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2014/11/7更新

新島襄精神蔑ろの、自公野合賛美

極右安倍政権を評価、村田晃嗣同大学長

浅野健一 ジャーナリスト/
同志社大学大学院社会学研究科博士課程教授(京都地裁で地位確認係争中)

「今回の決定は、平和な状況をより積極的につくり出し、維持しようという試みの一つだ。平和の看板を放棄したとか、戦争ができる国になるという指摘は到底当たらない」「より丁寧なプロセス(経過)を踏むことができました」「公明党の果たした役割は大きい」「安倍政権はしばらく安定飛行を続けていく」。

これは、第二次安倍晋三政権(自公野合)が7月1日に強行した集団的自衛権行使容認の閣議決定に関して、村田晃嗣同志社大学学長(法学部教授)が公明党機関紙「公明新聞」(7月11日)と創価学会系月刊誌「第三文明」(第三文明社)10月号に「寄稿」した記事からの引用である。

公明新聞で「戦争ができる国」否定

7月11日の公明新聞の見出しは《安保法制の整備識者の評価》《戦争できる国≠ノはならず個別法整備で公明は緻密な議論リードを》で、肩書は《同志社大学教授村田晃嗣氏》になっている。

《公明党が与党の中で慎重な態度を取ったことで、手続きの面でも中身の面でも、議論をより緻密かつ慎重に進めることができた。連立を組む公明党と調整を要した結果、与党として多角的な視点から検討することができた。安全保障という国家の根幹をなす課題を議論し意思決定する上で、今回のプロセスはわが国にとって良い経験になった》

《平和な状況をより積極的につくり出し、維持しようという試みの一つだ。平和の看板を放棄したとか、戦争ができる国になるという指摘は到底当たらない》

《日米関係がより緊密になり、PKO(国連平和維持活動)にもより積極的に関与できるようになる》

《閣議決定文の冒頭では、公明党の主張を受けて、日本が専守防衛などに徹してきた方針を確認した上で、「より確固たるものにしなければならない」と強調している》

《公明党には引き続き、緻密かつ多角的、建設的な議論のリードをお願いしたい》

村田氏は、9月初めに発行された月刊誌「第三文明」10月号で、「閣議決定を問うA集団的自衛権の問題から日本の未来を考える」というタイトルで、ここでは「同志社大学学長」の肩書を使っている。第三文明社は、創価学会言論部が主体になっている出版社だ。

「第三文明」は9月号でも、政治評論家・森田実氏と山口那津男公明党代表の対談「日本国憲法の平和主義を守り抜く結党50年へさらなる前進」を載せている。森田氏はまともな政治評論家と思っていたので、がっかりした。

村田氏は、10月号の記事で、自民党が公明党との調整で閣議決定に「より丁寧なプロセス(経過)を踏むことができました」と、公明党を賛美。「これは、弁護士出身である公明党の山口代表と自民党の高村副総裁が、従来の政府見解との論理的整合性を図りながら導いた結論であり、その点において公明党の果たした役割は大きい」。

続いて、《今回の閣議決定によって、日本が戦争できる国に変わってしまったという批判自体が、やや「ためにする議論」と言わざるを得ません。戦争とは、一国の能力、国の内外をとりまく環境、国民の意思などによって生じるものであり、憲法解釈の変更のみで行えるわけではありません》と述べている。

村田氏は、自衛隊の国連平和維持活動(PKO)派遣の際に、《「これで日本が他国の戦争に巻き込まれてしまう」との主張が声高に叫ばれました。しかし、そのようなことは結局おこりませんでした》と断定した。これは安倍首相の言い回しと同じだ。

《現在も一部のメディアが、「日本は戦争ができる国へと変わってしまったから海外へ逃げよう」などと不安を煽っていますが、そもそも世界の中では集団的自衛権を認めない国の方が少ないのです。つまり、海外に逃げたとしても、安全なわけではありません》

「安部政権は安定」とヨイショ

村田氏は、安倍首相について《第一次安倍内閣よりプラグマティック(現実主義的)になってきている》などと持ち上げ、政権に対しいくつかの助言を与えている。

7・1閣議決定は、日本版「国家安全保障会議」(NSC)設置、特定秘密保護法の強行成立、辺野古新基地調査承認、首相靖国参拝、武器輸出三原則撤廃などの危険な反動的政策の総仕上げだ。

村田氏が、戦争の原因の一つに「一国の能力」を挙げているのは問題だ。「国力」の弱い国は侵略されるという富国強兵肯定の思想だ。また、憲法解釈の変更のみで(戦争)を行えるわけではない、という主張は意味不明だ。

村田氏のPKO関連の記述は安倍首相の7月1日の記者会見での発言のオウム返しだ。首相は、第一次安保闘争の際、「戦争に巻き込まれる」という批判があったが、その後そういうことはなく、1992年のPKO法成立時にも、「戦争への道だ」と批判されたが、自衛隊の海外での活動は世界で評価されていると断定した。

私はPKO法に基づいてカンボジアへ自衛隊が派兵された際、いつか自衛隊が海外の戦争に巻き込まれることになると警告した。自衛隊はついに2004年、戦闘部隊をイラクに派兵した。名古屋高裁は、海自などのイラク全土での活動は違憲と判断し、高裁判決は確定している。

日米政府は今年末、日米安保のガイドライン(日米防衛協力指針)の再改定を予定しており、再改定では今回の閣議決定が反映される見込みだ。閣議決定に基づく「戦争関連法制」の改定・整備の法改定審議は先送りされたが、「海外で米国と共に戦争のできる自衛隊」作りは進んでいる。

村田氏が言う「日本は戦争ができる国へと変わってしまったから海外へ逃げよう」などと不安を煽っているメディアは、一体どこのメディアなのか。政党機関紙も含め、海外逃亡を提唱している報道機関を私は知らない。「第三文明」の中村智雄編集人に聞いたが、返答はなかった。

中村氏への電話取材で、村田氏の記事は、村田氏が原稿を書いたのではなく、編集部員の本澤氏が村田氏のところへ出向いてインタビューして、録音を字起こして記事にまとめたことが分かった。そうであるなら、「談、まとめ誰々」など明示すべきで、村田氏があたかも記事を書いたかのように見せるのは、偽装になり、報道倫理違反に当たる。

中村氏は次のように経緯を説明した―「公明新聞の村田氏の寄稿記事を読んで、もっと掘り下げて聞きたいと考えた。取材を申し込んだら快諾されたので、編集者が出向いた。原稿執筆の依頼はしていない。原稿を書いてもらってはいない。録音を字に起こし、たくさんの意見があったので、こちらの都合に従って編集部でまとめた。今回の閣議決定は今までの政府見解の延長線上にあり、憲法改憲ではないという点を重視した。先生にはご校閲いただき、『これでOK』と言われた。(記事)内容の責任はすべて編集部にある」

自分はしゃべっただけで、メディアが編集した記事を「寄稿」にしているのを、放置していいのだろうか。また、これだけバイアスのかかった見解を学長の肩書で出す必要があるのか、疑問だ。私は中村氏に、村田氏の言説に関する疑問点を挙げて質問し、回答を求めた。「村田先生にお伝えします」という返答だったが、10月25日現在、連絡はない。

[付記]村田氏は、昨年12月6日に成立し、今年12月に施行される特定秘密保護法にも賛成を表明している。

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