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2012/2/20(月)更新

『生活保護受給者、過去最多』が問いかけるもの」を読んで

当事者は、「声が出せない」ではなく 「聞いてもらえない」

元生活保護利用者/反貧困ネットワーク埼玉副代 和久井みちる  

昨年11月25日号の特集「『生活保護受給者 過去最多」が問いかけるもの」に対して、元生活保護利用者であり、現在反貧困ネットワーク埼玉・副代表の和久井みちるさんからコメントを寄せて頂いた。

 生活保護の問題を、生保利用者の声を抜きにして語ることはおかしい。「もっと生保を受給している当事者の声を取り上げて欲しい」という指摘は、貧困・就労の問題などを取り上げる際に非常に重要な指摘である。「人民新聞」では今後とも出来るだけ当事者や現場からの声を軸とした紙面にしていきたい。(編集部)

 生活保護に関する紙面のコメントは、ほとんどが「支援者」「識者」のものという印象です。

 個性的なわかりやすい意見を述べてくださる方もたくさんいますが、当事者が登場するとしたら、おそらく総論で終わることはありません。

 たとえば、同じ“派遣切りで失業"した人だとしても、その人の人柄、家族構成、年齢、性別、職歴、健康状態など「同じ人」はひとりもいません。

 ですから、その人にとって、その改革案のどこが切実な問題になるのかは、ひとりひとり違うものだと思います。

 そこにこそ、制度「改革」の暴走を「おかしい」「止めなきゃいけない」といった説得力が生まれるのではないでしょうか。

 メディアは、もっと当事者の声を取り上げてほしいと思います。「当事者は声が出せない」というのは、ある面での思いこみです。ものが言いたい当事者は、むしろ多いのではないかと私は思っています。

 なぜものが言えなくなるかと言えば、一部の不正受給などがマスコミで大きく扱われた後、“普通の"生活保護利用者には、弁明・説明する機会がないからです。「そうじゃない」という声は、マスコミに取り上げてもらえない。

 そうしたら、世の中の人は偏向報道だけを信じるようになります。それしか知らないから、当然です。だからバッシングがひどくなるのです。ものを言えないようにしている背景は、マスコミにも大きな原因があると思います。

 当事者はものを言えない、言わないのではなく、「聞いてもらえない」のです。

 生活保護を利用している当事者に対する、マスコミや社会の偏見も一因かもしれません。「どうせ言葉にできやしないだろう」という。

 本当の声を紙面に反映して欲しい

 差別をなくそう、貧困をなくそうと思うなら、誰が(どんな人が)、何に苦痛を感じているのかを知らなければ、どこを解決していけばいいのか、わからないのではないでしょうか。

 今や、貧困問題に取り組む団体は各地にできています。その気になれば、当事者と出会う機会も見つけていけるでしょう。

 支援する方々も、当事者の言葉をもっと積極的に引き出してほしいと思います。

 伝えたいものを持っている当事者は、たくさんいます。顔を出すかどうかは別にして、本当の「声」をぜひ、紙面にたくさん反映していってほしいと思います。

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