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2015/3/9更新

湯川さん・後藤さん誘拐・殺害事件

日本人2人見殺しの対米隷従安倍政権(下)
企業メディアは自公マフィアの共犯

ジャーナリスト/同志社大学大学院社会学研究科博士課程教授(京都地裁で地位確認係争中)
浅野健一

政府は2月10日、IS事件を検証する委員会の初会合を開いたが、政府内でフェアな検証をするはずがない。

「国民の命と幸せな暮らしは断固として守り抜く」という安倍首相は、2人を助けなかった。その自公政権が、事件を悪用して、「自衛隊による在外邦人救出」の法整備の必要性を強調し、自衛隊の海外派兵を随時可能とする自衛隊派遣恒久法を狙っている。2月20日の京都新聞によると、国連安全保障理事会の決議に基づかず武力行使する有志連合の支援も可能とするほか、武器・弾薬の輸送、戦闘機への給油・整備も可能にするという。「戦後以来の大改革」として、集団的自衛権の行使容認などを踏まえ、安全保障法制も強行する構えだ。

安倍首相は、国会の質疑で、特定秘密保護法を理由にして、特定秘密になる情報は出せないと繰り返している。

非軍事目的の他国軍支援を明記した政府開発援助(ODA)の「開発協力大綱」も決めた。憲法改悪も「来年夏の参院選後」に発議するとして、「国民的な議論を深めていこう」と表明した。まさに火事場泥棒。品性、品格もない破廉恥内閣だ。

日本人全体がテロの標的になったのに、ISを刺激する発言を繰り返している。思考停止の米国隷従こそ危険だということを、考えもしない。

外務省は2月7日、シリアへの渡航を計画していた新潟市在住のフリーカメラマン杉本祐一さんに対し、旅券法の生命保護規定に基づいて旅券の返納を命じ、渡航を阻止した。返納しなければ逮捕する、と外務官僚は脅したという。先進国ではあり得ない暴挙だ。

首相が8月に予定している「70年新談話」の有識者懇談会の16人のメンバーが、19日に決定した。北岡伸一国際大学学長、中西輝政京大教授、白石隆政策研究大学院大学学長、岡本行夫外交評論家、宮家邦彦立命館大学客員教授(元外交官)ら、米国寄りの御用学者ばかりだ。

マスコミ界から、飯塚恵子読売新聞アメリカ総局長、山田孝雄毎日新聞特別編集委員が選ばれた。読売と毎日の不買運動を起こそう。

共同通信の世論調査によると、事件に対する安倍政権の対応に関しては、「評価する」「ある程度評価する」を合わせると60・8%に達し、内閣支持率は54・2%で、前回に比べ1・4ポイント増。首相が中東歴訪中の1月17日に表明した「イスラム国」周辺各国への2億ドル支援に関しては、「そのまま実行する」が53・8%、「縮小」は18・0%、「中止」は14・6%、「拡大」は4・7%だった。

日本国民はイスラム急進派の標的になることをすすんで受け入れる、ということになる。記者クラブメディアが流した、安倍政権の対応を批判することはテロリストに利するというデマを信じた。メディアがジャーナリズムの責務を放棄したため、日本の人民は誤った判断をしている。

1月20日以降、安倍自公政権と記者クラブの間に、安倍首相の対応を批判しないという申し合わせ(事実上の報道協定)があった、と私は思う。

テレビに頻繁に出演した高橋和夫放送大学教授ら自称中東専門家は、日本は空爆に参加せず、難民救済などの非軍事の人道支援に徹している、と解説した。国枝昌樹・元シリア大使、宮家氏ら元外交官が、冷酷で無能な首相の批判を自粛する大政翼賛報道を展開した。元裁判官の八尋英輝弁護士が、「この事件で、国会での政府批判の質問はやめるべきだ」(2月4日・TBS」)と言ったのには呆れた。

TBS「報道特集」、テレビ朝日「報道ステーション」は、政権批判を行った。

NHKの岩田明子解説委員らは、安倍首相の言い分をそのまま伝えているだけだ。NHKは、「イスラム国」という用語は国家と誤解されるので、使わないと決めたが、アナウンサーは「過激派組織IS、イスラミック・ステート」と表現している。英語ならいいのかと笑ってしまう。

後藤さんの母親は、日本国憲法を引いて「日本は戦争しない国だ」と主張し、原子力による環境破壊の問題にも触れている。母親は後藤さんの「殺害」声明後に、息子が窮状にあるイラクやソマリアやシリアの人々、とりわけ普通の人々に光を当て、子どもたちの視点でリポートしてきたことを誇りに思う、と述べた。

安倍首相は、日本国憲法など米軍占領下で押し付けられたすべての仕組みを見直す、と表明した。戦後70年の今、首相は戦前へ回帰し、国際社会へ挑戦しようとしている。米国の歴史観、世界観、価値観とも全面衝突するだろう。

メディアは、安倍自公政権の軍事国家化へ警鐘を鳴らす時だ。「対テロ」を口実にした安倍政権の集団的自衛権行使策動を、許してはならない。安倍政権を打倒し、非武装・非戦・非核の日本を目指そう。

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