2016/1/18更新
浅野健一ジャーナリスト/同志社大学大学院社会学研究科博士課程教授(京都地裁で地位確認係争中)
〈今のマスコミの中国に関する報道は悪い情報しか流さずほとんどビョーキ〉〈昨年はジャーナリズムが喪失させられた年だった〉〈ジャーナリズムに逆風が吹いて久しい〉〈不穏な空気が漂う〉。NHKの現役職員2人を含むジャーナリストから来た賀状の書き込みにあった文章だ。
ジャーナリズムを壊滅させたのは自公野合政権で日本の戦前回帰を狙う安倍晋三首相だ。安倍グループはテレビ朝日「報道ステーション」の古館伊知郎氏を降板表明に追い込み、文化人を使ってTBS「ニュース23」のアンカー、岸井成格・毎日新聞特別編集委員を名指しで放送法違反だと批判する意見広告を、産経(12月14日)、読売(15日)両紙に掲載させた。意見広告を出したのは生長の家、日本会議などで作った「放送法遵守を求める視聴者の会」だ。「放送法」に違反しているのは、テレビ局やBPOに圧力をかけている安倍政権と自民党だ。
水島朝穂早大教授は、11月12日付の「週刊読書人」に書いた拙著『安倍政権・言論弾圧の犯罪』(社会評論社)の書評の中で、水島氏が昨年7月に出演したNHK「日曜討論」で、司会者(島田敏男解説副委員長)が控室室での打ち合わせの際、「維新の党」のみえみえの修正案について触れないように釘を刺した、という裏話を明らかにしている。司会者は、水島氏が帰る際、「維新の修正案は円滑審議にとてもいいのですよ」と言ってにっこり微笑んだという。
水島氏がNHKラジオで百地章・日大教授と対論した際も、水島氏の横に座り、百地氏の掩護のような仕切りをしたという。NHKの報道デスクによると、二人はツーカーの仲だそうだ。島田氏は去年だけで2回、首相と会食している。
安倍政権は米国からの指令を受けて、昨年末の御用納めの12月28日、日本軍性奴隷問題で日韓政府合意を果たした。今年夏の参院選での勝利を視野に、韓国との関係改善を急いだのだろうが、今回の合意はこの問題の最終解決にはならない。ところが朝日新聞などの報道を見ていると、日韓合意を評価し、韓国側がソウルの日本大使館前にある少女の像を撤去するよう求めるなどの植民地主義根性丸出しの主張を繰り返している。
朝日は、「韓国政府はこれまでも日本との合意を国内事情でほごにした経緯がある」とも書いていた。日本国の政府による法的責任を求めた上での公的賠償と謝罪がなければならない。韓国外務省高官がハルモニたちに会って説明するシーンは、痛々しい。安倍首相、岸田外相がハルモニたちに会って謝罪すべきではないか。
また、朝鮮民主主義人民共和国に暮らす元日本軍慰安婦の女性たちのことは、忘却されたままだ。イヨンス・ハルモニらが、今回の「合意」を無視すると断言し、中学・高校生たちも参加したデモが連日展開されている。加害者の側が民間団体が建てた像を撤去しろという理不尽さを、朝日記者は気づかないのだろうか。朝鮮への侵略・強制占領への反省が朝日にないのだ。
日本の政治とメディアは朝鮮による1月6日の核実験を激しく非難しているが、日本が米国の核の傘の下にあることを忘却している。
米国は朝鮮戦争停戦後、62年半、平和協定を結ばず、日韓と組み核で朝鮮を脅してきた事実にも目を向けるべきだ。
安倍首相は、12月28日夕、韓国の朴槿恵大統領と電話協議した後、六本木のホテル「グランドハイアット東京」のステーキハウスで友人と食事し、1月2日まで泊っている。年末年始、御手洗冨士夫経団連名誉会長、渡文明JXホールディングス名誉顧問、古森重隆富士フイルムホールディングス会長夫妻らと、3回ゴルフに興じている。
高級料理店での食事、外遊、ゴルフに興じ、民衆を戦争に巻き込む壊憲を狙う安倍政治を許してはならない。日本人民は小異を捨てて団結し、参院選(衆院とダブル選挙も)で立憲主義、憲法改悪阻止、原発再稼働阻止、辺野古新基地阻止、消費増税反対を掲げて闘い抜きたい。自公野合政権の言論弾圧を糾弾し、宅配新聞の軽減税率導入に見られる記者クラブメディアと権力の癒着を告発していこう。
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