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2013/7/11更新

伊方原発再稼働阻止現地行動 〜1〜   2

電力会社救済のための再稼働    「原子力ムラ」の復活
大義なし、安全確保なし、避難計画なし

原子力規制委員会は、6月19日、新規制基準を決定。7月8日の施行日には、電力会社からの再稼働申請を受け付ける。規制委は、基準への適合状況を審査するため、事務局の原子力規制庁に約80人の検査員を配置し、3チームに分けて審査を行う、としている。

電力各社は、7月中に5原発10基を申請する見通しだが、新基準で最初に再稼働が認められるのは、3つの原発ということになる。再稼働に最も近い原発は、泊原発(北海道電力)、高浜原発(関西電力)、伊方原発(四国電力)、川内原発(九州電力)といわれており、なかでも伊方が「地元の理解が得られやすい」という理由で最有力候補とされている。

6月23日、伊方現地で「止めよう伊方原発再稼働阻止緊急集会」(八幡浜市松蔭公民館)が行われた。24日には、伊方原発ゲート前での抗議申し入れ行動、伊方町と愛媛県知事への再稼働反対の申し入れ行動も取り組まれた。2日間にわたる現地行動を同行取材した。(編集部・山田)

再稼働のトップランナー 伊方原発(愛媛県)現地行動

今回の現地行動は、「再稼働阻止全国ネットワーク」が呼びかける三波の全国行動の一環として取り組まれた。緊急集会には、地元民をはじめ、鹿児島・石川など再稼働申請予定地、大阪・大分などで反対運動に取り組むメンバーや東京のたんぽぽ舎など、全国から約80人が集まった。

集会は、伊方原発立地当時(1973年営業運転開始)から反対運動に取り組み続ける近藤誠さんの基調報告から始まった(下囲み記事参照)。これを受けて、全国各地での取り組みが報告され、再稼働阻止に向けた具体的戦術・戦略について議論した。

これらから明らかになったことは、@規制委員会が「世界一厳しい」と自画自賛する新規制基準は、日経新聞ですら「ようやく世界基準」と評する甘いものである。Aその審査も、様々な例外や猶予期間がもうけられており、現状追認するだけの方便に他ならない。B原発再稼働は、電力確保のためですらなく(電力は足りている)、電力各社の財務改善(つまり金儲け)が目的である。さらには、C予想される大地震の防災計画は、原発災害を想定外としており、住民の命を守るという大原則が蔑ろにされている現状が明らかになった。

伊方原発で過酷事故が起これば、佐田岬半島の西側住民約5000人は、海に逃げるしかなく、事実上見殺しにされることとなる(2面参照)。また、瀬戸内海が放射能で汚染されれば、内海のために長期間放射能が留まり続け、内海に面する中四国・九州・近畿の漁業は壊滅的打撃を受ける。

原発災害に「地元」はない。いったん過酷事故が起これば、放射能が極めて広い範囲を汚染することは、チェルノブイリ・福島事故で実証された。次の原発災害は、どこで起こっても、日本全体の沈没につながる。東の福島に続く西の伊方事故は、日本に致命傷を与える。

電気が足りていることは、昨年夏で実証済だ。原発災害という大きなリスクを負ってまで再稼働しなければならない理由は、どこをどう探しても見あたらない。

松山市も被災地に?

伊方原発から約55q離れた県庁所在地=松山市は、私の故郷だ。福島事故では、福島原発から30〜50q離れている飯舘村が、全村避難という汚染地となった。伊方で福島なみの事故が起これば、風向きによっては、松山(人口・51万人)も人が住めない地域となる可能性がある。10q圏内に八幡浜市(3万6千人)、20q圏内には大洲市(4万5千人)が含まれる。

この日、松山市内最大の繁華街でビラ撒きをしたが、やはり反応は鈍い。「原発災害は南予地方の問題で、松山は避難先」くらいの感覚なのだろう。原発事故が何をもたらしているのか?福島の現実についてリアリティがないのだ。

遠巻きに眺める通行人に、大熊町から駆けつけた木幡ますみさんは、「自分も原発は安全だと思っていた。ところが、いったん事故が起これば避難生活を強いられ、家族がバラバラになる辛さ」を訴え、そして「松山の豊かな風景と人情を守るために再稼働に反対しましょう」と締めくくった。木幡さんの心に響くアピールは某公共放送局が撮影していたが、放映されたという話は聞かない。

「伊方原発には活断層問題がない」というウソ

伊方原発の活断層について、原発さよなら四国ネットワークの近藤誠さんは次のように語っている。(編)

伊方が最も再稼働に近い候補になっている理由として、「活断層問題がない」ことが挙げられています。驚くべき話です。伊方原発の危険性とは、政府発表のとおり活断層が直近をとおり、大地震の可能性があることに他ならないからです。

伊方原発の直近に、日本最大の千qに及ぶ活断層=中央構造線が走っています。表面的には原発北側の海底約6〜8キロの所にあるわけですが、地下では伊方原発の直下を走っています。

この断層が動くと、伊方原発から松山までの間でM8以上の地震が起こりうる、と政府の地震調査会が発表しています。M8の地震とは、水平で8b、上下で6bも断層が動きます。こんな大地震が伊方原発周辺で起きたら、大変な事態が生じます。

特に2号炉は、地質調査をした調査官自身が、「2号炉は地層の境目に建っているので、移動させることが適切」と明記したほどです。ところが、四国電力も政府もこれを無視して、建設されました。

3号炉は、四国電力が明らかにした断層図を見ても、最も長い大きな断層が原子炉直下にあることがわかっています。プルサーマルで再稼働が予定されている3号炉は、最悪の場所に建てられています。

一連の取材後、松山市の実家で親兄弟と酒を飲みながら集会の内容や町や県の対応姿勢などを話した。松山も被災地になりうること、伊方原発再稼働がいかに危険か、瀬戸内海が汚染されれば旨い刺身も食えなくなること、などを話した。

年老いた両親は、当初「若い人の問題」と言っていたが、放射能に汚染されれば、子どものいる若い家族は地域からいなくなる。福島では実際そうなって、自殺した高齢者もいる。「そんな老後を過ごして死んでいいのか?」とたたみかけると、「そりゃ、えらいこっちゃなぁ」と真顔に変わった。

弟夫婦は、再稼働には反対だが、活動には至っていない。「誰かがやってくれている」「活動が知られると仕事に支障が出る」などと言う。

愛媛県は、保守王国としての歴史を誇っている。中村時広知事は、橋下大阪市長の「盟友」といわれ、県議会は自民党・公明党・維新の会を合わせると、全議席の4分の3を超えるほど。四国電力は、地元経済の主役で、地元地方銀行・保険会社が株主の上位を占める。保守政治家にとって、四国電力に反旗を翻すことは、まさに政治生命に関わることなのである。こうした保守的政治状況が、伊方原発を再稼働のトップランナーにしているのであって、決して安全性が確保されたからではない。

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