2015/11/1更新
再稼働不同意住民の会
薩摩川内市山之口町 自治会長
川畑 清明
九州電力は15日午前、川内原発2号機(鹿児島県薩摩川内市、出力89万kW)を再稼働させた。同機は11年9月1日に定期検査に入って以来、約4年にわたって停止していた。8月に再稼働した1号機は、10日後に復水ポンプ付近でトラブル発生。2号機は損傷して施栓した蒸気発生器の細管が400本を越えるという劣化が明らかな状態にあり、交換用蒸気発生器が準備されているにもかかわらず、これを取り替えることなく再稼働という拙速で危険な状態にある。
再稼働に反対する「ストップ再稼働!3・11鹿児島集会実行委員会」は、10月12日、JR鹿児島中央駅前で反対集会を開催。地元住民らで組織する「再稼働不同意住民の会」は、川内原発ゲート前で11日から5日間のハンスト行動を行った。地元自治会会長=川畑さんからの報告を掲載する。(編集部)
市民が気軽に自由に参加できる行動=ハートに赤い鉢巻きをしなくても参加できる集会を作りたい―原発ゲート前ハンスト行動は、そうした思いで企画されました。それは、フリートーク・歌・踊り・寄せ書き…、自分の責任で各人が自由に表現できる「場」として創りだされました。
辻立ちしながらチラシを配ると地元の人は、口々に再稼働の不条理を語ります。飲み物の差し入れもありました。「うちの息子は、原発の運転をやっている。せめてここで大きな音を出すのはやめてくれ」と語りかけてきたのは、畑仕事に向かう男性でしたが、その眼に嫌悪の光はありません。
「何とか潰してくれ」と言う人もいますが、「潰してくれ」では何も変わりません。「他人任せでは何も変えられない」が、ゲート前行動のテーマです。
10月11日午後1時、参加者約50名が報道陣を前にした記者会見で行動はスタートしました。テレビニュースは確認できませんでしたが、新聞記事は、私たちの意を汲んだ報道となりました。その報道は14日、「福岡から来た」という81才男性の訪問を招きました。「居ても立ってもいられなかった」と、カンパを手に激励に来てくれたのでした。
初日の自己紹介を兼ねたリレートークは、圧巻でした。時に熱く、時に静かに各人が自身の思いを語ります。豊富な経験や深い知識に裏付けられた発言は、感動の連続でした。2日前から前倒しでハンストに入っていた私のお腹は空っぽでしたが、心は満腹。近くで聞いていた40人以上の九電関係者と警察官は、身じろぎもせず聞き入り、共感してくれていると実感できました。
瀬戸内寂聴、山本太郎両氏の応援メッセージは、畳大に拡大して掲示。アイドルグループ「制服向上委員会」も歌い、寄せ書きをしてくれました。「反対派」と一括りにされがちな私たちですが、一人ひとりの思いの丈を充分知らしめる機会となったと思います。
13日からは、関西と福岡から学生4名が加わり、ラップ調のコールが響き、老いも若きも跳びはねながら盛り上がりました。その日の夜半には、男性が大量の使い捨てカイロを私たちに手渡して、名前も告げずに去っていきました。
事前の相談会では、「ハンストや座り込みは、暗いイメージなので適当でない」という反対論もありましたが、「かんしょ踊り」(「会津磐梯山踊り」の起源)も飛び出し、盛り上がりました。
ゲート前行動に呼応して地元川内と日置地区で、連帯するグループが街頭宣伝を始め、50名の人が自宅でハンストを継続していると報告されました。東京・原子力規制委員会前でも座り込みとハンスト、福島でも連帯のハンストが行われました。
昨年4月、東京から来たIさんが「川内の家」を立ち上げ、9月には久見崎浜にテント村が誕生しました。毎日手製のチラシを配り、鹿児島から福岡九電本社までの311`リレーデモもやってのけました。地域との交流を重ねながら原発の喉元で監視を続け、毎朝欠かさずゲート前で原発で働く人たちへのスピーチを続けました。これら一つひとつの行動が、今回のゲート前行動として実を結んでいます。
