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2015/8/14更新

7月6〜10日の日程で、沖縄を訪れた。台風9号による影響で、辺野古や高江の座り込みテントも強風対策で一時撤収となった。その前日の8日、辺野古や普天間で活動を続けられているおふたりに話をうかがった。(編集部一ノ瀬)

沖縄@辺野古

それぞれの場所で沖縄への思いをつなげてほしい

金井 創さん(沖縄キリスト教学院平和研究所コーディネーター/「不屈号」船長)インタビュー

7月8日、辺野古で金井創さん(日本基督教団佐敷教会牧師)にインタビューした。金井さんは、抗議船「不屈号」船長の1人として週2〜3度、辺野古・大浦湾の海上での阻止行動に出られている。また、沖縄キリスト教学院平和研究所コーディネーター・沖縄キリスト教学院大学講師として学生たちと日常的に接している。金井さんに辺野古の現状、米軍基地への若者の意識についてうかがった。 (文責・編集部)

* * *

──辺野古の状況について。

金井…ボーリング調査は、遅れに遅れています。昨年11月に終わっている予定でしたが、何度も予定を延期され、調査は終了していません。海上での抗議行動が一定の成果を上げています。

ただし、国・沖縄防衛局の作業を完全にストップさせることは難しい。現場でできることは、せいぜい工事を半日引き延ばすことでしょう。新基地建設を止めるのは、最終的には政治の力です。海上やゲート前での抗議行動が工事を引き延ばしている間に、多くの人に関心を持ってもらい、辺野古の闘いへの共感の輪を広げ、世論を動かす。そのために、私たちが辺野古の現場にいることの意味は大きいと思います。

ボーリング調査が終われば、いよいよ本体工事です。政府・沖縄防衛局は、ますます強行してくるでしょう。それでも稲嶺名護市長や翁長県知事が反対しているので、心強く思っています。

──辺野古の環境に変化は出ていますか?

金井…制限海域を示す浮標灯(ブイ)用のアンカーとして、20dのコンクリートブロックが投入されたために、珊瑚の損傷が確認されています。またそれより小さいアンカーは、台風の度に海底を引きずられ、海底を傷つけています。

私は、抗議船「不屈号」の船長として、週3回、辺野古・大浦湾の海上に出ていますが、今のところ汚染や生態系の変化など、目立った変化は見られません。

私が心配しているのは、長期間海上にフロートが浮かべられていることによって、潮の流れに影響が出ないか、ということです。

学生の6割が「基地賛成」?!

──基地問題に対する、沖縄の若者の意識はどうですか?

金井…沖縄キリスト教学院大学の学生たちが「チーム琉球」をつくって平和運動をしているのですが、彼らが慰霊の日を前に、学内で沖縄の米軍基地についてシール投票を実施しました。結果は、回答200人のうち「基地賛成」が約6割というものでした。

沖縄では、6月23日の「慰霊の日」を前後して、学校で沖縄戦についての「平和教育」がしっかりと行われています。沖縄戦では、県民の3人に1人が犠牲になったため、親戚の中に誰か1人は犠牲者がいます。幼いころから沖縄戦の体験談を「身近な話」として聞いて育つのです。にもかかわらず、6割が「賛成」という結果は、衝撃的でした。

沖縄戦と今の米軍基地問題が結びついていないのです。多くの学生たちにとって米軍基地は、「アメリカ文化の窓口」になっています。スポーツ、映画、エンターテイメントなどの「身近なアメリカ文化」の象徴なのです。軍隊や兵器に興味があったり、軍事上の必要から賛成、というのではありません。沖縄の米軍基地では、年1回「基地フェスティバル」が開かれて、基地が開放されます。基地を見学し、PX(基地売店)でのアメリカ商品の買い物を楽しみにしているのです。ディズニーランドやハリウッドと似た存在なのでしょう。

しかし在沖米軍は、事故や騒音問題を起こしているだけでなく、日常的に米兵の交通事故や暴力事件を起こしています。なぜ沖縄に米軍が駐留しているのか、米軍基地がアフガンやイラクでどんな役割を果たしているのか、実感がないのです。沖縄戦と基地問題のつなぎ直しが必要だと思います。

──闘い続ける沖縄の力の源は何でしょう?

