2015/7/10更新
富田 英司(静岡沖縄を語る会)
6月23日の沖縄「慰霊の日」、20万人を超える戦没者を追悼する「沖縄全戦没者追悼式」が、糸満市摩文仁の平和祈念公園で行われた。
この日は朝早くから、戦後70年の節目に戦争体験を引き継ごうと、多くの家族が3世代・4世代で平和の礎を訪れていた。
この追悼式における翁長雄志県知事と安倍晋三首相の2人の言葉は、極めて対照的なものであった。また、それに対する沖縄県民の反応も対照的であった。
来賓席の安倍首相が間近に着席する中、翁長知事が「嘉手納より南の米軍基地の整理縮小がなされても、米軍専用施設が全国に占める面積はわずか0・7%しか縮小されない」と強調し、「『嫌なら沖縄が代替案を出しなさい』との考えは、到底県民には許容できるものではない」と言い放つと、会場から大きな拍手が起こり、翁長知事を多くの県民が支えているという空気に包まれた。
一方、安倍首相の来賓挨拶は、沖縄県民にはまったく心に届かぬ内容であった。強行する辺野古基地建設にはまったく触れず、「基地負担軽減に全力を尽くす」と述べただけである。これに対して、会場内の一般出席者から「おい、戦争屋は帰れ!」の怒りの声、さらに会場内外の複数場所からも「うそ言うな」「帰れ帰れ」などのヤジが飛び、会場内に怒号が行き交う異例の雰囲気となった。
安倍首相の言うことがウソとゴマカシであることを、県民は見抜いている。挨拶で「米軍キャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区が3月末に返還された」ことを例に挙げ、「負担軽減に全力を尽くす」と述べたが、県民は、この西普天間住宅で「アスベスト問題」が起こり、危険を察知した米兵家族はこの住宅から出てしまい、長年そのまま空家になっている住宅であると知っている。また、那覇港湾施設や浦添補給地区なども、もうとっくに返還が決まっているのだ。
「負担軽減に全力を尽くす」と言いながら、辺野古に超大型軍事基地を、国家権力を総動員して抗議者を強引に拘束しながら建設しようとしているわけで、なにが負担軽減につながるのか。沖縄県民が怒るのは当然である。
さらに、平和祈念公園入口前で、多くの市民団体メンバーが安倍首相の「慰霊の日」参加に抗議していたが、今までにない猛烈な警備体制が引かれた。安倍首相が入ってくる道の一般歩道にすべて柵をめぐらし、また抗議者が車道に出られないように警備車や柵を並べ、機動隊員が隊列を組み抗議者を缶詰状態にしていた。聞くところによると、なんとこの安倍首相の警備のために、東京の警視庁機動隊が動員され配置されたようだ。もう沖縄県警を信用していない、ということになる。
最後に嬉しい報告を一つ。
同日午後、魂魄の塔近くで恒例の「反戦集会」が開かれた。この集会に、4月末から悪性リンパ腫治療のため辺野古抗議行動の現場を離れていた山城博治さんが、入院後初めて皆の前で元気に療養報告をした。
「夏以降、政府が埋め立てを強行する。それまでに元気になって戻る。必ず基地建設を止めよう」と呼びかけた。
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