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2015/12/23更新

学生「ブラックバイト」

「耐える」強さを「変える」力に

関西学生アルバイトユニオン事務局次長 北村 諒

「学生期間中はブラックバイトに追われ、卒業後は利率3%の『奨学金』500万円を20年以上かけて返済する」など、学生をとりまく環境は熾烈を極めている。この現状を打破すべく結成された関西学生アルバイトユニオンの北村さんに、今月11日、@結成経緯、A現在の取り組み、B学生をとりまく現況、についてインタビューした。(編集部・ラボルテ)

──関西学生アルバイトユニオン結成のキッカケは?

北村…渡辺君(同ユニオン共同代表)がブラックバイトで転々と働き続けたことがキッカケです。カレー屋のバイトでは「有給休暇はない」、宅配のバイトでは原付で「60qで走ってこい」などと言われ、本屋のバイトではワンオペ(労働者一人で全業務を担当)でトイレすら行けない状態でした。彼はこうした経験で、ユニオンを作る前から、学生を対象に労働法の自主講座をしていました。

もう1人の共同代表の柊君は塾のバイトで不当解雇されました。未払い賃金があり、関西の非正規系ユニオンに相談、争議の結果、約20万円を取り返しました。労働組合は使えるけれども、「学生が相談し易いのは学生だ」ということで、渡辺・柊が学生ユニオン結成を提起しました。

学生の多くは、バイト・学費・奨学金の問題を抱えています。「個人の問題を個人で終わらせずに、みんなの問題として、みんなで解決していく」こと。また、「なぜこんなことが起きていて、どうすれば変えていけるのか」を実践する場として、今年2月に関西学生アルバイトユニオン(以下、「関ユニ」)を結成しました。

関ユニは「学ぶ・考える」を重視しています。学習会などを通して、考えることを重視しています。また、大学や高校での講演活動を通して、学生に幅広く労働法・関ユニの活動を伝えています。

──反響は?

北村…高校生から「店長に交渉したら有給を取得できた」と報告がありました。また、神戸市立看護大学での講演後に、学生3人が相談に来ました。話を聞くと、@シフト調整できず、看護実習に出席できない、A割り増し賃金が支払われていない、Bセクハラ・パワハラが横行している、などの問題がありました。これにより、他の学生たちは次々と退職し、相談に訪れた学生たちの労働環境がさらに悪化する悪循環を抱えていました。

「辞めたくても辞められない」のが、ブラックバイトの大きな特徴です。一つには生活費・学費などの経済的理由で、辞めることが難しい状態にあります。もう一つは、「私が抜けたら職場が回らない」など、責任感を逆手に取られて、辞められないことが多いのです。

過労と分断に耐える学生たち

──学生たちのバイトに対する意識は?

北村…学生がバイトのしんどさについて、互いに自慢し合う傾向にあります。「12日間休みなく連続で勤務している」といった「連勤自慢」や、2時間しか寝ていない「不眠自慢」、バイトを2つ3つ掛け持ちしている「掛け持ち自慢」などです。バイトをしていない学生を、している学生が責める風潮すらあります。不満ではなく、自慢なのです。ある側面では、自分たちの状態を嘲笑しています。

──学生たちの現状は?

北村…学生が支出を削るのは、主に食費です。カップ麺一つとか、100円ローソンで済ませています。東京私大教連によれば、今の学生の仕送りの額が平均8万9千円(14年)と、94年の平均12万5千円から減り続けています。下宿率は年々低下し、関西大学は約2割です(13年調査)。

──学生が抱える他のしんどさはありますか?

北村…学内の就職オリエンテーションでは「あなたの周りの学生は競争相手です」と教えられ、2回生の夏休みではインターンに行く人が多いです。特にいびつなのは、学内で一番集まるイベントが奨学金説明会だということです。参加者は学祭より多く、1日で終わらず、何日かかけて行います。関大では、奨学金利用者が5割を超えています。

大学入学の目的は、基本的に「就職」になっています。現在、高卒枠求人が全盛期比較で1割なので、当然です。しかし、関大の就職率は7割で、就職しても3年で退職する人が3割を超えます。これだけみても、学生の半分は就職すらままならない現状です。

──北村さん自身が社会活動を始めた契機は?

北村…1回生の頃に、釜ヶ崎で炊き出しなどの活動に関わったことが大きいです。野宿者問題は自己責任だと思っていました。しかし、「野宿を好きでやっている」のではなく、失業や貧困が原因だということ。自分が奨学金を借りていて、若者の貧困化が進む中、自分とリンクするところがありました。本では『ルポ最底辺』(生田武志著)から影響を受けました。福島第一原発事故を通して、原発問題にも取り組んでいます。

──最後に。

北村…ブラックバイトを通して、耐性がつくことで、過労自殺や過労死に結びつくと考えています。街中をしんどそうな顔で歩いている人を見るのは嫌なので、「耐える強さを変える力に」をスローガンに、よりよい社会にしていきたいです。

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