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カダフィ殺害は、リビア人民の勝利か

NATO軍介入を正当化した神話を検証する

NATO軍に全面支援された反乱軍がカダフィを殺害した。裁判にかけることなくその場で殺害という手法は、ビンラディン容疑者暗殺を想起させる。裁判でカダフィの口から語られる欧米にとっての「不都合な真実」を闇に葬るためだ。「独裁者=カダフィ」という悪魔像を作り上げるために、様々な神話が作られていった。その一つ一つを検証すると、NATO介入の口実をつくるために、事実がねつ造され、あるいはねじ曲げられていったようだ。全文2万字の論文「リビア戦争の10大神話」の要点を紹介する。(文責・編集部)

マキシミリアン・C・フォート(カナダのコンコルディア大学社会学・文化人類学部準教授)
8月31日『カウンターパンチ』

リビア戦争を正当化し、実行へ踏み切るのに使用された神話がある。それは、反乱軍、NATO、主流メディアから「国際刑事裁判所」まで―戦争の主役たちが繰り返し主張してきたものである、特に「人道主義的介入」というでっち上げが、神話の基礎である。

 「カダフィが市民を爆撃」神話

2月21日、反乱勢力が初めて「ジェノサイドの危機」叫んだ時、アルジャジーラもBBCも、「カダフィが、抗議する国民を弾圧するために空軍を出動させた」と報道した。しかし、ロバート・ゲイツ米国防長官は「事実かどうかの確認はとれていない」と答え、マレン提督も「我々は確認していない」と補強した。

他にも、カダフィが、非武装の抗議者にヘリコプターで機銃掃射を浴びせたという噂もあったが、これも事実無根だった。カダフィの空軍による残虐行為という神話がNATO軍介入の口実となり、「民間人保護」という表向きの役割をはるかに越える軍事行動を行ったのである。

この誇張された「カダフィの野蛮な行為」が、リビアに関する帝国主義的民間伝承となって伝播、西側の軍事介入を容易にした。

 「アフリカ人傭兵」神話

2月以降、NATO軍の支援を受けた反乱軍は、捕らえた黒人を報道陣に示した。

しかし、調査したアムネスティ・インターナショナルは、捕らえられた黒人は兵隊ではなく、マリ、チャド、西アフリカからの不法労働者たちである、と発表した。つまり、「傭兵神話」も、子供だましの幼稚なでっち上げだったのである。

このアフリカ人傭兵神話が、人種差別的虐待行為の口実となり、黒人への虐待行為が無視されてきた。

ロサンゼルス・タイムズと人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチは、黒人傭兵がリビア東部に集結しているといううわさやニュースが事実無根である、と発表している。記者であるパトリック・コックバーンとキム・セングプタは、「トリポリ中心街で、30人の腐乱死体を確認したが、ほとんどが黒人で、手錠をかけられ、担架や救急車の中で殺害され、そのまま放置されていた」と書いている。

自らを「黒い皮膚の奴隷を粛清する旅団」と名乗る反乱軍は、「新生リビアは、ダウエルガの黒人に医療や教育のサービスを禁じるだろう。近くの都市ミスラータからは、黒いリビア人を追放した」と言った。(訳注:米・黒人指導者=ジェシー・ジャクソンJr.は、「国際刑事裁判所は、ダウエルガ市の黒人虐待を調査すべきだ」との声明を出した。)

ヒューマン・ライツ・ウオッチは、「反カダフィ勢力連合体国民評議会の制圧地区で、多くの黒人たちが襲撃され、殺害される光景を目撃した」 と報告している。

「アフリカ人傭兵」神話は、すべての神話の中で最も悪質で、人種主義的差別そのものである。

 「バイアグラ配給による大量レイプ」神話

「カダフィは、軍にバイアグラを配給して、大量レイプを扇動している」という神話まで作り出された。

バイアグラ神話を最初に取り上げて報道したのは、反乱軍と協力関係にあったアルジャジーラだった。これを、西側メディアが拡大報道した。

米国国連大使スーザン・ライスは、「カダフィが、大量レイプを促進するために自軍兵士にバイアグラを配給している」というショッキングな演説を、安保理で行った。しかし、米軍筋や米諜報機関は、「組織的なレイプの証拠はない」とNBCニュースに語り、きっぱり否定した。

アムネスティ・インターナショナルの上級研究員ドナテラ・ロベラも、「レイプ事件は見当たらなかった。…レイプ犠牲者を発見できなかったばかりか、レイプ犠牲者を知っているという人間すら発見できなかった。カダフィが配布したと言われるバイアグラに関しては、丸焼けになった戦車の近くで、何箱かの新品バイアグラの箱が置かれているのを発見したことがある」と語った。

 「保護する責任」神話

「外国軍介入は、人道主義的懸念に動かされて」という神話がある。この神話を信じるためには、三つの事実を無視する必要がある。

1つは、新アフリカ争奪戦の無視だ。中国の進出で、資源と政治的影響力をめぐって中国と西側が争い、その上、カダフィもアフリカ大陸に手を伸ばしていた。米軍アフリカ司令部は、そのために存在している。

2つ目は、カダフィの「資源ナショナリズム」に対する西側の経済的利害だ。戦争勝利が見えた途端、ヨーロッパの企業が、戦利品をかき集めるためにリビアに急いで乗り込んでいった。

3つ目は、いわゆる「アラブ革命」の動向に関して米国が支配力を失っていることへの、米政府の苛立ちだ。

この3つの事実を重ね合わすと、「人権を保護するための軍事介入」と主張するのは、まったく信じ難く、説得力にかける。

そもそも、軍事介入の前に外交交渉がまったくなされなかったことは、真の動機を雄弁に物語っている。「平和的政権移行の努力を、米国が妨害した」とアフリカ連合が証言しているばかりでなく、米・民主党のデニス・クシニッチ議員も、平和的解決が目前にあったのに、「米国務省がそれを潰した」と明らかにした。

実際NATO軍は、リビア民間人保護をしなかったばかりか、爆撃の標的にした。

NATO軍は、リビア国営テレビ局を爆撃し、3人の民間人記者を殺害したことを認めた。また、米軍のアパッチ・ヘリコプターがザウィーヤの中央広場で一般市民を多く撃ち殺したが、その中に情報相の弟が混じっていた。NATOは、「司令部または統治本部施設」をかなり大雑把に解釈して、市民住宅地を爆撃し、カダフィの孫3人を含むカダフィ家の親族を殺害した。

さらにNATO軍は、反乱軍が占領した地域で非武装住民を殺傷しているのに、その反乱軍を保護しているのだ。反乱軍はトリポリを包囲し、水、食料、薬品、燃料などの日常生活物資が入らないようにしたが、NATOはこれを支援した。カダフィが同じことをミスラータでやろうとした時は、戦争犯罪と非難したのに、反乱軍やNATOがやると、犯罪にならないのだ。このロジックを「人道主義」と呼ぶことはできない。

 (以下略 全文は1428号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

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