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2015/3/9更新

SHINGO★西成インタビュー

西成で仲間を思いラッパーとして一歩一歩
ブレずにアセラズ・クサラズ・アキラメズ

聞き手:松岡 千紘(アートにっこりセンター)、ラボルテ 雅樹(編集部)

率直な志を歌で表現し、幅広い年齢層から支持されているSHINGO★西成。編集部ではこれまでに西成特区構想を巡って、当事者や研究者、活動家に取材を行ってきた。釜ヶ崎三角公園での炊き出しを中心に、様々なボランティア活動を地道に取り組みながら、ラッパーとして活躍する彼に、「彼自身のライフヒストリー」と西成特区構想を念頭にインタビューを行った。(編集部ラボルテ)

──どうしてラップを始めたのでしょうか。

SHINGO…言いたいこと、伝えたいことがいっぱいあったからじゃないですか。音楽も楽しいことも好きやし。口語だと嫌な思いをすることも、音楽で伝えれば、鋭く聞こえたり優しく聴こえたり、ナイフにもなればブランケットのように包みこむような言葉にもなる。それを俺次第で変えれるんやったら、と始めました。

──SHINGOさんはどのような幼少期を過ごしましたか。

SHINGO…何か足りなかったですね。いつも。みんなが言う平凡とか普通じゃなかった。ずっと探していて、今もそうかもしれない。平凡とか普通とか、そういうことが未だに分からないです。長屋育ちで、家賃4100円のとこに住んでました。天井めくれてきてね。ドリフのコントみたいになってました。

家庭環境でいえば、おかんはわがままを素直に表現してくれる人です。不器用やから言葉にできない分、態度に出たり。今やったら虐待じゃないですか。ボコボコどつかれたし。根本には俺に強くなってほしかったみたいです。「自分が弱い分、この家庭環境な分。強くなってほしい」って。

おとんもいてましたけど、行き違いがあって別れました。そんな幼少期でしたね。幼稚園に一言書くっていう卒業文集とかありますやん?「今に見とけよ」って書いてました。5歳6歳で(笑)。

──「今に見とけ」がいま現実になってすごいですね。

SHINGO…そのハングリー精神だけでやってます。それと「向こう三軒両隣」っていいますやん?

俺は長屋育ちで「困ったら醤油の貸し借り」の人間関係・付き合いでしたから。俺にとっての正義の味方はゴレンジャーとかウルトラマンじゃなくて、隣の家の婆ちゃんやったんです。

でも、俺も生きてきた過程の中で身近な人間に対して、自我の押し付けがあったかもしれない。わがままと自分勝手は違いますやん。わがままはかわいい。家族や仲間が俺にわがまま言うてくれる。自分勝手はだめでしょう。近頃は勝手な奴が多い世の中になってるし。街のため・人のためで世の中に訴えかけてます。

──学校を卒業してから就職してるじゃないですか。どうして福祉関係のサラリーマンに?

SHINGO…親の夢でしたからね。「公務員になれ」って子どもの頃から言われ続けて。公務員は無理やから、福祉系職員の試験受けてそこで働いてました。まあ、3日で折れちゃうなって思ってましたね。仕事もこの服装で行ってましたもん。職場で着替えてネクタイ締めて。31歳になる前までの6年間働きましたけど、いろいろと勉強さしてもらいました。上司に「おまえの親、可哀想やわ」って理不尽なこと言われて喧嘩したり。その後は休暇取って海外行ったり。ええ休暇できたなあって思いました。

ポジティブに生きてスカイダイブ、ネガティブに生きてツカウナイフです。俺らはポジティブに生きてるから、スカイダイブも炊き出しもできる。ネガティブに生きてたら、炊き出しなんてできないです。最近よく思うんやけど、俺や千紘さん、ラボルテさんが活動してても、世の中すぐによくならないですよ。仲間のこと思ってやってれば、マシになると思うんですよ。それが一歩一歩、皮肉も含めて「マシになる」。それもヒップホップっていうか、一つのスタイルですね。この街にはまず助け合いの気持ちが必要やとおもいます。

