2015/3/9更新
静岡沖縄を語る会 富田 英司
安倍政権は沖縄・辺野古新基地建設のごり押しを続けている。キャンプ・シュワブゲート前や海上では、警察・海上保安庁から公然と暴力を受けながらも、「基地反対!」の意思を毅然として示し続けている。そんな中、ついに米軍自身が反対運動への弾圧に動き出した。富田さんからの報告をお送りする。(編集部)
2月22日(日)午前9時。沖縄県庁(那覇市)前の県民広場は、辺野古行きバスを待つ人たちであふれていた。この日、辺野古(キャンプ・シュワブゲート前)で行われる「止めよう辺野古新基地建設!国の横暴・工事強行に抗議する県民集会」に参加する人たちのために用意されたバスだ。
「島ぐるみ会議」のバスが5台、「平和市民連絡会」のバスが2台用意された。しかし、早朝から多くの人たちが詰めかけたため、10時出発予定が9時に受け付けが締め切られるほど。乗車できない人たちがあふれたため、バス配車の担当者は苦慮していた。辺野古への関心がいかに高いか、の表れだ。私は幸いにも「平和市民連絡会」のバスを予約していたので、予定どおりに10時に出発できた。
辺野古に向かうバスの車内では、参加者からさまざまな意見や提案が飛び出し、時間を忘れるほどだった。
「大成建設抗議アクション」(大成建設は辺野古移設工事を受注契約している)のメンバーからは、「沖縄と本土が協力して、統一行動に取り組んでいます」との報告。私も、「静岡でもこの抗議アクションに賛同し、大成建設申し入れ活動を取り組んでいます」との報告をした。
その他にも、「車のない私は、辺野古に行きたくても行けなかった。バスを出してくれたことに感謝している。でも、財政難と聞いているので、なんとかカンパを集めたい」(年配の女性)、年配の男性からは「辺野古のことが本土の人たちに伝わっていない。そこで私は、本土の親戚や知人に新聞をコピーして、手紙を出している。みんな一人ひとりができることをやろう」との呼びかけなどがあった。
集会は、午後1時より辺野古キャンプ・シュワブ第1ゲート前で始まった。県民集会の主催は「止めよう辺野古新基地建設実行委員会」。ゲート前は人・人・ひと…で一杯である。県内外から3000人以上が結集していた。辺野古での大規模集会は、安倍政権が工事に着手した昨年8月、9月に続き、3回目となる。
この集会で私が一番印象に残ったのは、高校生代表での渡具知君の挨拶であった。彼は、普天間移設のための辺野古新基地建設の是非を問うた18年前の「名護市民住民投票」の年(1997年12月)に生まれた。幼いときから親に連れられて、辺野古新基地建設反対運動に参加してきたそうだ。
彼は「本当に撤去されるべきは、座り込みテントではなく、米軍基地。戦後県民を苦しめてきた基地こそ撤去されるべきだ」と。日本政府に対しても、「だだをこねる子どもと同じ。あまりにも幼稚で、国民であることを情けなく、とても悲しくなる」と。在沖米海兵隊の現職大尉(37)が「サッカーじゃあるまいし。けがをしたように見せる姿は実際に見ると茶番だ」と辺野古の反対運動を批判したことに、「体一つで工事車両の前に飛び出し、カヌーで寒い海にこぎ出す、この命を懸けた抗議のどこが茶番だと言うのか」と批判した。
彼のさわやかなあいさつには、ひときわ大きな拍手と声援が送られていた。
県民集会は成功裏に終わったが、集会の始まる約4時間前に、集会のあったその場所で、米軍による弾圧事件が起こっていた。
午前9時頃、第3ゲート前で抗議行動をしていた沖縄平和運動センター議長の山城博治さんが、米海兵隊キャンプ・シュワブ敷地内に無断で侵入したとして、刑事特別法(刑特法)違反の容疑で米軍の日本人警備員に身柄を拘束され、逮捕されたのである。その際、山城さんを助けようと行動した宮古島の谷本大岳さんも身柄を拘束され、逮捕された。
県民集会終了後、集会参加者は、2人の逮捕に抗議するために名護警察署前に集まって、抗議の声を上げた。その数約300人。県道58線沿いにある名護警察署を包囲し、「不当逮捕だ」「仲間を解放しろ」の声を上げ、激しい抗議行動を展開した。