金井…沖縄の人々の骨身に染みこんでいる沖縄戦の体験が大きいです。また辺野古では、戦争中から今に至るまで、海の恵みがあったからこそ命をつないでこれた、という生活の実感もあります。また、戦後生まれ世代にとっても、こんな美しい海を壊してはいけない、ましてや新基地など受け入れられない、という思いは当然です。

かつて在沖米軍は、ベトナム、アフガン、イラクでの戦争で、先陣を切って出撃していきました。そこで多くの人々が殺され、街が破壊されていきました。米軍基地を抱えることで、沖縄は「加害者」の立場を強いられてきました。これ以上加害者の立場には立ちたくない、との思いがあるのです。

──辺野古の現地から、本土へのメッセージを

金井…1人でも多くの人が座り込みやカヌー隊に参加してくれたら、大きな力になります。今も沖縄だけでなく、全国から時間をかけて辺野古に来る人がいます。ありがたいことです。

まずは、辺野古で何が起こっているのかを、自分の目で見てほしい、ということです。長期間滞在できなくても、半日でも1時間でも、見学だけでもいい。仲間同士でお金を出し合って、誰かを送り出すのでもいい。現実を知ることが第一歩です。

2つめに、皆さんのそれぞれの居場所で、沖縄への思いをつなげてほしい。各地で沖縄に連帯する集会やデモが行われていますが、それに参加できなくても、友人や知人と話をするのもいい。カンパや寄せ書きを送ってもらうのだって、「私たちは孤立していないんだ」と実感させられて、勇気づけられます。

3つめに、皆さんが直面する課題に積極的に関わってほしい。差別され、虐げられる側の人々に関わることは、同じ闘いを共有することになります。今の政治を変え、よりよい社会をつくっていく闘いへの参加が、沖縄・辺野古ともつながるのです。

沖縄A普天間

「私たちの意思」で普天間撤去・辺野古新基地建設阻止を

赤嶺和伸さん(普天間米軍基地から爆音をなくす訴訟団メンバー/わんから市民の会)インタビュー

2012年10月に普天間に強行配備されたオスプレイは、沖縄・日本だけではなく、フィリピンやネパールにも派遣されている。

辺野古での闘いがつづく間も、普天間基地ゲート前の座り込みは続いている。7月8日、野嵩ゲート前(宜野湾市役所側)で、抗議の座り込みを続けている「普天間米軍基地から爆音をなくす訴訟団」「わんから市民の会」の赤嶺和伸さん(61)に、普天間での最近の動きと、24日に実施された「辺野古新基地NO!0724沖縄防衛局大包囲行動」の取り組みについて話を聞いた。(文責・編集部)

* * *

──いま、普天間での抗議行動はどうなっていますか?

赤嶺…私たち「普天間米軍基地から爆音をなくす訴訟団」は、「沖縄平和市民連絡会」の皆さんと一緒に、平日朝7〜8時の1時間、普天間基地の野嵩ゲート前で座り込みを続けています。大山ゲートでは「さらばんじゅの会」が座り込みをしています。

「座り込み」とはいっても、2013年7月に、座り込みをできなくするためのフェンスがゲート前に設置されてしまいました。もともと、普天間基地沿いの歩道は狭いので、通行の妨げにならないように歩きながら、国道330号線を通る車へのアピールや、自家用車で出退勤する米兵への抗議・監視を行っています。

ゲート前は、米軍の無法地帯です。米兵の車は、スピードを落とさない、信号を無視する、方向指示器を出さない、強引な発進などは日常茶飯事ですが、ゲート前に立っている沖縄県警の警官は、私たちの注意でやっと交通整理に動く有り様です。朝夕の時間帯は登下校する子どもたちもいるので、事故が心配です。

座り込みが終わると、希望者を募って辺野古のキャンプ・シュワブゲート前の座り込みに向かいます。「普天間での座り込みを中断して、辺野古に集中しよう」という意見も出たのですが、「ここで中断すると、普天間問題は終わったと思われる。短時間でも座り込みは続けよう」ということで、継続しています。

──オスプレイについて。

赤嶺…オスプレイは普天間を拠点に、キャンプ・ハンセン、伊江島、高江など、沖縄中を訓練で飛行しています。オスプレイ導入にあたって、日米合同委員会で合意したはずの、「午後10時〜午前6時の飛行制限」の約束などなかったかのような状況です。

訴訟団では、普天間基地周辺で「地域懇談会」を開いて、被害実態を聞き取りしています。

オスプレイで特に問題なのは、@ヘリモード時は自らの機体で発生した下降気流で、揚力を失う危険がある構造的欠陥、A低周波騒音です。琉球大学・渡嘉敷健准教授の調査で、オスプレイの低周波は、普天間に配備されているCH53ヘリと比較して最大で約30デシベル大きいことがわかっています。

