人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 1部150円 購読料半年間3,000円 ┃郵便振替口座 00950-4-88555/ゆうちょ銀行〇九九店 当座 0088555┃購読申込・問合せ取り扱い書店┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto: people★jimmin.com(★をアットマークに)twitter
HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

2015/2/28更新

ギャンブル依存症者数500万人多重債務者を量産した
利権集団の責任を問う
警察・財閥系三大商社によって作られた「官製ギャンブル依存症」

元パチンコ経営者 森川  山水

多重債務者の4分の1をパチンコ・パチスロファンが占め、窃盗や横領・強盗などの犯罪の引き金にもなっていたため、2004年の遊技機規則改正へとつながった、と言われている。

しかし、「ギャンブル依存症を大量に生み出すきっかけを作ったのは、財閥系3大商社(住友商事・三井物産・三菱商事:編集部注)と警察だった」との告発が寄せられた。執筆者は元パチンコ経営者で、その内容はリアルで真実性が高い。

警察は、脱税対策を旗印にカードシステム導入を促進したが、カード会社設立には、警察の年金運用会社=たいよう共済も出資している。警察と商社の利権あさりが、ギャンブル依存症を招いた。(編集部)

世界有数のギャンブル依存症大国

ギャンブル依存症者が国内で500万人を超えるという厚生労働省の調査結果(2014年8月)の報道がありました。その数値の大きさに世間の耳目はいっているようです。ギャンブル依存症の多くはパチンコ依存症者が実態とされています。

私は、25年間パチンコ店の経営に携わった者です。パチスロを中心としたパチンコ店の最後のブームは、7年前に終わっています。なぜ、今ギャンブル依存症の問題がクローズアップされるのか?ギャンブル依存症=多重債務者の問題は、7年前の方が圧倒的に深刻でしたが、当時、メディアはあまり関心を向けなかったことを思うと、少し奇異な感じがします。あれから7年もたって、私の観点では、「作られたギャンブル依存症」発生に関して責任を負うべき人、機関に対する追及がなされないまま時効が成立したかのようでもあります。今、ギャンブル依存症の問題が国の機関、新聞、テレビ、書籍等で取りあげられることが多くなった背景をこの小論で私なりに説明を試みたいと思います。

7年前にブームが去って以降、全国的にパチンコ店は店舗数を減らし、お客の減少に歯止めがかかっていません。7年前にブームが去ったのには、具体的な理由が存在します。「北斗の拳」「吉宗」という爆発的なパチスロブームを支えた4号機と称される機種が、市場から撤去を余儀なくされたからです。「支えた」とあるのは、ブームを生み出したのは別の要因があった、という意味です。その要因については、次第に言及します。

私がパチンコ店の経営に初めて携わった33年前(1982年)から15年(1997年)ぐらい前までの間、深刻なパチンコ依存症者はほとんど見られませんでした。

その期間は、パチンコ機の機能が時間消費型で、金銭消費型ではなかったからです。つまり、パチンコ店で仮に一日中、パチンコをし続けても、10万円単位のお金を消費することは、原理的にありえなかったからです。基本的には、数時間パチンコをして1万円前後使い、人によってはそのすべて、あるいは何割かを失い、ある人は使ったお金以上に戻りがある、そういう穏やかな世界でした。すこしお金がかかる娯楽ではありましたが、ほとんどのお客に、勝つか負けるかの世界、ギャンブル場に行くといったような悲壮な感じがないことは、ずっと一日の過半を店頭に立ってお客と接した私の経験に基づく意見です。毎日、何万円も負け続け、必死に負けた分を取り戻そうとしてさらに深みにはまる、という経緯を辿る人は、ほとんどありえませんでした。

カード支払いシステムの導入/「濡れ手に粟」目論んだ商社

今となっては牧歌的とも言える世界が一変したのは、大手3大商社が警察権力の後押しを受けてパチンコ業界に参入して以降です。後述するように、この介入がきっかけとなって、ギャンブル依存症者を百万人単位で大量に生む営業環境が生まれたのです。一方の当事者の私の体験、観点から言えば、大量のギャンブル依存症者の発生のきっかけは人為的なものであり、その広がりには国家権力の容認があった、とするものです。

それまで直接、玉貸機に現金を投入し、パチンコ玉一個につき4円払ってパチンコをしていたのを、その支払全てにカードを介在させてパチンコをするというシステムに変えるという構想が、そもそものきっかけです。

パチンコの貸玉(玉そのものを売っているのではないという業界用語)は、最低が100円単位です。1000円カードを下限に1万円を上限とするカードを発行し、発行手数料として額面の1%をカード会社が受け取るという、まるで寺銭稼ぎのようなことを、監督庁の警察が全国のパチンコ店に押し付けたのです。現時点でのパチンコ業界全体の貸玉規模は20兆円とされていますので、この場合、その1%、2千億円をカード発行会社が営業努力、新たな付加価値の創出なしに得ることができる、という皮算用をしたのです。

そして、実際にその構想を、警察のバックアップをもとに強行実施しました。パチンコ店は風営適正化法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)略して「風営法」の下、警察の監督下に置かれた許可営業です。いわゆる「お上」に逆らえないのです。

お客の側からだけでなく、多くのパチンコ店側からしても、なんら必要も需要もないカード支払いシステムによって、今までの現金による貸玉システムより年間2千億円余分に負担が押し付けられたことになります。カードシステム変更による設備投資(カード券売機、カード対応遊技機械、いわゆるCR機=カードリーダー機の設置場所「業界用語では島」の造作等)は、現時点では対応パチンコ機1台当たり、ひっくるめて40万円とされています。この現行単価で計算しますと、全国平均の設置台数規模300台の標準店で、1億2千万の初期費用がかかります。この金額すべてを店側が負担するというのも、考えればおかしな話です。

