2014/12/29更新
総選挙で自民党は、全有権者の4分の1(小選挙区)、比例代表の16.99%が支持しただけなのに、議席の6割を超える291議席を獲得、自公与党で3分の2を越える絶対多数を獲得した。原発再稼働、安保政策の変更から9条改憲へといたる、選挙後の政治状況を考えると、運動の立て直しを真摯に考えざるを得ない。年内最終号は、総選挙結果に対する意見特集とした。
各地・各戦線からの総選挙への評価・来年に向けての展望として掲載する。(文責・編集部)
「アベノミクス」を加速すれば民衆反乱は必然/編集部より
「オール沖縄」が示した反自公ファシズム統一戦線の課題/阪南大学准教授 下地 真樹
「オール沖縄」で初めて「沖縄の自己決定権」提起した選挙に/那覇市議会議員(沖縄社会大衆党) 平良 識子
広がりのなさ・「中間」のなさは社会運動の本質的問題でもある/大阪府豊中市議(無所属) 木村 真
今回の衆院解散が、唐突で必要性がなく、明らかになり始めたアベノミクスの失敗を糊塗して、手をつけた重要政治課題について白紙委任状を得るための詐術的な政治手法であることは、多くの有権者が感じとっていた。にもかかわらず自民党が圧勝したのは、自民と政策的にも大差ない民主党をはじめとする野党の不甲斐なさはあるにしても、ひとえに小選挙区制という選挙制度の歪みであり、代議制という統治手法が機能不全に陥っている証拠と言える。
アベノミクスが何を生み出したかは、経済指標でも明らかになりつつある。@実質賃金の低下、A円安による物価高、B大企業利益の極大化、C中小企業の倒産、D非正規雇用の増大と正規職の減少、E富裕層の資産増大、などなど…。要するに、貧乏人・中間層から金をまきあげ、金持ちに移転させるという「経済成長戦略」なのである。
選挙後、安倍首相は、「アベノミクスが信任を得た」として、これを加速させるとしている。富裕層・大企業の利益・権益を極大化し、彼らの「安全」を保障するために、年明け以降、原発再稼働、辺野古基地建設、集団的自衛権行使、TPP参加、派遣法改悪、解雇規制緩和など、絵に描いたような金持ち奉仕・保護政策を強力に推進するだろう。
今回の衆院選で評価できるのは、@沖縄選挙区での非自民候補の全勝、A「次世代の党」の大敗北、の2点だ。辺野古基地反対派が沖縄の小選挙区全区で勝利し、県知事選結果と合わせて、「新基地反対」の県民意思を明白に示した。また、「次世代の党」は、「自民党より右」を標榜し、ネット保守を主な基盤にした政党だが、在特会のような排外主義が若者の間でそれほど大勢力ではないことも示した。
こうした時代にあって、主要な課題は、民衆運動の拡大と政治化である。世界は大きな変革期にある。米国の斜陽化が顕著で支配秩序が大きく崩れるなか、世界の覇権をめぐる争いと混乱が続いている。ロシアによるクリミア半島の編入、イスラム国の台頭なども、その結果である。
グローバル企業が闊歩する新自由主義世界にあって、「99% VS1%」のスローガンを掲げたウォールストリート占拠運動は、欧州へと広がり、アラブの春へとつながった。そして今、じわじわとアジアへと広がりを見せており、台湾・香港の青年・学生層を鼓舞し、長期にわたる国会や道路占拠を成功させた。
安倍政権の露骨な大企業奉仕、富裕層優遇が加速されれば、「アベノミクス」の恩恵に浴せない中・下層が増え、政権への怒りは強まり、安倍政権打倒の陣形は広がる。そして、「アベノミクス」の虚飾が剥がれた時に、自民党は大きな挑戦を受けることになるだろう。
経済不況による不満をナショナリズムに回収し、変化への願望を「強い指導力」に収斂させる政治手法は、「かつてきた道」を想起させるに十分だが、そうした時代には、さまざまな個別課題相互の問題意識を重ね合い、違いを認め合いながら共通の敵を見定めて「政治化」していく力量が問われる。
そうした直接民主主義の実践のうえに、香港で学生・青年たちが、街頭を占拠して政権に迫っていったような大衆的街頭闘争が次代を開く。
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