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2016/2/22更新

「死の商人」たちに正面から抗う
「武器輸出反対ネットワーク」が始動

杉原 浩司 武器輸出反対ネットワーク[NAJAT]代表

憲法9条の理念に基づく「国是」とされてきた武器輸出三原則が、安倍政権により閣議決定のみで撤廃され「防衛装備移転三原則」という似ても似つかぬ代物にすり替えられて、2年近くが経とうとしている。武器輸出三原則は衆参両院の国会決議によって補強されており、これを覆すなら、再び全会一致の国会決議をあげなければならなかったはずだ。国会も主権者も完全に舐められた。

世界に類を見ない先進的な武器禁輸政策は、日本の「くにのかたち」をわかりやすく表すものだった。「紛争を助長させない」というシンプルな原理は今こそ出番なのに、その可能性を封殺された。

シリアやイラクなど中東の惨状の大きな要因の一つが大国による武器輸出にあることは明白だ。オバマ政権は、第2次大戦後のどの大統領より多額の武器輸出を承認したという。米国の武器取引をウォッチしてきたウィリアム・ハートゥングは言う。「米国の兵器で敵が武装。まるでブーメランです」(「デモクラシー・ナウ」2015年4月7日放映)

戦争犯罪を助長する武器輸出

そして、現在、サウジアラビアへの英国の武器輸出が国際的な非難にさらされている。サウジによる隣国イエメンへの攻撃は、民間人を巻き込む無差別攻撃の様相を呈している。英国はそれを知りながら、武器輸出を止めようとしない。

安倍政権は、その英国と急速に軍事関係を強めている。1月8日に飯倉公館で開催された日英「2プラス2」では、新三原則のもとで最初に許可された案件の一つである、空対空ミサイル「ミーティア」の日英共同技術研究の進展も確認された。三菱電機が参加するこのプロジェクトが終了した暁には、最新鋭のステルス戦闘機F35(世界で3000機以上導入見込み、イスラエルや日本も購入)や、今まさにシリアを空爆中の仏製戦闘機ラファールなどへの搭載が見込まれている。これは正真正銘の殺傷用兵器だ。

日本がやるべきは、英国にサウジへの武器輸出をやめさせること。しかし、現実は真逆である。

豪州への潜水艦輸出を止めよう

そして、目下進行中の最大の武器輸出案件は、オーストラリアへの潜水艦輸出である。12隻を超える潜水艦を共同開発・生産する4兆円以上のビッグプロジェクトだ。日本は武器輸出大国のフランス、ドイツと激しい商戦を繰り広げている。太平洋における対中露包囲網づくりを狙う米国は、日本を強力に後押ししている。

私が参加する「武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)」は、オーストラリアのターンブル新首相来日の前日、2015年12月17日に産声をあげた。その立ち上げに向かわせたのは、防衛省官僚による恐るべき言動にふれたことも大きい。2014年10月にNHKで放映された「ドキュメント武器輸出」で主人公のように振舞う官僚こそ、堀地徹(ほっちとおる)防衛装備庁装備政策部長。彼こそ日本の武器輸出政策の実務面でのキーパーソンである。彼は当時、防衛省装備政策課長として、パリでの国際武器見本市「ユーロサトリ」に日本の軍需企業を引き連れて乗り込み、盛んに商談にいそしんだ。その中で、イスラエルのブースで語った言葉に耳を疑った。「イスラエルの実戦を経験した技術力を日本に適用することは、自衛隊員のためにもなるし、周りの市民を犠牲にしないで敵をしっかり捉えることは重要」「(イスラエルの)機体と日本の技術を使うことでいろいろな可能性が出てくると思う」。

この年2014年夏、イスラエル軍がガザで2000人以上を虐殺(その内、子ども約500人以上が死亡)したことを知らないのか。

「モラルハザード」に陥る日本

現在、三菱重工や三菱電機がステルス戦闘機F35の部品製造や組み立てを担い始めている。今はまだ国内向けのみだが、いずれは海外向け、すなわちイスラエルなどが購入するものにも関与することになるだろう。

かつて猪口邦子軍縮大使(当時)は、小型武器軍縮会議の議長を務めた際、武器輸出三原則を持つ日本を「モラルハイグラウンド」(道義的高み)だと誇っていた。それが今や「モラルハザード」へと堕落した。

こうした中、NAJATが2月7日、池内了さん、古賀茂明さん、東京新聞経済部記者の望月衣塑子さんを招いて行った発足集会には、220人を超える人々が参加した。関心は確実に高まっている。

当面は豪州への潜水艦輸出と日英ミサイル共同研究を止めることに全力を注ぎつつ、生活者としてふれる製品を作っている軍需企業4社(三菱電機、川崎重工、富士通、東芝)にターゲットを絞ったキャンペーンも進めていく。

日本のレンズ技術が無人機のカメラに使われており、民生技術の軍事利用への歯止めもかけるべきだ。創意工夫をこらして、「死の商人国家」への道に立ちはだかりたい。

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