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2015/11/24更新

イスラエルの軍事・セキュリティ技術

「テロリスト」は誰なのか?
イジメから身を守るための抵抗が、「テロ」と呼ばれる理不尽

イスラエル在住 ガリコ・美恵子

フランスで大規模テロが発生した。無差別テロは、抵抗の手段としても許されるべきではないが、欧米諸国が繰り返してきた空爆も、無差別テロと断じて差し支えない。特にドローンによる殺戮は、自分は安全なところに身を置いて行う殺人であり、倫理が崩壊した戦闘行為だ。

圧倒的な兵器を持つイスラエルは、「テロとの闘い」を口実に違法な占領を正当化し、小石で抵抗するパレスチナの少年たちは、「テロリスト予備軍」として逮捕される。この理不尽な事態を告発する報告がイスラエルから届いた。(編集部)

民間企業巻き込んで監視活動増設される検問所

かつて「ロシア屋敷」と呼ばれた地下牢のあるエルサレム中央警察署前には、毎朝、多くのパレスチナ人が、イスラエル軍に拘束された息子や親族との面会のため、あるいは拘置所内で必要な物を買えるよう小遣いを渡そうと集まってくる。隣接する裁判所前には、裁判を待つ家族もいる。有罪とされた拘留者が刑務所に送還されるのを待つ男たちにインタビューした。

ガリコ…刑務所に入れられる少年の罪は?

男性…甥は、何もしていないのに有罪とされた。なぜ、罪をおかしていない少年が逮捕され、何年もの刑を課されるのか?

イスラエルのネットニュース「+972」が、7月に次のような記事を掲載した。

「イスラエル軍は、国民の言動・思想を調査している。特に、イスラエル社会を危機に陥れる『イスラエルボイコット運動』に関わる者の言動や、政府方針に反対する人たちを追跡し、アラビア語のエルサレムという意味である『アル・クッズ』や『デモ』をキーワードとして、マークしている。軍は、こうしたネット追跡業務を私企業に委託していることが、発覚した」。

元請負人の証言によると、「会社は、イスラエル軍の諜報機関・技術部門と共同作業をしている。軍が、アラビア語のキーワードを含んだデモ情報や、会話などを会社に提供し、我々が分析・追跡する。ヘブライ語でもやる。対象者がどこからネットにアクセスしているかも分析する。会社は情報発信者の居場所を突き止めるが、犯罪者予備軍を追跡するのは軍の役目だ。受託会社は、あらゆるネット情報を収集でき、軍は、フェイスブックなどのプライバシー設定を突破する方法も開発済みだ」。

イスラエルにとって危険な人物は、投石する少年よりも、イスラエル国家の不正を的確に指摘でき、何をすべきか?を思考できる頭脳をもつ少年少女だ。

10月中旬、エルサレム旧市街では、ダマスカス門内の階段に1台、さらに300b先にも金属探知機が導入された。また、新たなチェックポイント(見張り拠点)を増設し、常にパレスチナ人のIDカードや身体検査をしている。周囲に観光客がいなければ、石壁や鉄柵に力いっぱい体をぶつけて、怪我を負わす。

イ軍は、登下校中の生徒の鞄の中も念入りに調べる。このため、すぐ近くの学校への登下校に1時間もかかってしまったり、兵士からの暴行や言いがかりがトラウマとなって学校を休んでいる生徒もいる。

イサウィヤ地区では、軍の警戒態勢発動で検問所が作られ、10日間も完全封鎖された。住民は抗議ストライキを行い、イスラエル人左派による抗議デモの効果もあって、今は半分解除されたが、検問所には長蛇の列ができている。

この地区に、「学校通り」と呼ばれる男女別小中学校が並ぶ長い下り坂がある。死海へと続く砂漠の山々の遥か向こうに浮かびあがるヨルダンの山岳を眺めながらこの坂を下っていくと、男子校がある。ここにイ軍は頻繁にやってきて授業を妨害し、時に生徒を連行する。

10月末、イ軍は早朝4時にやってきて、住民をたたき起こし、3名の生徒に「外出禁止命令」を渡した。「犯罪」の証拠写真や証言があれば即座に逮捕するので、今回は、地区一帯に恐怖や怒りを高めるために無作為に抽出したか、ネット上での思想信条調査に引っかかったためだろう。

教室に催涙弾撃ち込むイスラエル軍兵士

先日、私はこの学校を訪ねた。イスラエル軍の襲撃から学校を守るためにいるガードマンに「日本の新聞社の者だが、校長に話が聞きたい」と告げて、校長室に案内された。

ガリコ…数日前に軍が来たそうですが、目的は?

