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2015/9/21更新

マイナンバー

「共通番号いらないネット」全国討論交流集会報告
制度の廃止(番号法の撤廃)を
番号通知(10月)制度運用開始(来年1月)の延期を

豊中市議会議員/
カンカンネット(共通番号制と監視管理社会化に反対する市民ネットワーク)木村 真

「IT時代の国民総背番号制」とも言われる共通番号(マイナンバー)制。@中・長期滞在の外国籍市民を含む全ての日本住民に、原則生涯不変の12ケタの番号をつけ、A各行政機関が保有している個人情報を、番号で情報連携し、B一元的に管理する、というものだ。民間利用も想定されている。いよいよ10月から、番号の付番と通知が始まり、来年1月からは市役所や税務署などでの手続きの際に、個人番号の記入を求められるようになる。

共通番号制をめぐっては、@情報漏えいやなりすまし犯罪の危険性、A莫大な金をIT業界に貢ぐ一方、効果については不透明、Bプライバシー権の侵害で憲法違反、C国家が個人情報を一元管理することで、管理と監視を強化し、「警察国家」への道をひらくことになる…等々の批判や指摘がなされてきた。

全国各地で共通番号制に反対する動きもできつつある。今年2月には各地の運動をつなぎ、より大きくひろげるために「共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会」(略称「共通番号いらないネット」)が結成された。8月28・29日の両日、東京で開かれた「いらないネット」の全国討論交流集会に参加したので、報告する。

前倒しされる民間利用

参議院議員会館での集会は28日、さまざまな運動・団体にかかわる人たち、学者、自治体議員らが次々と発言し、報告やアピールを行う形で進められた。冒頭、上智大学教授の田島泰彦氏は、制度運用開始前からすでに番号利用対象を拡大する改正法案が成立寸前であるという推進側の異常な「前のめり」ぶりや、盗聴法改悪(参院議員会館で直前まで反対集会が開かれていた)にも触れながら、共通番号制は自己情報コントロール権を侵害する憲法違反であり、「制度廃止・番号法撤廃が必要である」と訴えた

続いて各運動団体などからの発言では、制度そのものがはらむ問題はもちろんのこと、10月からの番号通知・来年1月からの番号利用開始へ向けた準備が遅れており(特に自治体や民間企業での実務)、混乱は必至で、スケジュールにも無理がある、という指摘が相次いだ。

自治体情報政策研究所の黒田充氏は、内閣府大臣補佐官が示した「案」に過ぎなかった「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ」が、「日本再興戦略」「IT国家創造宣言」などに盛り込まれる形ですでに閣議決定されていることを指摘。カードの常時携行を義務づけて、カード不携帯の者を不審者扱いするという管理監視社会への道は、一部の誇大妄想などではなく、具体的な計画として実際に進められているのだ、と述べた。

同ロードマップによると、来年4月には、民間事業者が個人番号カードのICチップへの記録、読み取りができるようにし、各種会員証などとしての利用も閣議決定されている。また17年には、国機関の間での情報連携が開始され、18年には、運転免許証・医師免許・教員免許との一体化、健康保険証として利用も予定されている(左表参照)。

自治体議員からは、@自治体の対応は「国からの指示待ち」である、A通知直前の今に至っても、実務作業の細部については国から具体的な指示もなく、全く煮詰まっていない、Bにもかかわらず、国に対してモノ申す姿勢はほとんどなく唯々諾々と付き従っている、などについて報告があった。

前日に参院内閣委で番号を取り扱う範囲を拡大する改正法案が可決されたばかりだったが、個人情報流出の危険性を追及され、まともに答弁すらできないまま採決を強行。9月3日に衆院で可決され、成立してしまった。

番号カードは申請しない

29日は、豊島区民センターで討論集会となった。10時から15時まで充分な時間をかけて討論・意見交換した。

私からは、番号通知カードの受取拒否の呼びかけをした。共通番号制では、役所手続きの際に個人番号の記入を求められる。雇用労働者の場合、源泉徴収など税務関連事務のため、事業所に個人番号を示さねばならない。自分の番号がわからないと、市民生活を営む上でさまざまな不都合が予想されるため、カード受取拒否を広く呼びかけるのは無理と判断し、「カード受け取りはやむを得ないが、任意である個人番号カード(本カード)の交付を申請しない」よう呼びかけていこう、というのが「いらないネット」の方針だった。これに対して、私は、@市役所では、手続きの際に個人番号の記入がなくても書類は受理する、A税務署も、事業所からの税務関係書類に従業員の個人番号の記載がなくても受理する、と確認済なので、当面は、個人番号を記入しなくても不利益・不都合はなく、通知カードの受け取りを拒否しても、差し支えはないと指摘した。

これに対しては、「通知カードの受け取りや、行政手続きの際の番号記入を拒否しても、付番はされているし、役所内では番号で処理され情報連携もされる。つまり「制度の枠外に出ることはできない」「会社員が会社から記入を求められて拒否できるだろうか」などの問題点が指摘された。一方で、「明確な意思表示の方法としてはあり得るし、パフォーマンスとしては有効」「集団で通知カードを返上したり、番号制を所管する内閣府前で通知カードを燃やすなど、マスコミを意識したアクションは面白いのでは」という意見もあった。ただし、通知カードは世帯単位で送付されるので、家族全員のカードを受取拒否することになるなど、広く市民に呼びかけるのは、やはり難しいのかもしれない。

政府は、2019年3月までに番号カード(本カード)発行8700万枚という目標を掲げている。公務員の身分証・健康保険証・運転免許証、果てはクレジットカードや各種会員証など民間利用まで「ロードマップ」には明記されており、なりふりかまわず番号カードの利用範囲を拡大し、これによって番号制度を後戻りできないところまで浸透させる目論見である。

これを頓挫させるには、番号カードの普及を阻止することがポイントなので、やはり「番号カード不申請」の呼びかけが最も重要だろう。通知カード受取拒否・番号記入拒否は、一定の意味はあるものの、あくまで「意思表示」「パフォーマンス」と位置づけられるだろう。

地元地域での運動が重要

さまざまな意見が交わされた討論だったが、最終的には、@10月からの番号通知と1月からの実際の番号利用開始の延期を求めていく、A番号通知開始直前の10月3日に東京で大規模な集会・デモを行う、B番号が通知され利用も開始されたら、個人番号カードの不申請(番号カードはいらない!)を呼びかけるという方針に落ち着いた。

初日の院内集会でのさまざまな立場からの数多くの発言、二日目のじっくり時間をかけた討論、どちらもたいへん有意義だった。今後も、地元(大阪府豊中市)で市民へのアピールや行政交渉を続けながら、各地の運動とも連携し、差し当たっては制度運用開始の延期、そして制度そのものの廃止・番号法撤廃を求めていくつもりだ。

マイナンバー利活用推進ロードマップ

2016.1個人番号カード交付開始国家公務員の身分証として利用

3月末カード発行1,000万枚

4月ICチップの民間開放(企業が個人番号カードのICチップへの記録、読み取りができるようになり、各種会員証などとしての利用が可に)

2016〜17オンラインショッピング、オンラインバンキング、ネット証券の認証に活用

2017.1国機関間の情報連携開始、マイナポータル(官民サービスとも連携)運用開始

2017.7全ての公共機関を繋ぐ情報連携網が完成

2017〜19個人番号カードをデビッドカード、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード、診察券などとして利用

2018個人番号カードと運転免許証・医師免許・教員免許との一体化、健康保険証として利用

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