2015/6/7更新
「川内の家」 岩下 雅裕さんインタビュー
九州電力の社会的責任を問い、九州各地の住民ネットワークを強化する目的で、311q九州縦断リレーデモが取り組まれた。隊長の岩下さんに意義や成果を聞いた。(文責・編集部)
編…リレーデモの目的は?
岩下…電力会社の社会的責任を問うことです。安全性や避難をめぐる議論は、計画や対策が「十分か不十分か」という相対論になりがちです。「検討します」で済ませる訳にはいきません。
九州電力が主催する住民説明会は全く行なわれていません。再稼働推進のための宣伝・推進派の組織固めを「説明」と強弁する九電は、説明責任を放棄しています。
九州には、水俣公害事件の経験があります。患者さんたちは、チッソ門前での千日を越える座り込みなど、加害企業の社会的責任を問い続けて水銀による健康被害を認めさせ、解決に向かいました。
放射能汚染も桁が違うとはいえ、同じ公害です。加害者となりうる九州電力は、説明責任を果たしているのか? 賠償の用意はできているのか?を問いたかったのです。
編…リレーデモの成果は?
岩下…リレーデモには、計278名が参加し、住民相互のつながりが作られたことが、最大の成果です。
避難計画のずさんさも明らかになりました。八代市では、防災計画について対市交渉を行いました。川内原発から85q地点にある同市は、風向きによれば放射能に汚染される場所で、避難者を受け入れる地域ともなります。市は、「防災基本計画」だけは作っていますが、その説明会も防災訓練も行っていません。「要援護者リスト」も不完全です。「防災計画」は、画に描いた餅にすぎないのです。
交渉には、八代市議と鹿児島県議も参加して、6月議会で防災態勢についてしっかり議論し、機能する計画にするべく活動していくことを市当局と合意しました。
編…薩摩川内市住民は、再稼働に同意しているのですか?
岩下…世論調査では常に反対派が多数です。だから、意見を行動に具現化するために最初にやったのが、商店街でのビラまきです。毎週続けていますが、このビラを持って市街地を離れ、原発周辺までの郊外を全戸訪問することにしました。2カ月歩いて、さまざまな声を聞きました。
例えば、事故が起これば幹線道路は渋滞になりますが、裏道は狭くて、対面通行ができないのです。老人会でも話題になっていると聞いたので、現場の写真を撮り、ビラにして市役所で配布すると、喜んでくれました。こうして住民との対話が広がりました。これが第1ステップです。
次は、不安の声を可視化させることでした。いちき串木野市では昨年、「避難計画がない中での再稼動に反対する」との署名活動で、市人口の過半数を集めました。
昨年10月には、再稼働への賛否を問う模擬住民投票運動を展開しました。薩摩川内市内の各戸を回って私製はがきを配り、52円切手を貼ってもらい、再稼働への賛否を書いて郵送してもらうものです。
準備過程では、8月に再稼動反対の陳情を出した山之口自治会に続き、4つの自治会が賛否アンケートを実施しました。これらは、自治会を末端とする市の政治秩序を崩すもので、推進派は危機感を持ったと思います。
しかし、知事と薩摩川内市に限定した地元同意プロセスが、あっという間に進んでしまいます。後に伊藤知事が語っていたように、「争点にさせない」ために急いだのです。
12月には、福島から避難住民を招き、学習講演会を市内各地で行いました。「まだやれることはある」というメッセージを伝えるためです。
他方、3・11実行委は12月、「地元同意」後の方針を議論し、@焦点は九州電力、A九電を追及し、「再稼働のボタンを押させない」という方針を決めました。
今回のリレーデモは、その一環です。九州西側4県をつないで、運動と地域の連携を強化するのが目的でした。またゴールを九電本店にし、交渉にデモ隊が合流したことは、「主敵は九電」という考え方に沿ったものです。
編…Xデーに向けた計画は?
岩下…再稼働が7月下旬から8月に延びそうです。九電の申請書類は、規制委員会も呆れるほど杜撰なものなので、その間に準備を進めます。
基本的には、再稼働への「非協力」を行動として貫くことです。大飯原発(福井県)再稼働阻止闘争では、非暴力行動として33時間も道路を封鎖し、「ボタン」を押しにくる閣僚の入所阻止を試みました。普天間基地でも同様な行動がありました。
川内原発でも、「非協力」を貫くことが具体的戦術となるでしょう。川内原発再稼働は、全国の原発再稼働をめぐる攻防の最初の決戦となります。再稼働に反対する全国の人々との対話を通じ、阻止に向けた戦術と体制を作り上げていきます。
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