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2015/1/22更新

台湾・立法院占拠ひまわり革命

中台サービス貿易協定に抗議
代表制 越える民主主義

香港・雨傘革命に先立つ、台湾・ひまわり革命(2014年3月)について、報告・再考したい。ひまわり革命とは、台湾学生が国会にあたる立法院に突入、中台サービス貿易協定の撤回を求めて24日間にわたって立法院を占拠した闘争だ。

背景には、2008年の国民党・馬英九政権誕生がある。同政権は、対中経済関係強化を主要政策に掲げ、2010年に「両岸経済協力枠組協議」(ECFA・中台の自由貿易協定)を締結。同協議の4条である「サービス貿易協議」についての協商を行い、「速やかな完成」に同意した。

対中経済協力の是非について世論は2分しており、かろうじて国民党が51%の支持を得ていたが、第2次馬政権時代になっても経済不況が続いたため、「ECFAは、一部大資本の利益にしかならず、大多数の国民には不利益になる」との認識が急速に広がった。

これには製造業が大陸に移転(台湾資本の大陸進出ということでもある)するなど、働く場が失われる一方で、2012年の大卒初任給は22000元(7万円未満)程度であるにもかかわらず、物価・家賃が高騰し、庶民の生活は改善しない、という経済問題が深く関係している。

来日した学生活動家2人にインタビューした。林松さんは、立法院に突入した当事者、劉芳芳さんは、海外で国際支援デモを呼びかけた活動家だ。出入国管理法上、日本滞在に支障が出ることもあり得るので、個人が特定できないよう配慮し、氏名も仮名としている。(編集部・山田)

前史〜「野イチゴ運動」と反メディア独占デモ

2008年、馬政権の集会弾圧を糾弾するため、大学生が主となり「野草苺(野イチゴ)運動」が発生しました。運動としては敗退しましたが、これを契機に全国各大学で運動組織が大量に結成され、若い活動家も各運動に参加、学生の全国ネットワークも作られていきました。これが「ひまわり革命」の一つの基盤となっています。

2012年には「旺旺中時」という親中派メディア集団の「中嘉ネット買収案」を、国家通訊伝播委員会が条件付きで可決(7月)。言論の自由が奪われるとして、知識人が記者会見を開いたのをきっかけとして、1万人の反対デモが起こりました(9月)。ネクストメディア買収契約(11月)に対しても数百名の学生が行政院前で座り込み、3日後には千人以上の市民デモを行っています。

こうした経験を通じて学生運動は、組織化・宣伝の手法・警察権力との対峙の方法などを学び、若い活動家に継承していきました。

大学教授も参加

「立法院」突入・占拠を試みたのは30人程度の学生でしたが、大学教授が積極的に関わってくれたことで、広がりができました。アジアの中でも突出して、台湾の知識人は、政治・社会問題に積極的に関わることを自らの使命とする伝統があります。オランダ・中国・日本に植民地化されてきた長い歴史の中で、知識人は自らの知識を社会に還元していかねばならないという使命感です。

経済学の教授が、サービス協定によってさまざまな業種がどのような影響を受けるのかを研究・発表したり、法学部の教授が、国会の法的手続きについて批判する論文を書き、それをマンガやパワーポイントにしてネットで配信するなど、問題をよりわかりやすくする活動を行いました。

マスメディアは、当初こうした学生の動きを無視していましたが、SNSによって基礎情報が拡散し、「立法院突入・占拠」という衝撃的戦術で注目を集めて、支持が一気に広がりました。

立法院をコミューン的空間に変換

突入当日の3月18日夜、立法院前に集まったのは100人程度でした。そのうち中心的活動家約30人が、左右と裏口の3つの方向に分かれて立法院突入を試みました。警備の警察官は、全く予想していなかったようです。ほとんど妨害されることなく突入に成功し、残りのメンバーを招き入れ、8カ所の入口全てを議事堂内の椅子や机でバリケード封鎖することができました。

