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2015/8/14更新

メディア時評

戦争法案と記者クラブメディア(下)
山本太郎氏の重要な問題提起を伝えない御用メディア

浅野健一(ジャーナリスト/同志社大学大学院社会学研究科博士課程教授〔京都地裁で地位確認係争中〕)

戦争法案を審議する参院特別委の集中審議で、安倍晋三首相らの答弁の迷走が止まらない。「弾道ミサイルも弾薬」「核兵器輸送も可能」「中国を脅威と見なしていない」「米イージス艦が単独で来ることはない」…。しかし、東京新聞を除く記者クラブメディアは、無知無能な閣僚の説明にならない説明を垂れ流し、根源的な批判を怠っている。

NHKは、自公よりファッショ的な次世代の党などの無意味な質疑を大きく報じ、「生活の党と山本太郎となかまたち」の山本共同代表の7月29、30両日の質疑をニュースで報じなかった。朝日新聞も30日朝刊に発言要旨を短く伝えただけで、重要な問題提起を伝えなかった。

山本氏は29日の特別委で、「川内原発の原子炉が弾道ミサイルで攻撃を受けた場合、どの程度の放射性物質の放出を想定しているのか」と質問。原子力規制委員会の田中俊一委員長は「ミサイルによって放射能が放出されるという事態は想定していない」と回答。首相は「発生する被害もさまざまで、一概に答えることは難しい」と述べた。

30日には、米英軍のイラク侵略時に、航空自衛隊がイラク全土で輸送したものは何かを聞いた。山本氏は「政府は、国連など人道復興支援のための人員、物資の輸送と説明していたが、04年3月から08年12月までの全記録では、全体で4万6000人輸送した。国連関係者は6%で、約60%以上が米軍や米軍属だった」と指摘し、空自は戦争支援したのでは、と質した。首相はまともに答えられなかった。

また、「空自のイラクでの活動については、08年の名古屋高裁で憲法違反だという判決が確定している」と指摘した。ところが、中谷防衛相は「同高裁判決で、損害賠償請求は法的根拠がないとして棄却され、国側が全面勝訴の判決だった」と答弁した。とんでもない司法判断無視だ。確かに、国は勝訴したが、高裁は空自の活動が憲法9条だけでなくイラク特措法にも違反していると認定し、判決は確定している。閣僚辞任にも値する暴言だが、防衛相を批判した主要メディアはない。

イラク戦争は誤った戦争だったという山本氏の指摘に対し、首相は「サダム・フセイン独裁政権は、かつては間違いなく化学兵器を持ち、それをイラン・イラク戦争で使用し、多くの自国民も殺した。それを、大量破壊兵器はないことを証明する機会を与えたにもかかわらず、実施しなかった。そこで、国連安保理決議によって正当化された」。

米英日によるイラク侵略・強制占領は、安保理決議に基づかない違法な先制攻撃であり、「開戦」の理由とされた大量破壊兵器はなかったこと、米情報機関が情報を捏造していたことが明白になっている。元英外相は謝罪し、NYタイムズなど米主要紙も読者に謝っている。イラク戦争について、英米も含め、こんな無茶苦茶な総括をしている政治家は日本以外にいない。

山本氏は「米英の片棒を担いだのは日本。その総括がなされずに、自衛隊をまた外に出す?これ、総括必要ですよ」と質疑を締めくくった。

首相は、ほとんどの憲法学者が法案の違憲性を指摘していることについて、「憲法学者の6割は自衛隊違憲論者で、もともと自衛権も認めていない。残りの人も、法案の合憲性を理解していない」と答弁している。意味が分からない。自衛隊が違憲なら、自衛隊を廃止すべきだ。安保法制懇、新談話などでは、学者を集めて報告書を出させてアリバイ作りに使いながら、都合の悪い時には、学者には任せられないと言い放つのだ。

企業メディアの政権との裏取引は犯罪

安倍親衛隊の妄言も止まらない。礒崎陽輔首相補佐官は7月26日、大分市内での講演で、戦争法案をめぐって「法的安定性は関係ない」と発言。礒崎氏は3日、特別委に参考人として呼ばれ、発言を撤回したが、首相は礒崎補佐官の更迭を否定した。NHKは参考人質疑を中継しなかった。

大西英男衆院議員は、7月30日に党本部であった原子力政策の会合で、原発再稼働に批判的なテレビ・コメンテーターについて、「各個撃破でいいから、ぜひ行って、みなさんの持っている知識を知らしめてください」と発言した。

武藤貴也衆院議員は31日、戦争法案に反対するデモ活動を行っている「SEALDs」の学生をツイッターで「彼ら彼女らの主張は『だって戦争に行きたくないじゃん』という自分中心、極端な利己的考えに基づく」と批判した。

戦争法案が、元A級戦犯被疑者の岸信介元首相を崇拝する安倍首相の個人的願望を実現するためと、米国の命令に従って強行されようとしていることが明白になった。

安倍自公政権が法案成立を諦めないのは、読売、産経、日経、NHKなどの報道機関が法案支持だからだ。

特に読売新聞の責任は重大だ。衆院での採決について、「強行採決」という言葉を全く使わなかった。17日の社説は「日本の平和確保に重要な前進」と評価した。識者の見解を載せる時に、法案反対の学者を一度も登場させていない。読売新聞の世論調査での質問もすさまじい。「安全保障関連法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか、反対ですか」。露骨な誘導尋問にもかかわらず、調査結果は、賛成は38%で反対が51%だった。

東京の学士会館で7月20日に開かれた安全保障関連法案に反対する学者の会、「学者150人会見」に私も参加した。ノーベル物理学賞受賞者の益川敏英氏は「安倍首相に鉄槌を下し、安倍政権を退陣に追い込もう」と訴えた。

高山佳奈子京都大学教授(刑法)はIWJのインタビューにこう述べた。

「首相と夕食会というのをマスメディアの要職の方々が何十回も繰り返している。圧力をかけたり、それから裏取引をしたりということは、場合によっては『刑事罰の対象になる行為』である。『業務妨害罪』であるとか、あるいは民間の『贈収賄罪』というような犯罪類型もある」と述べている。「No Nukes 原発ゼロ」のサイトで読める。

企業メディアの社員たちが今やっていることは犯罪なのだ。

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