20ヘルツで心理的圧迫感や不快感を感じ、40ヘルツで家具や建具(窓ガラス・戸など)が物理的な振動を起こす(がたつく)ことがわかっています。「戦争体験がフラッシュバックする」「壁から音がするように聞こえる」「天井から圧迫感がある」「子どもが寝付かない」。また、「TVが映らない」「防犯システムが誤作動を起こす」「補聴器が聞こえなくなる」「カラオケ機器が作動しなくなり、嫌になってカラオケ教室を閉めた」「騒音から避難するために転居したいが、買い手がつかず、家が売却できない」「犬や猫が家の中に逃げ込んでくる」などの被害が出ています。

オスプレイの飛行ルートにある養鶏場からも、「オスプレイが前の晩に飛ぶと、玉子の殻がブヨブヨになる」(宜野座)、「玉子を生まなくなる」(北中城)との話を聞きました。被害は普天間だけではないのです。

──普天間爆音訴訟について。

赤嶺…6月11日の判決で那覇地裁沖縄支部は、国に約7億5400万円の支払いを命じました。判決では「騒音被害は深刻かつ広範。受忍しなければならない程度とは評価できない」と明言しています。現在、第2次訴訟が進行中で、2017年に判決の予定です。

爆音訴訟の根本目的は、一日も早く普天間飛行場を全面撤去し、静かで平穏な人間らしい生活を回復させることです。米軍基地の騒音や基地被害が放置されている現状は、憲法に照らして許されるのか、ということを司法の場で日本という国に突きつけているのです。沖縄の現実は、憲法は、@日米安保、A地位協定に次ぐ「3番目の存在」でしかないのです。

──沖縄防衛局を包囲する行動を呼びかけておられます。

赤嶺…私たち「わんから市民の会」(※注@)は、沖縄県民の「辺野古新基地を断固造らせない!」「県警機動隊・海保の暴力を許さない」意思を示すために、7月24日に嘉手納町にある沖縄防衛局をヒューマンチェーンで包囲しよう、と訴えています(※注A)。同じ日に東京で行われる「安倍政権NO!0724首相官邸包囲」と連帯して行われます。

辺野古の座り込みに参加したくても、来られない人たちを辺野古につなぎたい、という思いでこの大包囲行動を企画しました。辺野古へは、那覇市内をはじめ各地から往復バスが運行されていますが、ほぼ半日を費やして体力的にも消耗するため、仕事や家事を抱える人にとっては、制約があります。当日は、初めての人や子連れの人も気軽に参加できるように、風船やシャボン玉も使って楽しめる行動にする予定です。

私たちは小規模な団体ですが、動員ではなく、「自分たちの意思で行動しよう」と思い、この企画への賛同する市民団体やグループを募集しました。沖縄では、普通の市民がこうした行動を呼びかけることへの評価が多く寄せられています。

──安保法制による「戦争できる国づくり」が推し進められようとしています。

赤嶺…安倍政権の暴走は、沖縄にいるとより切実に実感されます。私たちは、普天間のゲート前に立ち続けていますが、そこから日本という国の姿がよく見えてきます。

いま多くの人たちが「アベ政治を許さない」と立ち上がっています。私たち1人ひとりが考え、動かないといけない時期に来ています。これからも、多くの皆さんとともに、力を合わせていきたいと思います。

* * *

※@…「わんから」は、「私から」の意味。

※A当日は約300人の市民が参加して、沖縄防衛局を包囲した。歌などを交えながら、辺野古新基地建設を訴えた。井上一徳防衛局長宛てに、「戦後70年間人権を蹂躙し続けてきた日米両政府のさらなる蛮行を、誇りある沖縄県民は決して許さない」という内容の抗議要請文を提出した。

* * *

[取材を終えて]

辺野古では安倍政権が「埋め立て工事強行」の姿勢を見せている。高江でも座り込みテントを排除して、オスプレイパッド工事が再開するといわれている。国・防衛局は基地建設を進めてはいる。しかし、沖縄の闘いが安倍政権を追い詰めているのも事実だ。沖縄の闘いは、いま、安保法制や原発再稼働に反対する人々の姿と重なる。沖縄とつながって、今の「アベ政治」を倒す道を探したい。(編集部一ノ瀬)

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