2010年7・8月号 『マンスリー・レビュー』
マルタ・ハルネッカー(チリの社会学者、ジャーナリスト、活動家女性) /翻訳・脇浜義明
「国家権力の掌握」というテーマに入る前に、社会主義への過渡期の特徴について見てみたい。レボウィッツは、「社会主義は天から降ってくるものではない」と言っている。それぞれの社会にはそれぞれ特性があって、同じ目的であっても、それを実現する方法は自社会の特性に合ったものでなければならない。社会主義は、個別社会に深く根を下ろしたものでなければならないのだ。
「どの社会にもユニークな特性 ― 独特の歴史、伝統(宗教や風土文化に基づく)、神話、世直しの英雄、闘いの中で人民が発展させたユニークな能力がある」(レボウィッツ)。
過渡期の始点も、国によって違う。過渡期が始まったときに存在する条件によって、採用すべき方策も異なってくる。受け継いだ経済構造、生産諸力の発展水準、日常生活の様態、国民の教育水準等々。さらに、国内の勢力分布や、国内的・国際的に階級闘争がどういう形態をとっているかによって、各国の過渡期を特徴づける。
最後に、各国の階級構造と階級闘争の歴史に応じて、社会主義への移行を担う歴史的主体も異なってくる。労働者階級が主体である場合もあれば、先住民や農民が主体である場合も、軍の一部が主役である場合も、カリスマ的指導者が前面に立つ場合もある。
だから、「過渡期はこうあるべきだ」とする一般理論はあり得ず、各国が独自の戦略を設計して社会主義へ向かうことになる。この独自戦略は「その国の経済的特性と、その国で闘われてきた階級闘争の様態」によって規定され、それが移行プロセスの中で指針となる。
このように様々な変種があるのが当たり前であるが、ラテン・アメリカおよび、カリブ海域世界の現状況を見ると、すべての国の移行プロセスに共通しているものが一つある。それは、「平和的移行」である。
つまり、先ず選挙で政権を掌握し、前政権から受け継いだものから出発して、少しずつ変革していくやり方である。
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