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2015/8/26更新

戦後70年東アジアの未来へ!市民宣言
憲法9条違反の日米同盟解消こそ私たちの責任だ

東京大学教授 ・ 高橋 哲哉 氏 講演から

戦後70年を迎えた8月15日、大阪市内で「戦後70年 東アジアの未来へ! 宣言する市民加害の歴史にしっかりむきあってこそ平和な未来を築くことができる」が開催された。安倍談話と安保法制についての高橋哲哉さんの講演内容を紹介する。(編集部ラボルテ)

※ ※ ※

安倍首相には「あの戦争は、自存自衛のためであり、アジア解放の意味もあった。慰安婦問題などは捏造であって、反日勢力による日本への攻撃に過ぎないんだ」といった靖国史観があります。彼は談話で、靖国史観を出すことができなかった。彼を支持してきたコアな支持者である桜井よしこさんや中西輝政さんからみれば、「裏切られた」と感じるでしょう。彼の中には敗北感があるはずです。

「一般化」による加害責任からの逃亡

しかし安倍談話は、日本の植民地支配と侵略の加害責任が極めて曖昧で、加害責任からの逃走が図られています。誰が誰に対して何をしたのか、主語と目的語が曖昧になっています。談話の冒頭では「百年以上前の世界には、西洋諸国を中心とした国々の広大な植民地が、広がっていました」とあります。「百年以上前の広大な植民地支配」に、日本は加担しているのか。日本が植民地支配を行った台湾や朝鮮半島の事実が消し去られています。

満州事変以降の侵略戦争の歴史については、「進むべき進路を誤った」と述べており、英語版では「悪い道を選んだ」と書かれています。「悪かった」との価値判断は唯一ここで示されていて、米国に配慮した形なのでしょう。それでは、満州事変以降を加害の歴史として、責任を引き受けようとしているのか。

例えば、「いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」と述べています。どの国がどの国を侵略したのかを、はっきり言わない。「戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません」として、慰安婦問題について一応の反省をほのめかしています。しかし、慰安婦・性奴隷という表現を決して使わない。

こうした「一般化」による日本の加害責任からの逃亡が何度も繰り返されている「歴史認識」にしか過ぎません。政治指導者として安倍首相自身の痛切な反省を表明することもなく、村山談話からの大幅な後退だと思います。

ドイツはどうか。ドイツの政治指導者は、ユダヤ人をはじめとした旧ソ連諸国やポーランドなど甚大な被害を受けた人々に対して、名指しで哀悼の意を捧げています。ロシアの戦勝式典、ポーランドのワルシャワ蜂起式典、イスラエルの国会などで「ドイツ国民を代表して許しを乞います」と表明しています。ドイツの政治指導者は、人々から反対を受けるなかでも被害国を訪問し、痛切な反省を表明しているのです。

安倍首相の言動のギャップ

安倍談話では「自由・民主主義・人権・法の支配の価値観」を重視する、としています。安倍政権は、自由を大事にしているのでしょうか。

マスコミへの圧迫によって表現の自由を蔑ろにしているのは誰なのか。辺野古基地移設に反対している沖縄や、原発再稼動反対の声を、安倍政権は無視している。これのどこに民主主義の尊重があるのか。従軍慰安婦について、首相は「ねつ造」と言い切りました。安保法制強行に法の支配はない。言っていることとやっていることに、大きなギャップがあります。

安保法制の強行で、憲法違反の集団的自衛権の行使が認められようとしています。安倍首相は04年、自民党幹事長時代に「国を守る決意」という対談で、日米安保条約を双務性にし、集団的自衛権の確立を目指す、と表明しています。

また、「国家が存続するためには、命を投げうってでも守ろうとする人がいないと、国家は成り立ちません。その人の歩みを褒め称えることをしなければ、誰が国のために汗や血を流すでしょうか」と発言しています。

即ち、安倍首相の靖国神社の参拝への執念というのは、単なる過去の戦死者の慰霊ではなく、これから血を流す若者を確保するためなのです。武力行使のためには、血を流す覚悟をもつ若者を集めなければいけない。首相は靖国神社参拝によって、これからの犠牲者として若者を顕彰していくのです。集団的自衛権と靖国参拝は、本質的に結びついているのです。

首相が語る「戦後70年、平和国家としての日本を誇る」にも、違和感をもたざるえなません。憲法9条は守るべきものです。しかし、憲法9条の下で、戦争と関わり、米国の戦争に荷担してきたことを想起すべきです。日米安保条約に基づいて米軍基地があり、その大多数が沖縄に集中しています。基地から出撃した在日米軍機が、朝鮮戦争からイラク戦争にいたる数多くの戦争でどれだけの多くの人々を殺傷してきたのか。

今年5月の世論調査では、護憲6割・改憲3割として平和主義思考が定着した、と書かれていました。しかし、一方で「日米同盟をどう思いますか」という問いに対して、8割以上が日米同盟支持なのです。ここに、戦後日本の根本的な矛盾があります。私は、日米同盟が憲法9条に反するとして、解消に向けて働きかけるべきだと思います。それが私たちの責任ではないでしょうか。

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