校長…彼等は頻繁にやってきて、登下校中の生徒を挑発します。気の強い子どもは、文句を言ったり石を投げます。あの日、軍は「投石した子どもを捜しにきた」と言いましたが、私たちは「投石するような生徒はここにはいない。証拠があるなら出してくれ」と抗議し、構内に入れませんでした。すると彼等は、教室に催涙弾や音響弾を撃ち込んだのです。連中はそれでも飽き足らず、翌朝4時に戻ってきて、武器を使って人々を起こし、生徒3名に外出禁止を命令しました。生徒らは「投石などしていない」と断言しているし、証拠もありません。

今回、外出禁止令を受けた生徒は、勉強ができる方です。今は試験中ですが、外出禁止命令で登校できず、試験も受けられません。軍の狙いは、優秀な生徒を落第させることだと思います。軍は私たちを怖がらせ、精神をまいらせ、生きる気を失くさせ、この土地を去るように仕向けています。家屋撤去、無差別攻撃に加え、無実の者を刑務所に入れ、莫大な保釈金を請求し、罰金を要求します。私たち教職員は、軍が来るたびに、生徒が無事に帰宅できるように父兄に協力を頼んでいます。

彼の眼差しには、疲れが滲み出ていた。

投石の理由とは?

学校を出て坂を登っていると、下校中の女生徒らが話しかけてきた。

ガリコ…この地域の人が酷い目に遭っていると聞いたので来た。兵隊は怖くない?

12歳の少女…怖くないよ。私たちは何も悪いことをしていない。だから奴らが来て、死ぬことになっても、神の思し召しだからそれでいいの。

彼女らと話した後、石段を登っていると、小さな石が降ってきた。ジャンパーで頭を守って逃げようとすると、先の少女らが、丘上の少年たちに叫んだ。「この人は大丈夫だから、投げちゃだめ」。すぐに投石は止んで、少年たちが広場に出てきた。

女生徒…おばさん、もう大丈夫だから階段昇って。

少年A…どこから来たの? おばさんの国にもイスラエル軍がいるの?

10人ほどの少年少女たちと取り留めのない話をしている間に、彼等の表情は緩んできたので、どうして石を投げたのか聞いてみた。

少年B…おばさんが写真を撮ってるのが見えたからさ。写真をイスラエル軍に渡すんじゃないかと疑ったんだ。

私…絶対にそんなことしない。パレスチナが好きだし、君たちが酷い目に遭ってるのを知って来たの。カメラはここにしまったよ。もう帰るね。

すると、少年Aが「これは、石を投げたお詫び」と言って、銀紙に包まれたチョコレートをくれた。

私は礼を言い、おいしいチョコを頬張りながら、幸せな気分で石段を降りた。少年たちは私をずっと見守っていた。彼等はテロリストなどではない。いじめに遭っている自分たちを命がけで守ろうとしているだけなのだ。

10月、イスラエル政府は東エルサレムにあるショーファット難民キャンプとイサウィヤ地区の住民からブルーの身分証明書(占領下にある東エルサレムのパレスチナ人用のIDカード。イスラエルで生き、働く権利を持つ)を没収する方針を発表した。

一方、パレスチナ保健省は、10月中にイスラエル軍の攻撃でパレスチナ人72名が殉教し、2240名が怪我を負い、月末の一晩だけで24名が逮捕されたと発表した。東エルサレムでも20名が殉教、480人が逮捕された。ガザでは、10月9日から月末までに17名が軍に殺され、831名が銃撃による怪我を負った。

東京五輪とセキュリティ産業

西エルサレムの街中は、人通りが少なくなった。西に住むユダヤ人がテロを恐れて外出を控えているためもあるが、以前はオシャレな服を買い求めて西に来ていたパレスチナ人の姿も減ったからだ。「パレスチナ人=テロリスト」とみなすイスラエル軍警察による屈辱的な検査や挑発が、原因だ。「エルサレムのユダヤ化開発計画」とは、このように進められ、パレスチナ人を対象としたテロ対策・セキュリティ機器を各所に配備し、「実績」として外国に売り込む宣伝材料にしている。

日本政府は、東京オリンピックのためにイスラエルのテロ対策セキュリティシステムを、高値で購入するようだ。しかし「テロ」とはいったい何なのか、テロリストは誰なのか考えてほしい。イスラエルでは、民主主義に反した行為に抗議する者は、テロ予備軍として監視・逮捕される。

日本で11月に開催される『防衛装備庁技術シンポジウム』にも、イスラエルのセキュリティ・軍備会社が多数出席する。5年後に控えるオリンピックでのセキュリティシステムは、イスラエルがリードするようだ。「今後、わが国は、法改正で軍事産業振興の門戸が開かれた日本と密接に関わっていくだろう」という新聞記事が、イスラエルで発表された(10月25日)。イスラエルの軍事・セキュリティ産業は、パレスチナの罪なき多くの人々の血と人生を犠牲に、成り立っていることを、忘れてはならない。

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