──自分の立ち位置からじゃないとできないですもんね。

SHINGO…同じ人間の協力・助け合い。例えば、ヘイトスピーチなんて明らかダメでしょう?あれは表現じゃない。肌の色や韓国、朝鮮の人に帰れって言うのは「狭!」って思いますね。

俺は炊き出しで「おっちゃんは生活保護もらってるからあかん。帰れ」とか言わない。来てくれた人を受け入れるっていうスタイルでやってます。ただ、生活保護で言えば、12万6千円もらえる言うて、ぶっ倒れるまで飲んだりする人はダメです。それは税金やから、市民が怒るのは仕方ない。お互い同じこの国で、この瞬間をもって一緒に生きてる。排除より「理解できなくても受け入れること」が大事やなと。

中には炊き出しやってる人間の気持ちを踏みにじる人間も居ます。炊き出しもらって、その好意を踏みにじる言動。そこは理解できないです。「理解する」と「受け入れる」は違うんです。感謝を忘れたらダメですよ。炊き出しを「勝手にやってる」「わし食ったろう」みたいなやつにお礼なんか言ってほしくないし、お礼を言われるためにやってるわけじゃない。お腹いっぱいになって、少しでも寂しい想いをしないでほしいな、という気持ちでやってます。

守るべきところは守り可能性・希望のある街へ

──西成ではどういうスタンスでライブをしているのですか。

SHINGO…西成やからって汚い格好でライブしないです。お金は取らんけど、格好はばっちり決めてライブやるっす。俺の気持ちが伝わって「西成来たろう」とか「ちょっと時間あるから炊き出し参加しよう」とかがいいなと思う。だから、後輩に「手伝ってくれ」とか言わない。

それに俺は西成の一匹の野良犬です。俺に才能はないんですよ。音楽の才能はないし、仕事もできないし、手先の器用さもない。西成・この街で、40ファッキン2年間過ごしてきて、唯一才能あるのは人を見て、その人の癖とか分かるぐらい。癖を見て気の合う仲間と一緒に組んでやってますね。

──西成特区構想についてはどう考えていますか。

SHINGO…社会の変化を楽しめたら人生楽しめると思います。よく外から「橋下さんあかん」とか「橋下さんええ」とか言われるけど、西成に対してどの立場から言うてるのかって思う。実際、みんな酷いことしてますやんか。家の前にホームレスのおっちゃんが寝てたら嫌じゃないですか。人民新聞は西成のあいりん地区で未来は見えますか?変わらない方が未来は見えると思いますか?

──変わると言っても、変わり方があると思います。「どういう未来がいいのか?」は僕には言えないです。不器用ながらも生きてきた人たちが、官庁街やデパートができて変わってしまう西成でどう生きていくのだろうか、と思います。僕は言える立場じゃないですけど。

SHINGO…俺は現状で、今のままでええんか、っていう話です。40ファッキン2年間こんな所に住んでて、変えるべきことがあるっていうのも分かる。変化に対応できない奴は死んでいけじゃなくて、その人たちの受け皿は作った状態でやっていく。人間助け合いの部分とかいい部分は守る。そのために、俺や俺以外のボランティアの人たちがどれだけ来ているか。もし、ボランティアの人の多くが「いまの変化はよくない」って言うならよくないなって思う。

けど、悪口言うだけの人はほとんど西成に愛がない証拠。自分に都合よかったらエエやんノリな人ばかり。たとえば西成に住んでないとか。西成に爺ちゃんの代から住んでるオレの家族からしたら、全然説得力ない。守るべきところは守ります。まあ、西成に目を向けてくれてるだけでもありがたいと思っているので、僕は可能性・希望のある街にしたいと思ってます。

──これから変化していくかもしれない西成で、どういうSHINGO★西成でいきたいですか。

SHINGO…アセラズクサラズアキラメズ。ブレないで。今すべきことを変わらずやっていきます。

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