人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 1部150円 購読料半年間3,000円 ┃郵便振替口座 00950-4-88555/ゆうちょ銀行〇九九店 当座 0088555┃購読申込・問合せ取り扱い書店┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto: people★jimmin.com(★をアットマークに)twitter
HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

2014/11/18更新

沖縄取材レポート(上)

辺野古・高江の「基地反対」の闘いと沖縄県知事選挙
「オール沖縄」で平和・自己決定権求め安倍政権に「新基地No!」

沖縄県知事選

長陣営の「うまんちゅ1万人大集会」には、1万4800人が集まった(11月1日、沖縄セルラースタジアム那覇)

辺野古への米軍新基地建設のためのボーリング調査が強行されている沖縄。この間、保革を超えて、「オール沖縄」で、普天間飛行場撤去やオスプレイ配備反対などの声をあげ続けてきた。しかし、安倍政権はアメとムチ政策を巧みに使い、昨年末には仲井真沖縄県知事に辺野古の埋め立てを承認させることに成功した。

また、10月30日には、県知事選挙が告示された(11月16日投票)。「基地問題」を一大争点に据えて、選挙戦が繰り拡げられている中、10月28日〜11月1日の間、沖縄取材に飛んだ。那覇・辺野古・高江を訪れたレポートを2回に分けてお届けする。(編集部 一ノ瀬)

アスベスト解体の配慮なしに新基地建設工事進める防衛局

「安倍首相と沖縄防衛局は、知事選前までに辺野古新基地の建設工事を、後戻りできないところまで進めたかったはず。それを私たち沖縄県民の闘いが止めた、ということです」─「辺野古新基地の建設反対」で座り込みが続くキャンプ・シュワブのゲート前で、山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)が座り込み参加者にアピールし、参加者は拍手と歓声で応えた。

※大気汚染防止法…アスベスト建材を使用した建物の解体時に、大気環境への飛散防止対策を義務付けている。解体工事の受注者は、事前調査を行い、その結果に関する掲示板を、見やすい位置に設置しなければならない。

10月29日。まだまだ焼き付ける日差しの中、ゲート前には、沖縄各地から多くの人々がかけつけていた。本土からかけつけた人たちの姿もあった。

現在、キャンプ・シュワブ内では、新基地建設のための解体工事が進められている。その跡地を作業ヤードとして整備し、辺野古・大浦湾の埋め立てをする予定になっている。当初の計画では、辺野古漁港を作業ヤードとして使う意向だったが、管理権を持つ稲嶺名護市長が拒否。安倍政権・防衛省としては、1日も早く解体工事を終えて、埋め立て準備に入りたい状態だ。

ところが、米軍施設にはアスベスト(石綿)が使われていることがわかっており、解体工事はストップ状態になっていた。10月1日から、沖縄県・名護市が立ち会ってアスベスト撤去作業が行われたが、最終的な安全は確認されないまま、沖縄防衛局は、この10月29日午前11時から解体工事を再開する予定だった。しかも、この日解体工事予定の建物は、建材に含まれたアスベスト粉じんの飛散のしやすさ(発じん性)が「レベル2」という、危険なシロモノ。

「防衛局は、以前にも、キャンプ・コートニーで秘密裏にアスベストの解体工事をやった前例があります。私たちが今回指摘しなければ、同じように強行したことは間違いない。実に犯罪的なやり方です」(ヘリ基地反対協議会共同代表・安次富浩さん)。

2013年6月には、嘉手納飛行場に隣接する沖縄市内のサッカー場で、かつてのベトナム戦争時に使用されたと思われる「オレンジ剤」(枯葉剤)のドラム缶61本が発見された。「沖縄でオレンジ剤を取り扱った」「目撃した」という元米兵の証言が出てきているが、米政府は、これまで沖縄に枯葉剤が持ち込んだことはない、と主張している。昔の出来事であるため詳細が分からず、今なお沖縄県民の不安は収まらない。アスベスト工事反対の根底には、「枯葉剤の二の舞にするな!」との思いがある。