2人はその晩は名護警察署に留置されたが、翌日も支援者約100人が朝から抗議活動を展開。23日夕方7時過ぎに、ようやく2人は釈放された。
釈放後の記者会見で、山城さんはこう語っている。
「朝から米海兵隊兵士や警備員が多数出てきて変だなぁと、でも今日は県民大会があるから─と思っていた。ゲート前で抗議活動を始めたが、黄色のライン(米軍区域との境界を示す)は越えていない。私は騒ぎを抑えようと、皆に下がるように言っただけだ。ところが、突然警備員に後ろから捕まえられ、足を引っ張られ、ゲート内に持っていかれた。そこで、今度は海兵隊兵士に後ろから手錠をかけられ、移動されてフェンスに縛られた。集会の日に私を狙い撃ちして逮捕したのは、反対運動を弾圧しようとしたものだ。刑特法を利用した、まったくの不当逮捕だ。でも逆に、県民の怒りに火をつけた」。
山城さんが警備員に拘束され、基地内に引きずられ、後ろ手に拘束される様子は、地元のメディアで報道された。その様子は、まさに人間のごみ扱い≠ナある。多くの県民は、「犬・猫以下の扱いだ」と怒り心頭である。米軍の山城さんの不当逮捕は、逆に県民の怒りに火をつけた、と言える。
山城さんたちは23日夜に釈放された後、キャンプ・シュワブゲート前のテントに戻り、仲間から大歓迎と激励を受け、24日の朝から仲間とともに元気に抗議活動を続けている。
その後、この逮捕劇が米軍の不当逮捕で、反対運動を弾圧しようとした内幕が、次々に明らかになっている。
琉球新報の米国特約記者の報告によると、「今年1月に辺野古の移設状況を確認するために来沖した米国防総省高官(エステベス国防次官代理とバトー国防次官補)らが、ゲート前の抗議活動を排除する必要性を主張していた」という。
事実、キャンプ・シュワブ所属の米軍幹部は、「現場の警備員の判断ではなく、上からの指示で拘束した」との見解を示した。弾圧の実態が明らかになるにつれ、県民はさらに怒り心頭である。
ところが、日本政府の中谷元防衛大臣は、「事業者として非常に残念。許可なく提供施設・区域に入ることは、くれぐれも自重していただきたい」と語り、不当逮捕に対しても「県警と米軍で適切に処置されたと認識している」と言っている。
こうした米軍の横暴に対して、沖縄国際大学の照屋寛之教授は、「これこそまさに植民地主義ではないか。日本政府が米軍による拘束を看過していることも、許されない。今回の拘束・逮捕は、日米両政府という国家権力が県民に牙をむき襲いかかってきた表れだ。ここで県民が権力に屈しては、他県の市民運動にも重大な影響を与える」(2月25日「琉球新報」)と指摘している。
こうした米軍の弾圧は、オスプレイ配備反対の米軍普天間飛行場のゲート前抗議活動でも起こっていた。2年前の「オスプレイ配備反対」の激しい闘争で、普天間基地のすべてのゲートが封鎖された。さらに、毎日ゲート前でゲートに出入りする兵士に向かって「NO!オスプレイ」「マリン・ゴーホーム(海兵隊は帰れ)」と激しく抗議活動を展開。基地幹部は、抗議行動によって兵士の士気が低下することを恐れていたのである。
普天間のゲート前は県警が警備していたが、次第に海兵隊兵士や米軍警備員がゲート前に出てきて、抗議する市民団体の様子や抗議者の顔をカメラやビデオで撮影するなどの圧力をかけ始めるようになった。また、米軍軍属がゲート前のフェンスに張られた市民団体の「横断幕」や「ノボリ」等を勝手に取り外して持ち去るなどの嫌がらせを続けていた。
今回、米軍は辺野古の反対運動に直接弾圧に乗り出した。それは、米軍が沖縄を占領・支配していた「米軍統治下」と何ら変わりがないことを白日の下にさらしている。日本政府も主体性はまったくなく、ただ米国に「従属」しているだけである。日本は本当に独立国なのか?
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