原発問題担当大臣・細野氏が「避難準備区域の縮小」を検討しているという。事故は収束していないので、被曝する人が増えるのではないか?と懸念されるが、とても難しい問題だ。
被曝を避けようとすると生活が崩壊してしまう地域が、広大にできてしまった。法律では、「1年間に1_Sv以上の被曝をさせない」ことになっている。この法を守るなら、福島県程度の広大な面積を無人にしなければいけなくなる。そこで、国は謝罪もなく、20_Svの被曝をさせることを決めた。国家自身が「法治国家ではない」と言ったわけだ。
細野大臣は、避難準備地域縮小の第1の条件として、「原子炉の安定的な冷却の実現」を挙げた。東電の事故収束工程表では、7月17日になっている。これは全く不可能だ。
そもそも、東京電力自身が、炉心のメルトダウンを認め、メルトスルーもしてしまっているとすれば、仮に循環冷却ができても、安定的な冷却は、もう不可能だ。
ところが、「安定的な冷却を目指す」というタテマエを国がとり続けているため、防御ができないまま、汚染水がドンドン地下に流れている。
汚染水の除洗装置は、単に溜まった水をぐるぐる回すだけで、溜まっている状態が解消されるわけではない。その汚染水は、ドンドン外に漏れている。溜まっている水をどこかに移すことすらやろうとしていない。
メルトスルー対策として、汚染水を地下水に届かせない=汚染を広げないために、地中にコンクリートの壁を作ることが検討されている。1000億円かかるようだが、これを東電は躊躇しているという。事故被害を本当に補償しようと思えば、何十兆円払ったって補償できない。1000億円をけちる東電が、私には理解できない。
細野大臣が挙げる区域縮小のもう1つの条件は、「水素爆発が起こらない安定した状況」だ。炉心がメルトダウンしているなら、水素爆発はもう起きない。水素は燃料棒の被覆管が水と反応してできるので、その被覆管がなくなっているなら、水素爆発は起きない。しかしそれは、炉心がすべて溶けてしまって手の打ちようがないということだ。
ところが一方で、「3号機の炉心には窒素を入れる」と言っている。それは水素爆発を懸念しているということで、炉心の全部は崩壊していない、という前提に立っている。そうならば、水素爆発の可能性も、私が一番恐れている水蒸気爆発の恐れもある。
事実がどうかによって、何を先にすべきかが違ってくる。東電は原子炉の状況が分かっていないのだ。
炉心の半分まで水があるならば、原子炉の中に水を入れてこれ以上溶かさないようにした上で、循環系の冷却ができれば、それなりの安定的な状態に持っていける。
ただし、「それなりの安定的な状態」とは、放射性物質は出ないということではない。すでに圧力容器にも格納容器にも損傷があるので、汚染水は漏れ出てしまう。その汚染水を炉心の中に戻す循環回路ができれば、汚染水を溢れさせることからは一歩前進できるし、外部への汚染は、それなりに少なくできる。
いずれにしても、対策の大前提となる現状把握を国は間違えているかもしれないと私は思っている。
(6月29日、MBSラジオ「たね蒔きジャーナル」より)
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