私たちは、すぐに強制排除されるだろうと予想していました。実際、警察機動隊は翌朝までに合計5回、別々の扉に突入を試みました(4・5回目は数カ所同時突入)が、失敗しました。

これらの映像を広報担当メンバーが立法院の中からインターネットでライブ配信したことで、あっと言う間に大ニュースとなりました。深夜に台北市内の大学生が立法院前に殺到。朝になると1万人ほどの学生が立法院を取り囲むという状況で、警察は手出しができなくなりました。朝、機動隊の向こう側に圧倒的な数の学生の姿を見た瞬間に、勝利を確信しました。私たちは、長く少人数で運動を続けてきましたから、信じられないくらいの感動でした。

24日間の占拠中、立法院内には厨房が作られ、外から料理人も入り、美容院もできました。60才くらいの女性が、自宅で調理したお弁当を100個くらい持ってきてくれたこともありました。彼女は、お弁当を学生に配り終えた後、皆に向かって「闘ってくれてありがとう」という御礼を言ったのです。学生は皆、泣いていました。

自分のできることで運動に貢献したいという思いが集まる場、まさに占拠中の立法院はコミューン的空間でした。

中心のない運動か?組織的運動か?

2008年の野イチゴ運動は、指導部のない運動でした。ひまわり革命をはじめ、他のNGOやNPOのリーダーたちは、野イチゴ運動の経験者であり、その敗北の反省として、しっかり組織化し指導部を形成していくことを共通の教訓としています。

各メンバーは、組織化・広報・交渉など得意分野があり、そうした能力を持ち寄って指導部を形成します。リーダーとしてマスメディアに登場した林飛帆さんも野イチゴ運動世代ですが、彼はスポークスマンであり、彼がいなければ別の人がその役割を果たしたと思います。

指導部が存在すること自体への批判は、最初からありました。誰でも自由に発言できるよう工夫しましたが、最後まで問題として残りましたし、今も批判は受けています。私たちが最も恐れているのは、運動の分裂です。分裂を回避するためには、情報を共有し、しっかり議論し、皆が納得できる論理と合意を見いだしていくことです。多数決は、あくまで手段の一つでしかありません。

台湾は、オランダ・清朝・日本・国民党といった植民地権力に支配され、闘ってきた長い歴史があるので、「権力」そのものへの批判が根付いています。運動のリーダーになっても、「権力的になってはならない」という「活動家」としての強い歯止めがあります。運動内の反対派に対して力で抑えるような手法を採ると、たちまち強い批判に晒されます。

そもそも活動家は、複数の組織・グループに同時に所属しながら緩やかなネットワークを形成しているので、排他的な組織運営はできません。ひまわり革命の中心組織といわれている「黒色島国青年陣線」にしても、セクトではなく、メンバーは他の組織と重なり合っています。

日本は、イデオロギーを基準に組織が作られますが、台湾では、環境問題・労働問題などテーマ毎にグループが形成される傾向が強いので、組織方法・運営には大きな違いがあると思います。

中国2つの拡張主義

―雨傘革命との関連は?

中国共産党政権は、グローバルな自由主義経済に巨大資本を投入して中国経済を拡張していますが、同時に一党独裁的な専制政治も拡張しようとしています。台湾と香港は、この2つの拡張主義に直面しており、同じ課題を抱えていると言えます。

中国国内では、農民や労働者の暴動や乱開発に反対する抵抗運動が頻発しており、政府は権威を保つのに必死です。経済成長が頭打ちとなり、民衆反乱が高じることを最も恐れています。それゆえに中国政府は、香港・台湾の民主勢力を脅威と感じており、潰したいと願っています。そうした意味でも、台湾・香港は独立を維持し、民主主義を守らねばならない、と思います。

「民主主義」とは、弱者や少数者を守るための議論と実践

―あなた方にとっての「民主主義」とは?

