2014/12/6更新
10月31日、米軍ヘリパッド建設に反対する地元住民の座り込みが続く東村・高江を訪れた。ヤンバルクイナやノグチゲラといった固有種や絶滅危惧種が住み、「沖縄の水がめ」でもあるこのやんばる(※注@)の森には、「対ゲリラ訓練」を目的とする米海兵隊の北部訓練場(ジャングル戦闘訓練センター)がある。普天間飛行場へのオスプレイ配備以降、国が高江に6カ所で、新たに建設しようとしているヘリパッドは、オスプレイが使用できるものである(ただし、北部訓練場でのオスプレイ訓練自体は、すでに行われている)。
「ヘリパッドいらない住民の会」では、ヘリパッドに反対する高江住民が、「建設工事を止めよう」と交代で毎日24時間体制で2カ所の座り込みを続けている。防衛省は、この座り込みつぶしに躍起になっており、今年中にもテントの排除に動く、と噂されている。(編集部一ノ瀬)
「どうしたんだろうね。ノグチゲラが高江小中学校の校舎の窓ガラスにぶつかって死んだって、新聞に出てるよ。これで今年4羽目だって」─東村高江のN1ゲート前座り込みテントで、そんな話題が出た。
ノグチゲラはキツツキ科の鳥で、全長は31a、翼長は15〜17a。沖縄北部・やんばるの森にしか生息しておらず、沖縄県の県鳥でもある。近年はカラスや猫などの天敵に襲われるケースが増えており、またやんばるの開発による生息地の減少や環境の悪化によって、数が減り、環境省のレッドリストに「絶滅危惧種」としてあげられている。東村では、2010年6月に「ノグチゲラ保護条例」が制定され、保護に力を入れている。
東村のノグチゲラ保護監視員の話では、ノグチゲラが窓ガラスに衝突して死ぬケースはほとんどなく、年に4羽も死ぬのは「非常事態」だという。冬の時期のノグチゲラは、やんばるの森の奥に引っ込んでいる。それが人里に出て来るのは、生息環境の大きな変化が考えられる。やんばるの森を縦横無尽に飛び回るオスプレイなどの米軍機の影響(※注A)があるのでは?─と、座り込みテントの人たちは語っていた。
高江住民の座り込みによって、ヘリパッド建設を予定通りに進められていない。そこで国=沖縄防衛局が打った手が、「座り込みによって、ヘリパッド建設工事が妨害されている」として、高江住民への「通行妨害禁止」の仮処分を申請したSLAPP訴訟(※注B)だった(2008年11月)。
そして今、新たに道路の使用制限による座り込みテントつぶしが狙われている。
高江を走る「沖縄県道70号国頭東線」。住民の重要な生活道路であるのはもちろん、やんばるの自然まっただ中を通るため、ドライブやツーリング、エコツアーのコースとしても利用されている。
この県道70号は、米軍基地(北部訓練場)の中を通っていて、ヘリパッド建設予定地のほとんどが、その近くにある。道路の使用は自由にできるが、両側の路側帯は、米軍への提供施設区域である。「日米地位協定」によって、日米が共同使用できることになっているのだ。
そこで防衛省は、座り込み排除のためにこの共同使用を見直し、「米軍専用」への変更を決定したという(9月13日付「琉球新報」「沖縄タイムス」)。そうなれば、「住民の会」が封鎖し、座り込みテントを設置しているヘリパッド建設予定地のN─1地区への林道入り口周辺の路側帯の通行や立ち入りを禁止できることになる。
現在、防衛局は手続き上はN─1地区の工事をいつでも開始できる状態にある。地元メディアの報道では、年内に(法的手続きで)座り込みを排除し、工事に着手する方針だという。
すでにN─4地区のヘリパッドは、今年8月に建設が完了した。ところが米軍は、日米合同委員会での引き渡し手続きも待たないうちに、完成したN─4でのヘリコプターの離着陸を行っている。
住民の会では「当初からヘリパッド建設は基地機能の強化になると指摘してきましたが、訓練場も返さないまま増設ヘリパッドの先行運用という形で露骨に基地機能強化が示されるとは、思いもしませんでした」と批判している。
安倍政権は、県知事選で示された「基地反対」の巨大な民意を押しつぶしに動いた。選挙のわずか3日後の11月19日から、海上で海底ボーリング調査のための桟橋埋め立て準備を再開した。シュワブ第1ゲート前では、座り込みむ人々を沖縄県警が強制排除。2日連続でけが人を出し、「県民の思いを踏みにじるのか」「絶対に基地は作らせない」─と、県民の怒りは高まっている。
そうした沖縄の怒りの大きさを前に、衆院選への影響を恐れた安倍政権は、11月22日に海上作業を中断し、衆院選後まで延期を決めた。高江でも同様に、衆院選終了までは工事の動きはないと見られている。
× × [注] × ×
@やんばる…沖縄島北部地域(名護以北)を指す沖縄の言葉。森が広がっているため、「山原」(やんばる)と呼ばれるようになったといわれる。
A米軍機の影響…騒音・振動や、飛行機が起こす風、高温の排気などがある。騒音については、特にオスプレイ独特の低周波音が大きく、防衛省が環境アセスメントで出した心理的影響、物的影響の閾値を超える低周波音も測定されている。
BSLAPP(スラップ)訴訟…威圧訴訟、恫喝訴訟。公の場で発言したり、訴訟を起こしたり、あるいは政府・自治体の対応を求めて行動を起こした権力を持たない個人・社会的弱者に対して、企業や政府などの社会的強者が恫喝、発言封じなどを目的に起こす訴訟。
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