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2015/8/26更新

8/11 川内原発再稼働

危険で高価な原発─厳重な警備のなかで再稼働強行
わずか10日後に配管トラブル
電気は足りていても動かす理由とは?

川内原発1号機は、再稼働からわずか10日で復水器のトラブルに見舞われた。九電は、「原子炉の運転に影響がない」と発表したが、同日、原子炉から白煙が上がる動画を久美崎テント村の人々が配信している。

再稼働に高い事故リスクが伴うことは、再稼働阻止集会でも繰り返し指摘されたが、その心配が早くも現実となった。

8月11日、新規制基準初の再稼働となった川内原発周辺では、8日から連続して再稼働阻止行動が取り組まれた。カンカン照りのなか、9日は、久美崎海岸で全国集会、10・11日は、九州全域から動員された警察官や警備員が厳戒態勢を敷くなか、正門ゲート前に集まった200名以上が抗議の声をあげ続けた。抗議は今も続いているが、再稼働に対し、@安全性への懸念、A避難計画の不備、に加えて、B2年間原発なしで電気は足りており、そもそも再稼働の必要性がない、などの批判が語られた。特に地元住民らは、住民の安全や生活を軽んじて拙速な再稼働へ走る九電への不信を訴えた。9〜11日の現地の様子を報告する。(編集部・山田)

4年間止まっていた原発を動かすリスク

「事故は必ず起きる。科学者として私は予言できる」―こう語るのは、木原壯林氏(京都工繊大学名誉教授、元東海村原研研究員)だ。第1の理由は、1号機が4年間も止まっていたからだ。稼働開始から30年経つ川内原発1号基は、放射線によって配管などさまざまな材料が脆性老化している。その上4年間も停止したままで、その間さらに腐食や劣化が進んでいる可能性が高い。九電は、最大限の注意を払って点検・修復をしているだろうが、パソコンなどない時代に設計され、設計図も全部はそろっていないのが実態だ。

1基の原発に使われる配管は、総延長で約120q、総数で約5万本にも達する。その配管が1カ所でも壊れれば事故に至る。これが「事故は必ず起きる」という予言の根拠だ。

大事故を危惧するのは、広瀬隆さんも同様だ。「一番怖いのは、蒸気発生機の細管破壊だ」と語る。川内原発は加圧水型であるため、肉厚1・3_しかない蒸気発生器細管の破断から大事故に至る構造上の弱点がもともと指摘されていた。加圧水型原発は、1次冷却水を沸騰させないために150気圧まで水圧を上げているので、「いったん破断すると、水が鉄砲の弾のように吹きだし隣の管を破るという連鎖反応が起こる」(広瀬)という。

1991年2月9日、関西電力美浜原発2号炉で、伝熱細管がギロチン破断するという事故が起きている。この時は非常用炉心冷却装置が自動作動して原子炉は停止したが、大事故の一歩手前だったのである。当時の美浜原発より劣化が進み、4年間も停止していた川内原発が、無事故で次の定期点検を迎える可能性の方が低いのではなかろうか。

実際、国際原子力機関や米国、カナダの規制当局のデータを見ると、4年以上停止した原発が再稼働されたケースは世界で14基。そのすべてが運転再開後にトラブルに見舞われている。

米原子力規制委員会(NRC)の委員長を務めていたアリソン・マクファーレン氏は「原子炉が長期にわたって停止していた場合、長い間休止状態にあった機器や、さびついた運転技術により問題が発生する可能性がある」とコメントしている。

スウェーデンでは、独電力大手エーオンが、1992年から停止していたオスカーシャム原発1号機を96年に再稼働したが、翌年に6回も緊急停止するトラブルが起こったほか、配管に亀裂が見つかったことから、38日間の予定だった燃料交換作業に4カ月以上を要している。

また、原子力技術コンサルティング会社、ラージ&アソシエイトのジョン・ラージ社長は、日本は「国中の原子炉がすべて4年間停止した状態」にあり、「原子力規制委員会は想定外の事態に備えなければならない」と指摘。規制委がいま直面している状況は「他のどの国に存在しない、まったく固有の事態」だと話した。(以上、「ブルームバーグ」〔経済・金融情報の配信、通信社・放送事業を手がけるアメリカ合衆国の大手総合情報サービス会社。本社はニューヨーク〕より)

企業利益のため住民に犠牲を強いる九州電力

再稼働のボタンを押した九州電力の2015年4〜6月期の営業利益は、燃料価格低下の恩恵を受けて5年ぶりに黒字に転じている。現在の為替レートや燃料価格を前提にすると、川内原発1号機が稼働すれば月75億円の収支改善効果が生まれるという。

九州電力の瓜生道明社長は「これまで以上に緊張感をもって、安全確保を最優先に今後の過程を慎重に進めてまいります」との声明文を発表したが、再稼働が九電の利益確保のためであることは明白。太陽光発電の接続拒否と合わせて、エゴ丸出しの企業体質だ。

電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)も「このたびの原子炉起動は、大きな節目の一つと受け止めている」とのコメントを発表。他のプラントについても、規制基準の適合性審査に真摯に対応し、「1日も早い再稼働を目指してまいりたい」との考えを明らかにした。 原発依存度が最も高い関西電力も、再稼働への歩みを強める、との宣言だ。

原子炉等規制法は、原発を30年以上運転する場合、電力会社が設備の劣化具合を評価して中長期の保守管理方針を策定するよう義務づけている。1号機は昨年7月に運転開始から30年を迎えたが、九電の書類提出が遅れ、認可が大幅に遅れた。本来なら、罰則を与えるべき九電に対して、規制委は極めて寛容だ。