「住民に十分な説明もないまま、危険なアスベスト解体工事を止めよう!」という呼びかけは、メールやブログ、ツイッターなどで拡散され、早朝から約80名の市民が集まり、キャンプ・シュワブの第1ゲート前と新ゲート前を占拠した。解体工事にあたって、沖縄県環境保全課・名護市や沖縄労働基準監督署の職員が立ち入り調査することになっていたからだ。

県知事選直後に狙われる辺野古・大浦湾の埋め立て

車が入るごとに、ゲート前の人々が車に詰め寄り、県や労基署の車ではないか、工事車両ではないか、を確認する。

午前10時50分ごろ、県の車4台が新ゲートに到着。ゲート前の人々が集まり、抗議の声をあげる中、沖縄平和運動センターの山城博治議長が県環境保全課・比嘉榮三郎課長と交渉。結局、県側は「改めて皆さんと協議の場を持ちたい」と語り、引き上げていった。

正午過ぎ。名護防衛事務所の西幸一次長が、ゲートに姿を現した。「立ち入り調査は中止になった。今日は解体工事も行われない」─集まった人々は、翌日(30日)の県知事選告示直前の滑り込み的な新基地建設の強行を止めたことを確認し、シュプレヒコールをあげて気勢を上げた。

「私たちの懸念は、解体したアスベストをどこに持っていくのか、ということ。キャンプ・シュワブの陸上部に埋め込まれるのか、埋め立てに使われるのか。名護市のごみ焼却場に持ち込まれて、市民の上に灰となって降り注ぐかもしれない。住民に説明がない限りは、もはやもうこれ以上基地からの被害を黙ってみているわけにはいきません」(沖縄平和運動センター議長・山城博治さん)。

「国が大気汚染防止法(※注)を平気で破るなんて、あってはならないこと。『国防だから』は、理由になりません。本土(ヤマト)では、こんな強行はできないでしょう。防衛省の沖縄差別を暴露したと思います」(前出・安次富さん)。

この日、座り込みの人々に、「県知事選が終わったら、新基地建設のための100b以上の工事用桟橋が作られる」とのニュースが伝えられた。この桟橋は埋め立てによって設置されるため、生態系豊かな辺野古・大浦湾の海の埋め立てが、事実上始められることになる。ニュースを聞いた人々は、「沖縄県民の闘いに焦る、安倍政権の悪あがきだ」「新知事の下で判断せよ」「これからも私たちの闘いを強めていこう」と声をあげた。

辺野古で〜権力とカネのバラまきによる基地押し付け

今年8月から、新基地埋め立て予定の海域で、海底ボーリング調査が始まっている。16カ所の調査地点のうち、水深の浅い7カ所の調査は9月16日までに終了。水深の深い地点、残りの9カ所の調査が残っているが、度重なる台風襲来や、目前に控えた知事選への影響を考慮して、海上での作業は中断している(陸地での工事は継続中)。

海上で抗議行動を行うカヌー隊への海上保安庁の暴力的な威嚇・妨害の実態が問題になっている。カヌーの直前に波を蹴立てて接近したり、罵声を浴びせる、拘束する、首を絞めるなどの暴力を振るう非暴力の抵抗に対して、暴力的な対応をする国家権力の姿は、ショッキングでもある。

そうして準備が進められている新基地建設だが、カヌー隊の金治明さんによれば、海兵隊の演習は変わりなく続けられているという。

「地域振興」にならないハコもの

金さんに案内してもらって、辺野古周辺を見て回った。キャンプ・シュワブのある辺野古区は、豊原区、久志区とともに久辺地区と呼ばれる。2006年の辺野古区の世帯数・人口は、922世帯、1799人。

辺野古の北側の高台には、国道329号線を挟んで、2004年に開校された沖縄工業高等専門学校(国立)の真新しい校舎と学生寮がある。やんばるの森に囲まれ、眼下には辺野古の美しい海が見渡せるという豊かな自然に囲まれた環境ではあるのだが、高専の敷地の裏には、キャンプ・シュワブのヘリ着陸帯があるため、CH46ヘリやMV22オスプレイが編隊で付近を低空飛行してくることもある。また、昼夜お構いなしの射撃訓練の騒音が聞こえるなど、危険と隣り合わせの教育環境と言える。