儲けるために誰かの地所を借りて飲料水の自動販売機を設置しようとして、メーカーがその自動販売機自体の買取りを要求するようなものです。この場合、販売を通じて設置場所提供者にも利益の一部が行くことを考えれば、なおさらです。このシステムは、パチンコ店側にカード会社の利益が全く還元されません。つまり、店側=お客の負担に一方的に寄生しているのです。

カード化促進のため人気パチンコ機撤去

いずれにしても、このカードシステム導入を巡って、業界は割れました。賛成派は、カードシステムによって多店舗展開が容易になるとして、積極的に動きました。数の上では圧倒的に少数派でしたが、カードシステムでは現場の従業員が不正工作をできないというシステム上のメリットがあったため、多店舗展開を企業戦略の柱にする業者が賛成に回ったのです。

その当時は単独店が過半を占めており、そのほとんどの人が反対にまわりました。全国平均でオーナー1人当たり2店舗を超えない時代でした。しかし、大多数の業者の反対にもかかわらず、このカードシステムは徐々に押し付けられるように広がっていきます。

ちなみに、パチンコ業界の多数の人がカードシステム移行に反対したのは、このシステムでは各店舗の売り上げデータがカード会社に一元的に管理され、業者側の人間が売り上げカットしようと画策してもその数値をごまかせないという点にあったという指摘は、決して的はずれではありません。

現場の人間が簡単に売り上げをごまかす手段がいくつかあったからですが、ここにも落とし穴があり、そのことが後々のギャンブル依存症の大量発生につながっていきます。パチンコの売り上げ記録はカード会社に管理されているため、店側はその数値を偽造することはできませんが、パチスロの売り上げは相変わらず各店舗の管理下にあったため、パチスロの設置比率が高まり、あげくは多くのパチスロ専門店の誕生を見ます。市場へのパチスロ供給増大がなぜ、ギャンブル依存症の大量発生と結びつくかの内在的理由は、後述します。

権力強行的に進められたカードシステムは、誰もが予想しなかったさまざまな結果をもたらします。そのひとつが、人気のある現金機の撤去です。それまでのパチンコ機(業界用語でいうところの現金機―左右のパチンコ台に挟まる形で遊技台間に挿入されている玉貸し機《業界用語でサンド》に現金を入れてパチンコをするパチンコ機)が、根強い人気を保ったため、カードを使ってしかプレイできない、いわゆる新登場のCR機はお客の受けが悪く、このままではCR機と結びついたカードシステムの導入が進まないと判断した警察権力側が、人気の高い現金機を市場から撤去させたのです。

パチンコ店経営悪化で民族系金融機関破綻へ

「アレジン」という現金機でパチンコ史上最大の人気機種の撤去は、客離れと売上減少をもたらしました。こういうことの顛末は、他の要因(@発行店舗でしかカードが使えない、A現金機と違い、初回の大当たりを引くのにお金がかかり、やっと引いた大当たりパターンの消化には時間がかかり、お金と時間を限定的にしか使えないお客が去ってしまうといったこと)も加わって、パチンコ店から多くのファンが離れる事態を生み、そのことは売上減少となって現れます。それでなくともカードシステム導入の設備投資負担にあえぐパチンコ店の屋台骨を揺るがせます。もともとパチンコ店の経営者は在日コリアンが多数を占め、その多くは民族系の金融機関を利用します。

こうして、在日コリアンの最大の産業であるパチンコ店の営業不振に連鎖するかのように、多くの民族系金融機関が破綻します。近畿朝銀のように、公的資金3000億円投入後に2次破綻したケースもあります。

この在日コリアンのパチンコ店の不振、破綻、民族系金融機関の破綻は、日本社会には特に大きな悪影響は与えませんでした。親族にパチンコ店経営者がいる在日コリアンにとっては、お金の融通が得られないといったことで、数万人単位の在日コリアンの生活を直撃し、生活保護受給の申請者が結果的に増えたことを除いて。

偽造カードがヤクザの資金源に

もう一つ、ギャンブル依存症の大量発生の舞台が整えられる前に、日本社会にも悪影響をおよぼす事態が生じます。業界推計で500〜1000億円という巨額のお金が偽造カードを通じてヤクザの世界に流れ込んだのです。

なぜ、これほどの巨額のお金が不正に取得されながら大きく世間を騒がすことなく(『週刊ポスト』は偽造カードの蔓延を誌上で取り上げていましたが)、いつの間にか話題にも上がらなくなったのかは、騒ぎの幕引きを図った勢力がいるとしか考えられません。

パチンコ業界の反対を無視して(押し切ってではありません)強行したカードシステムの導入の結果、アンダーグラウンド勢力に甘い汁を吸わせることになったのですから。また、商社も大損害を被る結果となり、手痛い打撃を受けます。本物のカードであれ、偽造カードであれ、カード使用分の売り上げは全て店側の取り分となり、その金額分が商社側から支払われます。一方、偽造カードでは商社側に購入記録がないため、店側にカード購入代金を請求できない、という決済の取り決めになっていたからです。

こういう大手商社の大損害のなりゆきを見て、「社会正義のため『神の見えざる手』が動いた」と一部の人は快哉を叫びました。しかし、時すでに遅く、ギャンブル依存症者の大量発生の舞台は、着実に完成に向かって動きつづけます。(つづく)

  HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people★jimmin.com(★をアットマークに)
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.