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2015/7/10更新

6/25神戸 関西電力株主総会

株主提案聞く耳持たず
原発再稼働すれば万事うまくいく

6月25日、各電力会社の株主総会が一斉に開催された。今年も脱原発に向けた多くの株主提案がなされたがすべて否決され、電力会社の高圧的態度が目立つ総会となった。特に関西電力は、赤字決算にもかかわらず、役員報酬減額を含めた経営合理化努力は全くみられない。電気料金を値上げし、原発を再稼働しさえすれば万事うまくいくという経営姿勢だ。神戸ワールド記念ホール(神戸ポートアイランド)で開催された同社の株主総会を取材した。 (編集部ラボルテ)

官僚答弁の繰り返し

―私は福島原発事故の後、福島に通い続けた。原発から20q圏内にある富岡町の開業医の話を聞いた。「事故の後、往診先の要介護の人たちが餓死していった。『ヘルパーさんが来ない。お腹空いた、喉乾いた…』と言ながら死んでいった」。原発事故が起きると、要介護の人間は死んでいく。避難計画に要介護者の対策がほとんど入っていないじゃないですか―。

株主からの必死の問いかけに対し、関西電力側は「お疲れのようで」と、発言を途中で遮り、官僚答弁を始めた。

「…世界最高水準の安全性を目指し、安全確保を大前提とした原子力発電を、引き続き活用して参りたいと思います」。「福井地裁の仮処分判決については、多くの事実誤認がある。一日も早く再稼動を求めたい」―八木社長や役員陣が繰り返した答弁だ。

主な株主提案としては、個人株主グループである「脱原発へ!関電株主行動の会」が、@再稼動中止、A取締役社長八木誠の解任、B取締役報酬の開示、C使用済み燃料の再処理を行わず処分すること、などを求めた。

筆頭株主である大阪市は、@全原発の廃止を求め、A脱原発派弁護士である河合弘之を社外取締役として推薦した。京都市は「原発に依存しない体制を構築すべき」と述べ、多様なエネルギー源の導入を、また神戸市は、「電気料金値上げが市民生活を逼迫させている」として、原子力以外の電源ベストミックスを求めた。

個人株主からも、「溶け落ちた燃料の状況すら分からない状態で、何をもって安全に再稼動するというのか。既に千人の甲状腺がん患者の発生も見込まれている。こうした現実のなかで、原発の新規着工・増設も視野に入れると発言されましたが、考えられない」と怒りの声が相次いだ。

グリーンピースは、「提案や質問をはぐらかさず、具体的に答えてほしい」と指摘し、原発再稼動を批判。アクセスの悪い神戸ポートアイランドを会場としたことに不信感を示す声もあった。

株主総会の参加者数は689名と、過去5年で最少。2012年の5分の1となった。発言としては再稼動中止を求める声が圧倒的であったものの、会場は関電関連会社社員が多くを占め、会社提案を追認した。

怒る株主

総会後、株主たちにインタビューした。「無配当で残念だ」「原発問題ばかりで株主総会になっていない」との声の一方で、以下のコメントも聞かれた。

「事故の際の責任所在について具体的に答えないし、札束で地元合意をとるようなやり方はおかしい。関電は大阪にあるのだから、大阪湾に原発を作ったらいい。これは沖縄・米軍基地の問題も同じ」。

「独占企業の怠慢。高校を出てから10年間、関電で働いている。あんなのをトップに据えて、役員報酬が平均1800万円あって、『今後も関電をよろしくお願いいたします』なんて言えません」。

メディアをシャットアウト/重警備で抗議活動を威圧

再稼動反対を求める運動側は当日、関電本社に対して抗議すると同時に株主に対してビラ配りや呼びかけを行った。会場周囲の抗議者=約60名に対し、警備要員は100名以上。楽器を用いる抗議者にも力ずくで止めようとするなど、例年を越えた暴力的な警備体制が敷かれた。株主総会会場周辺で抗議行動を展開した「STOP原子力☆関電包囲行動」の韓基大さんは次のように語る。

「入口付近に『高浜原発再稼働反対』の横断幕を広げ、拡声器で抗議していると、警備員らは注意事項を書いたボードを指して『黙れ』と突きつけました。

昨年は警察が対応してきたのですが、今年は関電の警備要員が、早朝から二重三重に阻止線を形成していました。警備要員の攻撃的な姿勢が顕著です。抗議行動を押さえ、株主への影響力を抑えるように準備していたと思います」また、今回の取材で印象的だったのは、報道規制である。総会前に取材を申し入れたが、「会場内への立ち入りは株主のみ。メディア関係者は、大阪市中央区内の会場モニター中継でご覧ください」と断られてしまった。大手報道機関を含め、同じ対応で了解しているという。

総会当日、現場で社員に「事故で明らかになったように、原発は全ての人々が利害関係者だ。公共の利害について現場取材できない理由は何か?」と聞いても、「規則だ」と一蹴。規則とは何か?と聞いても同じ回答で、1時間ほど押し問答を繰り返した。

相手は忠実に「仕事」をしているのだろう。「与えられた役割を演じているだけ」かもしれない。しかし、原発問題に限らず、「規則だから、社会のルールだから、そうなっているから…」と隷従する危うさを感じた。

一方で、関電社員でありながらも、株主として役員陣に問いかけた人もいる。言葉を詰まらせ、手を震わせ、恐怖と闘いながら問いかけていた。自分の生活を囲われ、時間も人間関係も割いている組織の中で、「自分を押し殺さず、向き合おうとする人」に心からの連帯を表明したい。

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