2015/12/11更新
東京管理職ユニオン 鈴木 剛
アマゾンジャパンで労組が結成された。同社では長時間労働が常態化し、能力がないとみなされると、「業績改善プラン」(PIP)を達成するように求められ、退職に追い込まれるという相談が相次いでいる。
PIPの対象となったAさんは、「自分の仕事に改善すべき点があれば改善したい。何を改善すれば良いか聞いたが、『自分で考えろ』と言われただけだった」と語る。東京管理職ユニオン委員長・鈴木剛さんは、「PIPの達成は難しく、事実上の退職強要に当たる」として、団体交渉を通じて廃止を求めている。
アマゾンでは、本社のあるアメリカでも、過酷な労働環境が告発され、英仏独など欧米諸国でも労組が次々に結成されている。鈴木剛さんに話を聞いた。(文責編集部)
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編:PIP(業務改善計画)が事実上の退職強要に当たると指摘していますが…。
鈴木:PIPを3カ月間で達成できなければ、「降格・降給・解雇を受け入れる」とした書類にサインを求めている点が、まず問題です。
会社側は、「仕事の指導に過ぎない」と主張するでしょうが、解雇を了承するサインを求め、サインをしなければ「業務命令違反」とするのですから、事実上の退職強要です。
2番目に、通常業務と別に課題を与える点です。忙しい通常業務に加えて新たな課題を与えるので、残業が増え有給が取れないなど、達成が非常に難しいのです。
3点目は、改善目標が抽象的で、合理性に欠ける部分があります。売上額など数字で示される業績ならわかりますが、ビジネスマナーやコミュニケーション能力、あるいは協調性がないといわれても、客観的な指標がありません。
さらに、「自己批判能力」が強く求められます。「仕事ができていない」と指摘された社員が反論すると、「自己批判能力に欠ける」、「反論するお前に問題がある」とされるわけです。反論を許さない改善指導なのです。
編:組合側は、団体交渉でPIP対象者の基準や、対象者の内何人が退職したのか?という資料の提出を求めています。交渉の様子は?
鈴木:「重要事項にあたり開示できない」という会社側の回答です。しかし、PIPを受けた人のほとんどが退職に追い込まれているとすれば、PIPは退職強要の方便だとなります。PIP運用実態の開示要求は極めて合理的です。開示拒否は不誠実団交であるとして、都労委に申し立てをしました。現在、調査が進んでいます。
編:アマゾンの労働実態が明らかになったのは、ニューヨークタイムスの記事と聞いています。
鈴木:管理職ユニオンには1年前から相談がきていましたが、大半がPIPについてでした。PIPは、リーマンショック以降、外資系企業を中心に広がっていたのですが、アマゾンが他社と違う点は、懲戒処分として就業規則に定められている点です。アマゾンでは、即戦力が求められ、人から教えを受けるようでは不完全だという考え方です。そういう考え方の下、解雇・減給・降格などの懲戒処分のなかにPIPが含まれています。懲戒処分の一部に教育指導を課す同社の労務管理は、異常です。
編:PIPの他にも、密告システムなどもあると聞きましたが。
鈴木:基礎にある問題が、相対評価システムです。他社でも広がっていますが、従業員の一定数を必ず悪評価にする仕組みです。自分を守るために同僚の密告もありえます。このため職場は、協力しあうのではなく、誹謗中傷しあうような職場になります。
アマゾンは、グローバル企業の典型です。著作権を破壊し、税金逃れのためにタックスヘイブンなんかに逃げているという指摘もあり、現代資本主義の象徴的企業です。
編:アマゾンのPIP制度や相対評価は、中小企業も含めて導入が進んでいます。今回の争議の意義は?
鈴木:アマゾンは、現代的労務管理の象徴ですが、もう一歩進んで、問題を労働者に転嫁し、とことんまで自己責任を強いています。成果主義で労働者を競争させ、「お前ののパフォーマンスの問題だ」と自己責任を押しつけて辞めさせていくのです。新自由主義グローバル企業の最先端にいるのが、アマゾンです。
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