800人を超える学生と約100人の教職員をあてこんで、周辺に賃貸アパートが建てられたが、2年まで全寮制ということもあり、入居する学生の数も少ないという。辺野古のハーレー(沖縄伝統の船競漕)大会、区民運動会などの行事に高専チームとして参加するなどの交流があるが、日常的に学生が買い物するのは、国道沿いに1`歩いたところにあるコンビニ。休みの日も、バスで25分ほどかけて名護市の繁華街まで出かける学生が多く、辺野古への「経済効果」は期待外れの状態だ。

辺野古区の西にある豊原区には、1999年に設立された名護市マルチメディア館(研究開発や企業化支援、高度なマルチメディア技術者の育成など)、2001年に設立された国際海洋環境情報センター(深海生物の標本や潜水船の模型、ジオラマ等の展示)、2003年開設の沖縄北部雇用能力開発総合センター(北部地域の産業振興に貢献する人材の育成や雇用創出の支援拠点)、2004〜2013年にかけて開館されたみらい1〜4号館(ネット環境や安全対策などの環境を整えて、金融・IT関連の企業誘致を目指す施設)などの目新しい箱物が点在する。

これらはすべて、辺野古新基地建設計画と引き替えの沖縄北部振興策によるものだ。2002年には、名護市は国内唯一の「金融産業特別地区」および「情報通信産業特別地区」に指定され、今年4月には「経済金融活性化特区」に指定された。法人税・事業税の軽減、企業への投資での優遇措置などがあるのだが、実際に優遇を受ける際の条件が厳しいと言われ、「特区とは名ばかりで、企業誘致や雇用改善につながらない」との批判もあるようだ。

久志区は、3区内では最もキャンプ・シュワブから離れた位置にあるため、新基地に反対する声も多い。8日には、久志区が「これ以上の基地負担による教育環境の悪化には『断固反対』です」の横断幕を掲げた。11月1日、久志区と区行政委員会は、「オスプレイ配備撤回要求と辺野古移設反対」を決議、仲井真知事と安倍首相に送付している。

辺野古区は、もともと海辺の小さな農村集落だった(1948年当時、140世帯、634人)。1957年にキャンプ・シュワブ建設が着工されたのを契機に、それまでの海辺の集落の高台に新たな街づくりを行なった。「アップルタウン」と名付けられた辺野古の街は、米兵相手のレストランやバーが建ち並び、ベトナム戦争時には、やって来た米兵同士の肩がぶつかるほどの賑わいだったという。泥沼化しているベトナムに出撃前に酒や遊びで、不安や恐れを紛らわせていたのだろう。米兵が辺野古住民に暴力を振るったり、殺人や民家への不法侵入、窃盗と、犯罪行為も多発した。

辺野古区の最盛期もこの頃で、1965年の世帯数・人口は、309世帯、2139人と、ピークを迎えた。辺野古の街中を回ると、壁に星条旗や米兵を歓迎する英語のメッセージがペイントされた店舗があちこちで見られる。当時の賑わいを思わせるが、そのほとんどは廃屋状態だ。まさに、《辺野古のまちの姿は1960年代のまま、時が止まった感があります》(辺野古区HPより)。基地賛成派の人々は、「夢よもう一度」との思いでいるのだろう。

辺野古区内で「基地反対」を掲げている金城武政さんは、こう語った。「賛成派の間では、『金さえくれたらいい』という雰囲気になっています。国は、補償金さえバラ撒けば、と思っている。私は『国の騙しに乗るな。基地なんて良いことひとつもない』と言っているのですが、賛成派は『反基地の連中はバカだ』と言って、相手にしません。ハコものはいろいろできましたが、仕事は相変わらずありません。子どもが大きくなったらどうなるのか、一生国の言うことを聞いていて、どうなるのでしょうか」。(次ページに関連記事)

▼次号は、高江報告と元沖縄県知事・大田昌秀さんインタビューをお届けします。

  HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people★jimmin.com(★をアットマークに)
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.