2015/12/11更新
福島原発事故で瀕死の状態にある原子力産業が、生き残りのためになりふり構わず原発輸出に邁進している。安倍政権は、インフラ輸出を成長戦略のひとつに位置づけ、原発セールスに躍起だが、原発メーカーは多くが軍需産業でもあり、これら元財閥系の巨大企業のセールスマンとして外交を展開しているのが、安倍政権である。
11月23日、日印原子力協定反対大阪集会が、エルおおさか(中央区)で開かれた。インドから来日したクマール・スンダラム氏とヴァイシャリ・パティル女史は、インドでの反対運動の様子を報告し、原子力協定に反対する日印人民連帯の重要性を訴えた。(編集部・山田)
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原発の売り込み先は、台湾(第4原発=日立・東芝製)だけだったが、2014年、トルコ、アラブ首長国連邦と原子力協定を結び、現在、インドとも協定締結に向けた交渉が進展している。12月12〜13日に安倍首相はインド訪問を予定しているが、これを前に、日本原子力産業会と経団連は「即時締結」を求めるメッセージを発している。東芝の子会社であるWH(ウェスチングハウス)社は、インドで6〜12基の新規原発建設を受注するとの見通しを発表しており、インドは、原発ビジネスにとって、最大の市場となっている。
インドへの原発輸出には、次のような問題がはらまれている。
@インドは、NPT(核不拡散条約)未加盟のまま核実験を行い、核保有国になっている。核保有国にとって原発は、核兵器の原料となるプルトニウムの製造工場であり、「唯一の戦争被爆国」が、金もうけのために兵器製造に手を貸していいのか?との批判が上がっている。
A当初米国は、インドの核実験強行に対し制裁として原発関連資材の輸出を禁止したが、原発新規建設が停滞するなか、新たな市場としてインドを発見。原発輸出のためにインドをNPTの例外国として制裁を解除した。米国が原発売り込み姿勢を強めると、アレバなど欧州勢も一斉にインドへ売り込みをかけ、日本も参入しようとしているのである。
B福島事故は今も続き、放射能が放出され続けている。福島では10数万人が、先の見通しが立たないまま避難生活を続けているのだ。こうした被害に目をつむり、巨大企業の金儲けのために原発を売っていいのだろうか。
インドのモディ政権は、「ヒンドゥー至上主義」を掲げる右派政権で、経済政策も、安倍政権と同じく市場競争を重視する新自由主義である。日印原子力協定は、人々の生活を犠牲にして巨大企業の利益を優先する安倍政権の政治姿勢を如実に示すものである。
インド反核活動家クマール・スンダラム
日本が核保有国であるインドと原子力協定を結び、原発を売ることは、インドの核保有を認めることを意味し、世界中が注目する問題となっています。日印協定が締結されれば、インドはさらに核軍拡を進めるだろうし、安倍首相・モディ首相という右派政権の強権政治を強化することにもなります。
10月、海上自衛隊が、ベンガル湾まで遠征し、インド・米国との共同演習に参加しました。南アジアの安全保障、シーレーンの確保という点で、日本とインドは軍事的にも連携を強めています。安倍政権のもとで武器輸出がなし崩し的に解禁されましたが、日本が最初に軍用機(U2・新明和工業製)を売った相手はインドでした。
核不拡散を外交方針の中心においているはずの日本が、NPT未加盟のまま核兵器開発を進めるインドに協力することになるのです。
昨年5月のインド総選挙で、ヒンドゥー至上主義を掲げる保守的な「インド人民党」が、議席の3分の2を獲得する圧勝で政権を握り、モディ氏が首相に就任しました。これ以降インドは、イスラム教や仏教などの他宗教を敵視し、抑圧的で強権的な傾向が強まっています。経済成長路線を打ち出し、大企業利益を優先し、労働法制改悪・環境規制緩和など新自由主義的経済政策を次々と打ち出し、格差が広がっています。
つい先日もモディ政権は、大企業優遇策のひとつとして土地収用法を改悪しようとしましたが、農民が抗議の声をあげ、市民層も巻き込んで大きな反対運動となっています。学生運動も活発化しています。奨学金を掌握しているUGCの建物を占拠する、という抗議活動を続けています。UGCは、奨学金を減額し、その資金を投資に回そうとしているからです。
モディ政権は、「明るいインド」をスローガンに掲げて政権の座に着きましたが、激しい物価上昇で農民・学生は苦境に追い込まれ、反抗に転じると力で押さえつける、という強権政治になっています。
表現の自由も抑圧しています。政権を支える「民族義勇団」は、ジャーナリスト暗殺事件を起こし、文学賞受賞者を脅迫したり、政治権力を使って大学の人事に介入し、ヒンドゥー至上主義を押しつけようとしています。
モディ政権を支持するヒンドゥー教徒中間層が求めるのは、西欧並みの電化製品に囲まれた生活であり、「電力インフラを整備するためには原発が必要」というのが、モディ政権の主張です。こうした政権の路線に沿って、各国の原子力ビジネスがしのぎを削って原発の売り込みに狂奔しているのです。
日印原子力協定は、2010年に協議が始まりましたが、日本側が、「もう一度核実験をやったら協力しない」という条件を出し、インドが拒否して、暗礁に乗り上げました。また、使用済み核燃料の再処理をしたいインドに対して、日本は難色を示していたのですが、12月の安倍訪印の際には、これを認めることになりそうです。
安倍首相と日本国民は、核兵器のために原発を輸入しようとしているインドに手を貸すことになることを、認識してほしいと思います。
広島・長崎に原爆が落とされて70年を迎えています。この時期に日印原子力協定を許してはなりません。
12月に安倍首相が訪問する予定となっていますが、その時私たちは、「安倍首相、あなたはどうしてインドに原発を売ることができるのですか?」という明確な拒否のメッセージを発して抗議を展開します。インドと日本の民衆が手を結び合いながら、平和でよりクリーンなエネルギーを享受し、人の顔が見える関係のなかで協力し合っていくべきです。大企業と国家が手を結んで金をむしり取っていくような関係を打ち壊さねばならないと思います。共に闘いましょう。
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