2015/1/22更新
インタビュー :ユン・ベンジャミンさん (32歳・市民派ジャーナリスト・機器類販売職)
香港の占拠現場では学生だけに留まらず、多様な人々が活動に参加していた。参加者はどのような問題意識を抱き、行動しているのか。また、民主主義についてどのように考えているのか。金鐘(アドミラルティ)と銅鑼湾(コーズウェイベイ)の占拠現場で出会った市民派ジャーナリストと占拠地域の自主警備要員として活動する二人に焦点を当ててインタビューを行った。(編集部・ラボルテ)
──どうしてジャーナリストに?
ベンジャミン(以下、B)…政治に関心を持ったのは、10年ほど前です。たまたまインターネットで愛国教育問題をテーマにしたドキュメンタリーを見つけたのがきっかけです。親中的な主要メディアとは違った内容を取り上げていました。ジャーナリストの活動そのものは、ボランティアで取り組んでいます。
──香港の状況をどう見ていますか?
B…人間にとって必要不可欠な食料と水の視点から例を上げましょう。鳥インフルエンザをご存知でしょうか。香港の政策では、鶏の一羽に感染した徴候が見つかった場合、産地を問わずに処分します。先日、感染の疑いのあった数万羽の鶏が処分されました。可能性が高いのは、中国産の鶏が鶏インフルエンザをもたらしているということ。香港の畜産業者は産地別に検査・処分してほしいと政府に要求していますが、政府は産地別に分けて処分しません。
野菜に使用される農薬の問題もあります。昔は、禁止されていた二種類の農薬が中国本土で流通しているため、許可されました。また、香港の水道水は中国本土から輸入しています。シンガポールもマレーシアから高額な水道を輸入していますが、香港はそれ以上に高額な水道を中国本土より輸入しています。 食料も水も中国政府の支配下にあり、香港の自立性をいつでも殺すことができるのです。
また、梁振英行政長官は、香港独立の可能性が議論された内容の本が出版されることに反対するスピーチを行いました。この点からも、中国政府は香港独立を警戒し防ぐために食糧・水を管理したいのだと推察できます。
加えて、香港の主要なテレビ・新聞は中国資本系企業やその支配者によって事実上、統制されています。放送免許は、都合の悪いテレビ局には付与されません。また、「反権力的な新聞であるアップルデイリー紙(※注)には紙面広告を依頼するな」というように中国資本系企業や不動産会社に圧力をかけさせます。
──雨傘革命についてどう考える?
B…失敗したと考えています。道路を占拠することは、政府への圧力となり事態を動かすと考えていましたが、これだけでは圧力になりません。香港の人々は欧州の社会運動と違って、高級ブティック街を封鎖したり、店を破壊したり、車を燃やしたりしません。これはある面では敬意に値するかもしれませんが、道路を占拠するだけでは政治状況は何も変わらなかったのです。
──民主主義の現状は?
B…中国の「侵略」によって香港の状況は悪化の一途を辿っています。現在、中国本土より年間54750人の移民を受け入れています。先日、香港政府はこれをさらに緩和すると発表しました。香港の人口は約700万人です。普通選挙に至った場合、「思想調査」をパスした移民が民主派の候補者を支持するでしょうか?
また、小中学校の生徒に教科書などを通して愛国的な思想を植え込んでいますし、中国本土へ年に一度の「修学旅行」が計画されています。最近では香港青少年軍というヒトラー青年隊ないし現代版の紅衛兵的な青年組織も立ち上げられています。香港の民主主義は、これらの政策によって、危機を迎えています。そして、政治家は自らの利益のために、香港を売りに出すのです。
──これからの活動は?
B…中国本土では、共産党しか選ぶことができません。また、中国政府は三権分立ではなく「三権合作(協力)」と謳っています。これでは逮捕や人権侵害が容易になってしまい、主要メディアもその傘下になってしまいます。政府に容認された記事しか書かない。
私たち自身が権力を監視しなければならないし、中国政府の完全な支配下となる事態を避けなければなりません。その為に私は市民派ジャーナリストという立場からの活動を続けていきます。
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※アップルデイリー…香港で唯一、民主派を支持している日刊紙。占拠活動についても、民主派の視点から特集を組み、支援している。
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