提出されるなど、安易で性急な市場流通に反対する多くの声を突っぱねての解禁だ。
反対の声の多くは食の安全性を懸念している。しかし、この側面からの問題意識は本紙の読者には届きにくいかもしれない。左翼というのは、何を食わされているのか分かったものではないような激安飲み屋でデモの打ち上げをする人々だからだ(自戒をこめて)。そこで言い方をかえてみる。
バイオテクノロジーは、2018年6月に閣僚決定された「統合イノベーション戦略」の重点領域に挙げられていて、安倍政権の成長戦略の重要な柱のひとつと言っていい。さらにこの解禁は、ゲノム編集食品をすでに商品化している米国からの輸入の垣根を下げ、特許を握る多国籍企業の食料支配に道を開くことでもある。つまり、すぐれて現在的な資本主義批判の対象とされるべき問題なのである。
利潤率の低下に苦しむ資本主義が、危機の先延ばしをはかるための技術的方策としてAIとともに焦点化するこの技術の規制と表示を求める闘いは、今日の反資本主義運動の最前線だ。