2015/12/11更新
ヴァイシャリ・パティル博士
私が生まれたコンカン地域(マハラシュトラ州)は、アラビア海と西ガーツ山脈に挟まれ、生物多様性ホットスポットとして世界中に知られた美しい地域です。この地域に、たくさんの開発プロジェクトが計画されています。2500万KWの石炭火力発電所や72カ所の鉄鉱石採掘計画、さらには石油化学ゾーン・港湾民営化などの巨大開発計画です。
しかし、地域住民が懸念しているのは、「誰のための開発なのか?」そして「誰がこの開発によって利益を得るのか?」という点です。開発計画のひとつに、ジャイタプール原発建設計画(6基・990万KW)があります。仏・アレバ社製のEPR型原発は、フィンランド、英国、米国、さらにはフランスの検査官が、3000件あまりの安全上の問題点を指摘しています。原子力規制委員会の前委員長も、「深刻な安全性の問題があるようだ」と述べています。福島の事故を見た住民は、巨大原発建設に対し、実験動物のように扱われていると怒っています。
モディ政権は、土地収用法を適用して強権的に開発を進めようとしています。住民は、2005年から反対運動を続けており、強制収容のために作られたフェンスを壊したこともありましたが、政府はより強固な壁を作って、住民を追い出しました。こうしたなか、周辺自治体議会が、多くの反対決議をあげています。
福島原発事故を知った漁民たちは、海洋汚染を心配して操業を1週間取りやめ、事故の成り行きを見守っていました。女たちの識字率は低いのですが、地図で福島の場所を確認し、情報を集めるようになりました。そして今では、原発の恐ろしさをしっかり理解しており、常に運動をリードしています。
2011年に、住民の要求で州政府との対話集会があり、州政府が「どのような条件が満たされれば、建設に同意するのか?」と聞いたところ、女性リーダーは、「アラビア海をもう一つ作ってくれれば建設を受け入れる」と応えています。
州政府は、子どもたちの洗脳にも力を入れています。教科書に「原子力はエコでクリーン」とのメッセージを盛り込み配布したところ、80校の子どもたちが「こんなウソの教科書を使うのはイヤだ」と3日間のストライキを行い、州政府はついに新教科書の配布を断念しました。
本紹介 『原発をとめるアジアの人びと』 イベント ノーニュークス・アジアフォーラム2016 海外参加: 賛同金:郵便振替・00940-8-146764
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今回、福島を訪問し住民が完全に消えた静寂の街を見て、原発災害の深刻さを実感することができました。私たちは、これまで仏・アレバ社に対して反対運動を続けてきましたが、事故がインドで起こった事態を想像すると、居ても立ってもいられませんでした。
私たちは、ガンディーの非暴力抵抗運動の伝統を引き継いでいます。そして、広島・長崎を経て福島事故を経験した日本に、強い親近感をもっています。モディ首相は、農作物への補助金をカットし、健康保険・医療費補助金もカットしておきながら、巨大開発計画には莫大な資金をつぎ込んでいます。
私たちはこれまで、米国との原子力協定(2005年)、フランスとの原子力協定(2007年)に反対してきました。今回、日印協定に反対するための訪日でわかったのは、日本の人民は決して原発輸出を望んでいないことです。
三菱・日立・東芝、そして安倍首相に言いたいことは、インドを商売の相手としてではなく、共に生きる人間として見てほしいということです。
ノーモア・チェルノブイリ、ノーモア・フクシマ、そして日印原子力協定はいらない!
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