原発、辺野古の基地建設、戦争法案は、根っこが同じです。無知・無関心・無気力が「今」を呼び込んだのです。一人ひとりが自分の責任で行動しなければ、何も変わりません。行動を起こせば必ず変えられます。私たちは、半歩前で行動する「場」を創り続けます。
「2号機の再稼働は、1号機と比べ桁違いに危険」と指摘するのは、渡辺悦司さん(内部被曝問題研究所)だ。川内原発1号機は、再稼働から1週間で復水器の細管が破損するというトラブルに見舞われたが、2号機で危惧される蒸気発生器の細管破損は、深刻な事故につながる。高圧の1次冷却水が圧力の低い2次側へ急速に漏出し、原子炉の冷却水が失われ、メルトダウンにつながる危険性をはらんでいるからだ。
蒸気発生器は、熱交換効率を上げるために配管の厚みが1・1〜1・3_しかない。常に流れている加圧された熱水のため配管が摩耗し、穴が開くリスクも高まる。「常時どこかに穴が開いていて、定期点検で塞ぐ」(原発エンジニア)といわれるほどだ。
九州電力が公表した資料によると、7年前に交換した1号機の蒸気発生器は35本の配管(伝熱細管)に穴が開きかけて施栓をした。ところが2号機で施栓をした配管は400カ所を超えるという。劣化が格段に進んでいる。
「配管が裂けて高圧水が漏れだすと、重大事故につながりかねない」と警告するのは広瀬隆さんだ。「摩耗した配管が破れて水が噴き出すと鉄砲玉のように隣の配管を壊し、連鎖反応で一気に破壊される。1987年にイギリスの高速増殖炉で起きた事故では、10秒未満で40本の配管が連鎖破断した。91年に起きた美浜原発2号機の事故は、蒸気発生器から噴き出した高圧水で配管がスパッと切れたギロチン破断だった」という。美浜原発の事故では20dの冷却水が漏れ出し、原子炉が空焚き寸前になった。
こうした危険性を九州電力も認識しており、交換用の蒸気発生器を準備済みだったのである。ところが九電は、再稼働を急ぐあまり交換せず再稼働させたのである。九電は次のように主張する。「信頼性向上の観点から2014年度の取り換えを計画していたが、新規制基準適合への作業などがあり、ひとまず交換せずに再稼働を目指すことにした。現行の蒸気発生器は非破壊検査をして健全性を確認している」。これは、安全軽視以外の何物でもない。
しかも、交換用の蒸気発生器も、交換すれば安全というものではないようだ。交換用に準備されている蒸気発生器は、三菱重工製だが、同社が納入した米国カリフォルニア州にあるサンオノフレ原発(3号機)の蒸気発生器は、11カ月間使用しただけで摩損し、一次冷却水が二次系に漏水する事故が生じて緊急停止した。
この事故を受けて、NRC(米原子力規制委員会)が、三菱重工の神戸工場に抜き打ち調査に入ったところ、定められた手順で安全検査を行っていないことが発覚。これによってサンオノフレ原発の廃炉が決定的になったという(堀潤氏/『週刊朝日』)。
こうしたなかSCEの親会社であるエジソン・インターナショナルは、三菱重工に対し、検査や補修費用として1億ドルを請求していたが、廃炉に伴う損害賠償(約9300億円)も求め、泥沼裁判が進行中である。
「福島事故を起こしたBWR(沸騰)型原発に比較してPWR(加圧水)型原発は『安全性が高い』などと言われるが、これは虚偽の主張だ」と語るのは、前出の渡辺さんだ。サンオノフレ原発は、反対運動の成果もあって、廃炉が決定された。渡辺さんは「サンオノフレ原発が先例を示したように、BWRだけでなくPWRも含め、原発全体を廃棄していかなければなりません」と語っている。
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