2015/5/31更新
浪花の歌う巨人 趙 博
2015年5月17日は、後世の歴史に「平成の民主主義記念日」として記述されるべきだ、と言いたい。同日、「戦後70年・止めよう辺野古新基地!沖縄県民大会」に3万5千人が結集した。これは会場となった野球場の収容者数の上限であって、実際には5万人を遥かに越えたという。沖縄県の人口が142万3千人だから、大阪府(886万3千人)に換算すれば、31万人が集まったことになる。そして同日、我が大阪では「大阪市を5つの特別区に再編する」ための住民投票が行われ、大阪維新の会が推進した同案は「反対多数」で否決、橋下徹は直後の記者会見で「政治家廃業=政界引退」を表明した。
しかし、「多数」といっても1万票の僅差である。この期に及んでも、約70万人が「大阪都構想」と橋下への支持を表明したのだ。大阪市の分割と消滅は阻止したが、沖縄と比べればあまりにもお粗末と言っても過言ではない。とは言え、我々反対派(と雖も、筆者には投票権がなかったぞ!)にとっては、久々に味わう「ほろ苦い勝利」だった。
橋下が引退を表明しても、筆者の怒りは収まるどころか、その憤怒の炎はますます燃えさかっている。庶民の力で、労働者階級の総力で、被差別民衆の怒りで…、闘争の主体をどう規定するかは別にして、要するに我々の手で「チンピラファシスト・橋下徹」を打倒できなかったからだ。しかも、件の記者会見で「デマゴーグ・橋下徹」は、いけしゃあしゃあと、こう述べたのである。
橋下…だってそれはもう、政治ですから。負けは負け。ここは公務員と違うところです。きのうの街頭演説では戦を仕掛けたわけですから。「叩き潰す」と言って叩き潰された。民主主義、大変素晴らしいですよ。メディアも含めて徹底議論した。負けたのに命を取られない政治体制は、日本はすばらしい。僕はこのまま生きて別の人生を歩めるわけですから。絶対に民主主義は是が非でも守らなくてはいけない。そのためには報道ですよ。報道の自由は絶対に守らないといけない。僕もメディアにはやいのやいの言ってるけど、報道の自由が民主主義を支える根幹ですから。メディアの皆さんにも頑張ってもらいたいし、素晴らしい政治体制だと思いますね。
Q…そうはいっても過去に発言を覆したことはある。100%ないですか?
橋下…また2万%って言わせたいんですか?(注)あのときはご存知の通り、僕が番組収録を抱えていて、番組の予定が組まれていたので、どうしても「出ない」と言わないと放送できなかったのでああいう言い方をした。今はそういう制約はないので、嘘をつく必要もない。政治家は僕の人生から終了です。
そもそも「住民投票」とは、直接民主主義の手段として住民側が提起するものであって、政治家が、しかも議会で一度否決された事案について、その賛否を「投票」で問う制度ではないのだ。「ディクテイター・橋下徹」が民主主義云々を口にするのは、悪魔が改心を述べるに等しい。この男メ、自ら「嘘をついた」と言明し「命をとられない」とタカを括るのであれば、その嘘つきを我々の手で殲滅してやろうではないか!
我々には「橋下徹的なるもの」を除去するという、大きな課題が残されたのだ。今回の「勝利」にかこつけて、過去の悪行を棚上げて自民党と公明党がしゃしゃり出てくることは火を見るより明らかである。「オール沖縄」の闘いに大阪が学ぶ気があるのなら、共産党とその他左翼勢力、市民運動、宗教・学術・文化…等々を網羅した「大同団結と統一戦線」が組まれるべきだ。「あらたな戦前」を迎えないために、5月17日を、いま記憶せよ。
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注…橋下は2008年「大阪府知事選」への立候補を「2万%ない」と否定し、その後翻した。
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