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2015/10/9更新

再稼働そのものを中止させるしかない
川内原発再起動時のトラブルに明らかな再稼働の危険性

市民と科学者の内部被曝問題研究会会員 渡邉 悦司

九州電力川内原発は、1号機が9月10日に営業運転に入った。2号機の再起動に向けた準備が進んでいる。だが1号機再起動時に、再稼働の日程が8月20日から26日まで6日間遅れるトラブルがあった。発電に使った水蒸気を水に戻す「復水器」という装置にある冷却用海水が通るチタン製細管5本に穴があいて、海水が2次冷却水側に漏れていたのである。

このトラブルは、深刻な性格のものだった。川内1号機は、すでに設備年齢が31年に達している。老朽化の進む原発を再稼働することそのことが、重大事故につながる著しい危険性をはらんでいることが、如実に示された。

九州電力は、「これら5本の細管がすべて、他の装置(高圧給水加熱器)から流れ込む排水の入口の近傍にあったため、起動時に排水が細管あるいは管板に『衝突した』ため配管が破損したのが原因であろう」と推定した。そのため九電は、穴の空いた5本とその周囲の配管64本、計69本をゴムで施栓した、と発表した。

そうであるなら、今回のトラブルの基礎には、細管が起動手順どおりの排水が当たった程度で穴が開くほど設計時の強度以下に劣化・ぜい弱化している、という事実がある。つまり、九電の推論からは、最低でも、すべての復水器(九電資料によると3基6室ある)について、ドレン入り口に近い配管をすべて施栓する必要がある(加えて最低でも69本×5室=345本)という結論が出てくる。また、当然すべての復水器配管(8万本ある)について、その健全性を詳しくチェックしなければ安全性は確保されない、ということになる。

九電は、復水器の冷却用配管を「全数検査した」とは発表しておらず、細管の減肉や腐食や損傷の全数点検は、行われていない。

しかも配管損傷の原因は、九電の推定以外にも多く考えられる。たとえば、@復水器ドレンがつながっている「高圧給水加熱器」でのトラブル(配管損傷)、Aタービン翼の破損による金属片の混入、B海洋生物のフジツボの付着など配管の生物学的腐食、C振動などによる摩擦損傷、D海水中の化学成分による配管腐食、などである。しかし、これらについて、きちんと検査が行われたとは考えられない。

それにもかかわらず、九電は応急的措置だけで、その他の原因がある可能性も明らかなのに、稼働を強行した。最低でも、川内原発の稼働を止めて、8万本の復水器全配管を点検しなければならなかった。また、復水器細管の劣化が見られるということは、蒸気発生器の細管についても劣化の危険性があり、これも再点検するのが当然だった。

非常時の安全を考慮しない思考

さらに問題なのは、原子力規制委員会もこのような場当たり的対応を容認していることだ。原子力規制庁の担当者は、稼働を止めて徹底した検査を行うように要求した市民団体に対して、「復水器は、発電上重要な施設だが、安全上重要な施設ではない」と言って拒否したという。

これは、原子炉の「安全」を、「正常運転」時の状態としてしか考えない、まったくの倒錯した思考である。誰が考えてもわかるとおり、停電や津波などにより海水ポンプが停止してしまう事態が生じれば、冷却・復水が行われなくなる。原子炉冷却の最終段が停止してしまう。そうすると、復水器内の圧力は、タービンから流れて来る蒸気によって一気に上昇する。復水器内の圧力は、海水による冷却が行われるという条件の下で、またその条件下でだけ、非常に低く保たれている。

その条件がなくなれば、加圧ポンプの圧力である最大およそ58気圧に向かって、急速に上昇していく。九電の説明どおり、ドレン口からの排水によって穴があく程度に細管が劣化し脆弱化しているとすれば、この復水器内の圧力上昇の結果、海水の通る細管が破断するであろうことは、容易に想像できる。そうすれば、2次冷却水が破断部を通って海水へと大量に漏れ出す事態が生じるであろう。

最悪の場合、これによって2次系の圧力が低下し、厚さわずか1_余程度しかない蒸気発生器細管に、1次系の加圧・約154気圧がかかることになる。細管は破断し、高い放射能を含む1次冷却水が2次系に漏れ出す事態が引き起こされるだろう。これにより1次冷却水による原子炉の冷却が不備あるいは不能になり、メルトダウンという重大な事態に陥りかねないことは、誰が見ても明らかだ。付言すれば、2号機はこの蒸気発生器細管の劣化が明らかであり、再稼働はさらに危険である。

驚くべき危険な「世界一厳しい規制基準」(安倍首相)というほかない。原発事故に対する政府・電力会社の基本的な考え方そのものは、変化している。「事故は起こらない」から、「事故は起きてもよい」へと、「安全神話」から「確率論的事故容認論」(政府文書では22年程度に1度福島クラス事故が想定されている)へと移行している。人民の力で再稼働そのものを中止させるほかない。

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