しかし、「現場技術者こそトラブルが起こると知っている」と語るのは、先の広瀬隆さんだ。原発技術者は、再稼働に向けて部分ごとに点検・整備を進めてきたが、原子炉を稼働して圧力をかけ高温にした時に、正常に動くかはテストできない。「11日の再稼働は、まさにその実験なのです」と広瀬氏は語る。「社長は何も知らないから動かせと命令してますが、中でやっている人は怖いんです。だけど声に出した瞬間に解雇ですから、声は出せません。欠陥があっても、怖くて言えないのです」と分析した(10日・ゲート前集会にて)。

木原壯林氏は、再稼働してはならないもう一つの理由として次のように語った。「原子炉を止めて4年経っているので、燃料棒が十分冷えて、放射線量も減少し、空冷で運搬できるようになる。しかし再稼働すると、元の木阿弥。再び、燃料プールで冷やし続けなければならなくなる。核燃料は、空冷で運搬できるようになれば、危険度は相当減少する。だから絶対に動かしてはならないのである」。

責任を取らない九電&政府

事故の可能性については、原子力規制委員会・田中委員長自身が「(規制基準を満たしたことが)安全性を保証するものではない」と繰り返し述べている。ところが安倍首相は、「安全性を確認できた原発から再稼働する」とすり替え、再稼働を進めてきた。安倍首相が安全性について責任がとれる道理はない。つまり、誰も責任を取らないでもいいという体制のままで進んでいるのが再稼働の現実だ。

実際、政府は福島事故について責任を放棄している。放射線障害防止法によって立ち入りが禁止されるべき地域に数十万の住民が生活している現実を放置するばかりか、被害を過小評価し、県外避難した住民に帰還を促している。このような政府が、事故被害について責任をとれるはずがないし、取ろうともしていないのである。

安保と原発の緊密な関係

たんぽぽ舎の柳田真さんは、「安全保障と原発が密接につながっている」と、「再稼働前決起集会」(9日・正門ゲート前)で指摘した。戦争になれば、原発は真っ先に攻撃目標となる。原発を破壊すれば、核攻撃と同じだからだ。さらに、「原発企業と軍需企業は同じ」であることも指摘した。三菱重工・東芝・日立は、原発メーカーであると同時に軍事産業でもある。

そもそも自民党が原発を導入した理由は、「安いエネルギー源確保」だけではない。核兵器開発を視野に入れての導入だったのである。だから、毎年5千億円もの税金を出し続けてきたのである。

東芝の粉飾決算が明らかになった。3年間1500億円にも及ぶ粉飾決算を、ほとんどのマスコミは「不適切な会計処理」と報じた。しかし、これは疑いもなく粉飾であり「原発スキャンダル」でもある。日本最大の原子炉・関連機器メーカーである同社は、「原子力ルネッサンス」を推進しようとしたが、福島原発事故で挫折。稼ぎ頭だった原子力部門がほとんど頓死状態に陥る中で、海外に活路を求めて悪あがきした挙げ句に、その巨大損失を隠すために前代未聞の虚飾に走ったことに、根本原因がある。

国策会社・軍事産業は特別扱いされ保護育成される現実は、前号で廣瀬純さんが指摘した「法の枠外で行使される資本の権力」そのものだ。

問われるモラル劣化するモラル

最後に、鎌田慧さんのアピールを紹介する。再稼働はモラルに反する行為だ、と指摘した。

―8月は鎮魂の月です。戦争を振り返り、平和を創っていく決意を新たにする月です。8月6日は広島に、9日は長崎に原爆が落とされた日です。そして15日は、敗戦70年を迎えて「戦争は絶対にしない」という決意を固める8月に、九電は、原発を再稼働しようとしています。

再稼働の目的は、金儲けだけです。金儲けのためには人が死んでもかまわないというのは、軍需産業の論理であり、軍国主義の論理です。

原発の是非についての論議は、既に決着がついています。「原発は安全で安い」はウソだったし、原発なしでも電力は足りている。全てウソだったにもかかわらず、金儲けのためなら動かすという、モラルに反する行為です。

福島では多くの人が故郷と仕事を奪われ、家庭が破壊され、未来が見えない苦しみを背負わされています。にもかかわらず、誰も罰せられていない。これも、モラルに反することです。

川内原発は、免震重要棟もベントも完成していません。カルデラに囲まれ火山噴火のリスクを見ず、避難計画も機能しない。病弱者はどうなっても構わない。こういう命を軽んじた工場が原発です。

鹿児島県は、再稼働反対集会の会場を貸さないと言ってきました。表現の自由の弾圧です。これが原子力社会・核社会の本質です。人間の自由や希望や行動を抑圧するのが、原発体制です。だから脱原発運動は、恐怖からの解放を求め、自由を守るための運動であり、全ての命を守ろうとする運動です。―

川内原発は、すぐにトラブルを起こす可能性が高い。しかし、九電はトラブルを隠し、運転を続けようとするに違いない。小さなトラブルもこれを暴き批判を強めて、廃炉につなげていくことが、集会でも確認された。

仏教で餓鬼というのは、飢えた状態を指しているのではない。食べても食べても満足できない状態を言う。エネルギーや快適さを得ておきながら満足できず、さらに求めているとしたら、日本は、餓鬼の道に入っていると言えるのではないか。

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