台湾老人党=「公投護台湾連盟」

2008年に結成された「公投護台湾連盟」は、台湾独立を決める国民直接投票を要求する組織だ。結成は新しいのだが、ほとんどのメンバーは高齢者で、いわば台湾老人党といえる存在だ。

同連盟メンバーは、、立法院前にテントを建てて2000日以上座り込みを続けていたが、学生たちが立法院に突入した時も、正門で彼らが陽動作戦をとってくれたために、警備が正門に集中し、学生は容易に別の入口から侵入することができたという。

占拠後も、同連盟は立法院の外側で学生たちを守り、サポートし続けたが、学生のやり方に口を挟むことは一切なかった。

こういう老人がいたために、警察も物資の構内搬入などに妥協的態度を示したし、彼(女)たちが、若者に台湾社会運動の歴史を語り継ぎ、世代間ギャップを埋める役割も果たした。

ひまわり革命引き継ぐ「島国前進」

立法院占拠後、学生たちは選挙罷免法の改正を求める組織=「島国前進」を立ち上げた。選挙民の意思や公約と違うことを平気でやる政治家が蔓延していることに対して、リコール投票のハードルを下げて、実質的に機能させるための法改正を求める運動体だ。

制度としての代表制民主主義は、台湾で機能していません。サービス貿易協定に関して顕著に表れましたが、国民が反対しているにもかかわらず、全く議論することすらなく、わずか30秒で議決してしまったのですから。

私たちは、制度としての多数決民主主義よりも、いかにして弱者や少数者を守るのか?という価値観に基づいた議論と実践こそが民主主義の本質だと考えています。台湾で言えば、先住民族や女性の権利を守り、拡張していくための方法を見つけ出すことです。

日本の民主主義は、民衆の闘いによってというよりは、敗戦によって与えられた制度的なものです。昨年末の衆院選の結果を見ても、民意が反映されているとは言い難い結果です。しかし、代表制民主主義のどこに問題があるのか?を考えた場合、私たちは、制度や政治家の問題と捉えるよりも、私たち民衆の側に何が足りないのかを考えようとしています。

日本の反転に期待

―日本の社会運動について

台湾から見ると、日本の現状にはガッカリする面があります。日本には、60年安保闘争、70年安保闘争、全共闘運動、三里塚闘争など、輝かしい歴史があり、私たちは、そうしたドキュメンタリー映画を観て関連の本を読み、「これこそ革命運動だ」と憧れて育ったからです。今も、それらのドキュメンタリー映画は、台湾の若者の間で大人気です。

台湾で集会・デモに行くと、常に誰かが演説し、ライブ映像をネット経由で配信し、ツイッターでつぶやいて、種々雑多な人がそれぞれの手法や道具を使って主体的に参加しています。日本の脱原発首相官邸前デモも見ましたが、スローガン・コールも単調で、無力感を感じてしまいます。

日本の運動は、60年安保闘争の後、分裂が続き、内ゲバまで行き着きました。そうした負の歴史を見てしまった若者たちは、社会意識の高い人でも「デモによる社会変革は無理だ」と思っているのではないでしょうか。日本の若者は、反体制運動によって社会を変えるのではなく、経済や政治の分野で権力を獲得してその力で社会を変えていく、という発想に傾いているように見えます。また、日本の知識人についても、研究活動はすばらしいのですが、社会的関与は薄いのが残念です。

社会運動は、個人化した社会の中で共同体を作り直す、格好のきっかけになります。新たな人との出会いが感動を生み、それが運動を継続する力となるのです。

社会運動への関わりは、社会に貢献したいという若者の素朴な希望をストレートに表現できる場です。個人化・内向化の方向に進んでいる日本の若者ですが、いつか反転する時が来ると願っています。

注:野草莓学生運動

中国陳雲林・海峡両岸関係協会会長の来台に対する抗議のデモを、馬政権が暴力的に鎮圧したことについて謝罪、国家安全局長の解任などを求めた学生運動。

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