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2015/1/12更新

【もうひとつの民主化運動〜香港における再開発】

地価高騰とコミュニティー破壊に苦しむ庶民

超高層ビルが広がる香港の街。華やかな国際都市「香港」のイメージの一方で多くの人々が貧困の中で暮らしている。香港の人々に「香港の抱える社会問題は?」と聞くと、必ず返ってくる言葉が、「街の変容」である。「あっちには行きつけのご飯屋さんがあって、向こう側には本屋さんがあって、憩いには安いコーヒー屋があって」と住み慣れた街は、数年で「宝石店・ブランド専門店・宝石店」という高級店街に変わってしまったという。家賃が高く、物価も高く、道を歩く人々もすっかり変わってしまったという香港。

貧困や再開発も民主化運動の背景の一つだと考え、現地の活動家から貧困地域の一つである深水?(シャンスイポー)を案内していただいた。2008年の香港中文大学の世論調査によると、9割の人々が「貧富の格差」を問題視しているという。

また、所得格差を表すのにジニ係数がある。香港のジニ係数が0・533(2006年)から0・537(2011年)へと、所得格差が拡大しているのがわかる(数字が0は完全平等で、1に近づけば所得格差が大きいことを示す。ジニ係数が0・4を上回ると、社会が不安定化すると言われる)。

街を歩いていると、20階建て、40階建て、もしくはそれ以上の超高層の新しいビルと、数階建てほどの古い建物が入り混じっている。古い建物は「唐桜」といわれ、1階がお店や仕事場として使われていて、2階より上が住居として使われている。3階建て以下のビルは、大戦直後やそれ以前のものもあるという。

「こういった昔の建物に住んでいる人には、地域に根付いた社会関係があるんだよ。近辺の路上は屋外市場など地域住民のパブリック・スペースとなっている。地域文化や社会とつながる場であり、セーフティネットとしても機能している」といったことや、「高層の新しいビルができると、地域住民のパブリック・スペースとしての路上は失われる。住民同士のつながりは無くなり、近隣の地価は高騰する」と、案内してくれた活動家は語る。また、地価高騰と住宅不足の影響が大きく、ビルの屋上に家屋を建てて住む人々も多い、と教えてくれた。

反「再開発」住民闘争

現地でお世話になった香港中文大学の小出先生から、『香港の都市再開発と保全』という本を薦められた。内容は、香港での再開発に対する民主化運動を扱ったもの。

再開発とは、「下町とその路上で繰り広げられる生活といった唐桜的価値から、経済・富・効率を重視した中環価値(※注)に変えていくと規定し、それを再開発と称して進めてきた」(同書)のだという。2000年代に再開発の対象となった利東街(香港の行政・金融街近くにある)という下町の一画では、「誰のための開発なのか」「この再開発で街は再生しない」「もともと住んでいた住民はどうなるんだ」「住民をそのプロセスに加えさせろ」と訴えて闘争が繰り広げられたという。また、開発現場での座り込みや工事の妨害などのラディカルな直接行動が取られたのも、この頃だという。

深水?を歩いていて、最後に行き着いたのは公園のようなスペースにテントやバラックがところ狭しと並ぶ空間だった。どうやら市場らしく、いつ排除されるかわからない状況にありつつも、多くの人々が「ここの生活と交流を大事にしたい意思を持っている」と、案内してくれた友人が語った。

かつての香港住民─中国大陸から香港へ移民してきた人々は、貧しく、よそ者同士であるものの、深い相互関係を築き生活を送っていた。その香港の記憶と、再開発に対する民主化運動の経験が、今回の雨傘革命につながっているようだ。この再開発への民主化運動に参加し、街を案内していただいた現地の友人は「5年前では、雨傘革命のような直接行動を伴った大衆運動が起きるなんて、想像できなかった」と言った。

都市再開発で排除と孤独化が進む一方で、点と点の小さな運動であったとしても、結果としては面となりうる、と勇気付けられた一言だった。

※中環価値…富裕層やホワイトカラーの人々と高級ブティック、超高層の現代建築で構成された香港の行政・経済・文化の中心地であるセントラルこそが、香港社会全体が追求している姿であり価値であることを意味する。

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