2015/4/29更新
再稼働阻止全国ネット 天野 惠一
福島原発事故の原因について、まったく調査できないまま(内部がどうなっているか、落ちた核燃料がどうなっているのかすら、まったくわからない状態で)、「新規制基準」なるものをつくりだした原子力規制委員会。その「規制委」のゴーサインで、川内原発(1・2号機)再稼働への動きは着々と進められている。今は1号機の工事計画が認可され、3月30日には1号機の使用前検査が着手された(保安規定も提出目前)。
こうした状況下で、私たちは昨年12月と今年の2月に、原子力規制委員会のスタッフを呼び出し、議員会館内、公開交渉(ヒアリング)を開催して、どれだけ「規制」の内実が、住民の安全(命)を無視したものでしかないかを、より具体的に明らかにする作業を積み上げてきた。
特に2月の時は、九州電力が提出し、「規制委」が公開している「工事計画資料」なるものは、黒枠白抜きマスキングだらけで、事実上解読不可能なデータにすぎない事実を具体的に示し、問い詰めた。
さらに、工事が認可されるはるか以前から先行工事が大々的になされているという、何のための工事「認可(チェック)」制度であるのか、まったく理解できないような実態についても、問いただした。
「規制委」スタッフの対応は、典型的な官僚答弁で、問題にされている中心の問い(批判)に対応せず、自分たちが答えやすい周辺の関連問題に対応をズラし、お役所の抽象言語を散りばめて、紋切り型に、わかったような答えを示す、という腹立たしいばかりの応対であった。
それでも私たちは、問い続け、批判の言葉をぶつけ続けた。スタッフ側の、そのインチキ答弁の姿勢自体が、@科学技術的知見に基づくこと、A原発利権から第三者であること、B透明性の確保という原則に反し、住民の生活と安全のための「規制委」、というタテマエも裏腹の機関であることを物語っている。まったく、電力会社(資本)と安倍自民党政権にコントロールされた、再稼働を(あの福島大惨事の後に)正当化してみせるための機関である事実を、あからさまに示しているのである。
マスコミ報道などを通して、再稼働審査が、すでに終了しているかのごときムードが、つくりだされているが、終了などしておらず、この工事計画審査プロセスこそが、「審査」の本番でなければならないのに、そうなっていないことが大問題である、という事実に、私たちもこの「交渉」を通して気付かされた。
そして、この操作と隠蔽の手口のあくどさという点では、原子力規制委員会は、かつての福島事故後悪名をとどろかせた「原子力安全・保安委」とまったく変わらない、原子力利権に群がる〈ムラ〉の組織に過ぎない。いやそれより悪化している(自称専門家)集団である、という思いを私たちは強めた。
だとすれば、「審査」プロセスへのマスコミや人々の関心を引き出し、規制委=「再稼働推進委」の実態を明らかにし続ける活動を、私たちは、さらに持続しなければと考え、4月21日に、あらためての対規制委院内ヒアリングを準備しだした。
そこに、4月14日の「高浜原発3・4号機の運転差し止めを命じる仮処分決定」(福井地裁)が飛び込んできた。それは「新規制基準は合理性を欠く」と、ストレートに原子力規制委員会がまったく「規制」などしていない事実を明言した。私たちが具体的に批判してきた事実に即した司法判断であった。
この「決定」に勇気づけられながら、私たちは4月21日の院内ヒアリングに向かった(出てきた規制委スタッフは8人)。
まず、データの隠蔽(重要な数字の白抜きマスキング)については、より詳細に、その大量のマスキング部分を示しながら、一つ一つ問い詰めた。この点については、ノラリクラリと問題点をかわし、営利企業の秘密の防衛のために必要で問題なし(自分たちにはデータがわかっているのだから)、という対応に変化はなかった。公開の原則の「例外」というが、これでは「例外」が原則になっているではないか、という私たちの批判に答え、少しでもデータを明らかにしよう、という姿勢は示されなかった。
ただ、このやりとりを通して、マスキングは電力会社の要請によるものだが、「規制委」側は、それを無条件に認め、OKしている実態が、前回よりスッキリと私たちに明白に認知された。会場では、参加者から「電力会社のイヌで恥ずかしくないのか」という怒りの声が飛んだ。
「基準地震動」のつくりかた自体への批判(基準自体がデータの操作の産物)。さらに、新基準にあわせたハードの部分の工事がまともに行われていないのでは、という批判。この批判は「福井地裁」の「決定」をも踏まえ、執拗になされたが、アアイエバコウイウ的対応以外はなされなかった。さらに、検証していたが対応できないことは明らかなので、それ自体を隠していた「テロ対策」についての質問も、はぐらかしただけ。
福井地裁の「決定」に対し田中俊一規制委委員長は、その決定は、「規制委」は当事者ではないからと、いい加減にかわしながら、「事実誤認がいっぱい」と、その「決定」の影響を抑えるためのデマゴギッシュな政治的発言を、記者会見でしていた。
田中発言の方が「事実」を捻じ曲げていることは言うまでもないが、「再稼働推進委員会」の委員長の言葉としては、当然のものなのだろう。規制委の個々のスタッフにも、その委員長の精神はよく共有されていると、この交渉を通して、私たちは強く実感した。
それでも、いやそれだからこそ、私たちは、さらに公開交渉(ヒアリング)を持ち続けようと決意している。
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