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F-15戦闘機の飛行経路(雑誌Global Outlook春/夏号から転載)。8時46分49秒に1機目がWTC1に突入。F-15戦闘機の発進は8時53分。2機目がWTC2に突入した9時3分、F-15戦闘機は114キロ離れた上空を飛行中。"Holding Pattern"は、「9時9分から9時13までの間、NY上空の混雑を避けるため及びなすべきことが不確かであったので、F-15戦闘機が待機状態であった」(調査報告書・20頁)際の上空図。
更新日:2006/08/24(木)

[社会] 911同時多発テロ/当日の防空体制が失敗したのはなぜ?
──木由左史(イリノイ州在住フリーライター)

緊急発進の指令は、速やかに出されたのか

民間航空機の緊急事態で、戦闘機が緊急発進するのは日常的なことです。旅客機の進路逸脱で大事に至らない場合などは、ニュースにもなりません。二〇〇〇年九月から二〇〇一年六月まで一〇ヵ月の間には六七回の緊急発進がありましたが、事なく終わっています。(AP/二〇〇二年八月一四日)

しかし、四機も乗っ取られた九月一一日は、北米防空司令部(NORAD)の戦闘機は、一機も阻止出来ませんでした。

先日の九一一真相究明運動・国際会議(六月二日〜四日)で、たびたび、「何故、当日の防空体制は失敗に終わったのか」と質問がでました。 世界最強の軍事システムをもつアメリカが、自国の空を守ることが出来なかったのですから、当然の疑問でしょう。

会議の最終日、今秋の下院議員選挙に立候補を表明しているロバート・バウマン氏(民主党・フロリダ)が講演しました。フォード/カーター政権スター・ウォーズ計画・元長官、そして退役空軍中尉でもある同氏の話の一節を紹介します。

「当日、ドリル(軍事演習)があったことを知っている。戦闘機が緊急発進したが、事すでに遅かったことも知っている。しかし、何よりも明らかなことは、緊急時の標準オペレーション手順に従っていれば、およそ三〇〇〇人の人命は助かった筈だということだ。戦闘機のパイロットたちを責めるつもりはない。私は、緊急発進の指令を手順通りに出さなかった者たちこそ、過失ではなく、反逆行為を犯したのだと言いたい」。

会議参加者にとっては、バウマン氏の話は自明のようで、会場全体に大きな拍車が起こりました。

バウマン氏の話を素材に、九一一調査委員会報告書(以下、調査委員報告書と略す)とインターネットで収集した情報をもとに、ポイントとなる事実を洗い出してみます。

戦闘機に緊急発進指令が出たのはいつか?

標準オペレーション手順とは、管制塔が旅客機との無線連絡又はトランスポンダー(航空交通管制用自動応答装置)信号を失った場合、あるいは、航空機が規定の進路を外れた場合は、連邦航空局(FAA)は、北米防空司令部(NORAD)に連絡して、戦闘機を緊急発進してもらう。戦闘機は旅客機の近くまで行き、戦闘機の先導に従うよう指示の合図を送る(インターセプトする)。従わない場合、軍の上官が旅客機を攻撃するかどうか判断を行う。これら一連の手順を言います。

調査委員会報告書は、「北米防空司令部が最初のハイジャック機の連絡を受けたのは、WTC北棟突入九分前、第二、第三、第四のハイジャック機については、突入後(又は墜落後)に連絡を受けた」(三一頁)と説明してます。

連邦航空局からの連絡は遅すぎた。戦闘機が緊急発進してインターセプトするに十分な時間がなかった。つまり、軍には責任がなかったということでしょう。

調査委員会報告書は、次のように要約しています。、

「当時、ハイジャックに対応する連邦航空局と北米防空司令部のために設けられていたプロトコル(手順)は、次のことを仮定していた。 (a)ハイジャック機はたやすく確認可能で、姿を隠すことはしないであろう。 (b)連邦航空局と北米防空司令部との適切な指揮系統を通して問題を特定する時間があるであろう。 (c)ハイジャックは伝統的な形をとるであろう。つまり、航空機を先導ミサイルにしてしまう自殺・ハイジャック行為にはならないであろう。」(一八頁)

また、「当日の空の防衛は、従来の訓練や手順に従って行われなかった。防空は、所在不明となるハイジャック機の経験を持たない民間人(FAA)と、航空機が大量破壊兵器になることに備えがなかった軍人(NORAD)によって、即席に行われた。」(三一頁)とも述べています。

この報告書の基調は、「ハイジャック機の自殺テロ攻撃を阻止できなかったのは、当時としては、やむを得なかった」ということになります。

しかし「連邦航空局からの連絡は遅すぎた」という主張に真っ向から対立する見解があります。

二〇〇三年五月二二日付けの連邦航空局メモは、「最初の航空機がWTC北棟に突入後数分のうちに、連邦航空局は各種機関とのフォン・ブリッジ(電話接続)を設けた。空軍と連邦航空局の連絡網も直ちに連邦航空局本部に参加し、北米防空司令部との接触も開設された。アメリカン航空第七七便の情報も含めて、リアルタイムに情報を共有した」と述べています。

「最初の航空機突入後数分のうちに」とは、八時五〇分前後と考えていいでしょう。このメモに従えば、二機目以降について「北米防空司令部は突入後に連絡を受けた」と言う調査委員会報告は、事実に反することになります。

さらに、同メモは、「九月一八日付けの北米防空司令部のログには、アメリカン航空第七七便について、九時二四分に連邦航空局が北米防空司令部に連絡したことが残っている」とあります。これは、「AA七七便」のペンタゴン突入より一三分前になります。

調査委員会報告書では、「八時三八分に連邦航空局が防空司令部にハイジャックを連絡。八時四六分にF─15戦闘機に緊急発進を指令。八時四六分四九秒にAA一一便はWTC北棟に突入。F─15戦闘機の発進は八時五三分」(三二頁)。ハイジャックの連絡を受けてから緊急発進の指令が出るまでに八分かかっており、悠長な対応だったという印象を受けます。

しかし、緊急発進の指令が出た同時刻にはAA一一便がWTC北棟に突入していたのですから、インターセプトは初めから不可能でした。

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