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2015/5/8更新

大阪都構想特別区設置

本当の目的は、大阪市の財産と権限を巻き上げ、
一人の「司令官」=府知事によって、カジノ誘致など都市再開発を進めること

「橋下現象研究会」から

大阪都構想は、大阪府と市の「二重行政」をなくし、無駄をなくして医療・福祉・教育の充実と大阪を発展させる、と言われている。でも、大阪市を5つの「特別区」に解体する『大阪都構想』の本当の目的はわからない。本当の狙いは、隠されているのでは…。

そう感じるのは、

@法定協議会資料でも、実際の効果額は1億円。5つの特別区体制を作るためには680億円が必要で、今後5年間で1071億円の予算不足。2033年で、累積赤字は226億円が予想されている。

A大阪市の現在の税収は、6270億円。政令指定都市・大阪市を解体すると、5つの「特別区」の税収は、個人市民税、軽自動車税、タバコ税等で1642億円(26%)となり、法人市民税、固定資産税、事業所税など4627億円(74%)を大阪府に取り上げられる!

B5つに分割された特別区は、ほとんどが初めから赤字自治体。「医療・福祉・教育を充実させる」と橋下・維新の会は言うが、赤字自治体がやれることは福祉・教育などの予算の削減しかない。例えば、国民健康保険料金が年間2万3千円近く値上げされたり、介護保険料の減免制度を廃止されたりする可能性が大きいのである。

C地方交付税や事務処理特例交付金の配分が大阪府に握られるので、予算配分を巡って年中、府庁と5つの特別区との間でいさかいが絶えないことになる。入ってくる予算が毎年変わり、財政が不安定では、安定した行政運営ができなくなる。

D特別区の区長と区会議員を選挙で選ぶので、住民に近くなる、と橋下・維新の会は主張するが、都市計画の権限や消防を指揮する権限など街づくりと市民生活の防災・安全など大切な権限がなく、予算も貧しく、「町村」以下の基礎自治体になってしまう。住民の自治の力を伸ばして、安心・安全で住みよい街を作るのではなく、少ない予算で住民相互の利害対立が起きる。特別区は公共サービス削減のための「役所」になってしまうのである。

E5つの特別区では処理できない事業を「一部事務組合」をつくって解決する、という。多くの事務組合を特別区を横断して外に作ることになるので、2重行政の解消どころか3重、4重行政で、住民の生活に直結する多くの事業が特別区の外に作られ、住民の監視や意見、苦情が届かないことになる。

都構想の本当の狙いは、赤字の大阪府に大阪市の財産と権限を巻き上げ、一人の「司令官」・府知事によって、土地転がしやカジノの誘致など都市再開発をすすめることである。

橋下・維新の会が語る「大阪を東京や上海のような国際都市にする」という時代遅れの空夢で利益を得るのは、ゼネコンと金融資本、一部の金持ちや権力に群がる成り上がり分子たちなのである。

住民投票をいかに闘うか

橋下・維新の会は、4〜5億円を投入して大阪市民への洗脳工作=宣伝戦を展開している。対する自民、民主、共産党などの活動資金は、雀の涙程度しかない。

しかし、冷静に事態を考えてみよう。7億円をかけた出直し市長選挙で、維新の会は統一地方選挙準備の地盤固めを果たした。そして、府議会、市議会で一旦否決された「都構想」を何億円もの税金を使って住民投票で決めるという。その上、この住民投票のための活動に維新の会は政党資金を4〜5億円注ぎ込むという。政党資金の多くも、税金から交付されたものである。「税のムダを省く」という彼らの主張が、どんなにおかしいかを率直に感じる市民の感性が問われている。

だから、この闘いは、第1に、金力と権力の装置として機能するマスメディアに対して、金力も権力も持たない市民が、大阪の未来を自らの手に握り返すための闘いだ。

第2に、「二重行政の無駄をなくす」という彼らの主張の本当の目的と狙いが何かを、市民が自らの頭と心で考え、未来の大阪の市民生活、あるべき大阪の街のあり方を考え、広く議論を始めることに大きな意味がある。

第3に、以上から、原発や軍需産業とつながる大企業中心の首都圏の政治・経済・文化のあり方とは異なる中小企業・平和産業が中心の大阪・関西の明日を明らかにし、その先に日本の未来のあり方を市民が考えていく出発点を作ることである。

金に糸目をつけず大阪市を解体するために突き進んでいる彼らの熱情は、一体何か?戦争は、敵の殲滅であり、創造ではない。近代の戦争=総力戦は、軍事力、生産力、市民の生命と生活(住宅、街路等)を破壊しつくすことによって、敵の戦意を壊滅させることである。橋下・維新の会の財力を大動員した政治は、まさに、こうした軍事的な殲滅の思想ではないか。

私たち、金も権力もない市民の闘い方は、職場・学校のつながり、地域・近所の付き合いという「日常の生活場面」に対して、自覚的な一人ひとりの市民が創意・工夫をこらした多様な活動・行動によって、これまで眠り込まされてきた住民の権利意識や批判精神を呼び覚まし、住民の明日を考える力を呼び覚ますことである。これが、地域、職場などでの市民の闘いの基本的方向・方法だ。

住民投票公示以降、マスコミを大動員したキャンペーンがなされている。共同・協同による「機動戦」と「地をはう活動」との双方を結び付ける、連帯した闘いを練り上げることが求められている。

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