2015/6/7更新
5月16〜27日に行われた九州縦断311qリレーデモに同行、ゴールである27日の対九州電力交渉を取材した。口永良部島で火山爆発が起こり、あらためて火山災害による原発事故の恐怖が実感を持って語られ始めている。
世論調査では、鹿児島県民の6割が再稼働に反対しているが、伊藤知事と地元薩摩川内市が同意したとして、8月にも再稼働ボタンが押されようとしている。今回のリレーデモと対九電本社交渉は、九州電力に住民の反対世論と不安を伝え、再稼働を思いとどまらせるための一連の行動として取り組まれた。
311qリレーデモには、約280名が参加。参加者は、各地の原発反対住民グループとの交流で結束を強めながら、27日午後2時、ゴールである九州電力本社前に到着した。
同日3時から始まった対九州電力交渉では、交渉途中にもかかわらず、九電側が「予定時刻を過ぎた」として一方的に交渉を打ち切り、「続けるべきだ」とする反対派ともみ合いとなった。午後8時、もみ合いが続くなか警察が導入され、退去となった。九州電力の交渉態度は「再稼働ありき」で、九電の見解を一方的に伝えるというもの。批判的な地震・火山専門家の見解を真剣に検討した形跡はなく、住民の不安を解消しようという熱意や誠意はみられなかった。
交渉は日を改めて引き続き行われる模様だが、九電の高圧的な交渉態度が変わらない限り、不安は増幅するばかりだ。川内原発再稼働は、激しい攻防が続きそうだ。(編集部・山田)
対九州電力本社交渉を前にした本社玄関前集会で、向原祥隆事務局長は、集まった約200人を前に「九電は一度も住民の前に出てきていない。公開説明会を開くべきだ」と訴えた。鹿児島県内では、出石市、伊佐市、肝付町、屋久島町の4議会が、住民説明会を要求する陳情書を採択しているが、九電は無視し続けている。
「ストップ再稼働! 3・11鹿児島集会実行委」(以下、「3・11実」と略)は4月、九電・瓜生社長宛に「川内再稼働に当たって説明責任を果たせ」と題する公開質問状を提出した。内容は、@地震問題、A火山問題、B過酷事故対策、C使用済み燃料、D避難計画、E九電の説明責任、についての6分野、42項目。特に30q圏内の自治体と住民への住民説明会を強く求めている。
この日の交渉参加希望者は、200余名。会場の制約で100名に限定され、入場できなかった参加者らは、入口付近で抗議活動を続けた。
九電側は、エネルギー広報グループ長・大河内氏を筆頭にして、発電グループ・原子力コミュニケーショングループ・立地本部などの各担当者が出席、九電側の見解を説明した。
本店内での交渉は、30q圏内自治体住民への公開説明会を求める11万2846筆の署名提出から始まった。九電側担当者が並ぶ机に署名簿が積み上げられ、目録が大河内氏に手渡された(写真)。
九電側司会者は、交渉時間=2時間、参加者の入れ替わり禁止などの制限を課したが、反対派住民の激しい批判にさらされ撤回。公開質問状への回答を一項目ずつ説明するという手順で進んだ。
地震問題では、石橋克彦氏(神戸大名誉教授・原子力安全員会委員)が指摘した「プレート間地震」「海洋プレート内地震」について、九電はなんら検討していないことが明らかになった。石橋氏は、「法令違反の疑いもある」とも批判しており、九電が巨大地震の可能性について、真剣に検討していないことが明らかになったといえる。
火山問題では、「予知は可能か?」が争点の一つとなった。九電は、フランスの火山学者=ティモシー・ドゥルイット氏の論文を根拠に「予知は可能」としている。この日も九電担当者は、「100`3mのマグマが動くので感知できる」と説明していた。
しかし、日本火山学会は「現在の知見では予知は困難」としており、爆発的噴火をおこした口永良部島についても気象庁は、「(爆発的噴火の)前兆はなかった」としている。昨年の御嶽山噴火でも、全く予兆がなく、九電の楽観的主張は、火山学会からも事実によっても否定されているのだ。
川内原発は、火砕流到達距離とされている160`圏内に14の火山があり、口永良部島もその一つ。原発に最も近い姶良カルデラからは、過去3度にわたり薩摩川内市に火砕流が到達していたことが、地質調査からわかっている。
日本列島全体が地震活動期に入っているなか、川内原発北側1qの川内川河口推定断層が活断層であると指摘する地震学者も複数いる。これらを併せて考えると、原発再稼働は、危険な賭であることは明白だ。
反対派からの質問は、原発周辺の活断層や基準地震動など詳細に及び、4時間を過ぎても、質問全体の3分の1しか消化できなかった。九電側担当者は、再三交渉を打ち切り、席を立って出口に向かったため、住民が抗議・阻止し、再度席につかせて交渉を続けるもみ合いが繰り返された。
午後7時すぎ、広報担当者が「予定の時間を2時間以上過ぎている」として議論を打ち切り、110番通報したため、警察官約20人が導入され、逮捕もちらつかせたため、反対派住民は日を改めての交渉の継続を条件に退去を決めた。
「東日本大震災は、西日本で2千年に1度起こる超巨大地震の前触れである可能性が高い」―こう指摘するのは、地震予知研究センター長・長尾年恭氏だ。同氏は、「首都圏直下型地震や、富士山の噴火も警戒すべきだ。これらが起こる確率は100%。必ず起こる」とも指摘している。
日本の全原発が止まって20カ月を超えた。この間停電は、1度も起こっていない。電力は足りているのである。日本列島が地震活動期に入っている今、安全な原発など1基もないし、原発を動かさねばならない理由は、何処にもない。
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