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2014/10/23更新

【台湾訪問報告】アジアの「脱原発」活動家が交流

事故収束できないまま原発輸出目論む核「先進国」の破廉恥

「不要核電的福島女人們」(原発いらない福島の女たち)黒田 節子

原発いらない福島の女たち・黒田節子さんが、台湾を訪問。第4原発(新北市)を凍結させた活動家らと交流した。第4原発は、日本からの輸出原発で、1号機原子炉は日立製作所、2号機原子炉は東芝、各発電機は三菱重工業が製造した。計画から30年、建設から10年を経過しているが、反対運動や度重なる事故により、未完成のままだ。

2013年2月、行政院長が住民投票で建設の是非を問う方針を示し、3月には台北をはじめ各地で10万人を超える反原発デモが行われた。反対運動が高揚する中、馬英九総統は4月末、1号機の稼働凍結と2号機の工事停止を表明した。

NNAF(ノーニュークス・アジアフォーラム)のツアーに参加した黒田さんは、福島の現状を報告。アジアの核問題を包括的に議論もした。日本は、事故原因も究明できないまま、インドネシア・トルコなどに輸出を目論んでいる。黒田さんの訪台報告を掲載する。(編集部)

国際会議

会議では、香港、モンゴル、インド、韓国、インドネシア、フィリピン、トルコ、日本からの参加者が、自国の状況を報告。アジアの核問題の深刻さが浮き彫りになった。

核「先進国」が後発国をだましてその国土を汚染しているし、国内で作りにくくなった原発を輸出しようとしている。とりわけ日本は、恥知らずな国である。その日本からの「フクシマ報告」は、アジアの参加者にどのように聞こえたのだろうか。

第4原発を凍結させた台湾民衆

台湾といえば、4月に5万人の民衆が台北市のメインストリートに座り込んで、第4原発がついに凍結された。そのような大規模な行動が可能だったか、興味を持っていたところだった。バスの中から見た駅前道路は平常に戻っていたが、あの広い交差点が原発反対の人々の群れであふれ、ついに政権が凍結を宣言した、と想像するだけで感動。それは完全に非暴力直接行動≠ナ、若い人たちが楽しげ≠ノぞくぞく集まってきた、と。なるほどね。それにしても、台湾の若者がなぜに元気なのか、以前からの疑問だった。

私なりに理解した答えは、@もともと脱原発派が多数なところに、A大物芸能人や文化人がネットを意識した新しい感覚での行動をたくさん作っていったことも、効果的だったそうだ。

視覚に訴える総統府前での人文字ダイ・インなどは、まるでスタントマンを大勢使った映画でも見ているようで、インパクトのあるアクションだ。加えて、B3・11フクシマ+元々の社会不満があったこと。これは言い換えれば代議制民主主義に対する不満でもあり、歴史を学んでみる必要があるようだ。

民主化闘争

台湾の歴史はほとんど知らなかった。ん〜、かいつまんで言うと、日本の敗戦後、蒋介石が1947年から1987年まで40年間も戒厳令をひいていたこと。その間、民主化を求める人々の苦闘の歴史があったのだ。この抑圧からの解放として昨今の運動が花開いた─と、すばらしい日本語の一人の長老が、素朴な私の質問に明瞭に答えてくれた。

今春、断食宣言をし、人々を結集して第4原発を凍結に導いた林義雄さんは、若い頃、戒厳令下で獄中にいるときに、母親と幼い娘さん2人を白色テロで虐殺されている。本人とお会いし、挨拶することができたが、まだまだ現役で頑張っておられる様子。

彼や友人たちは台湾民主化のリーダーであり、若い人たちにもたいへん尊敬されていて、日本のような世代間の分断は感じられなかった。儒教の影響で先輩の話をよく聞く習慣や文化があるのかもしれないが、次世代へしっかりと受け継がれたものがあるのは間違いないようだ。

旅の最中、香港で学生たちを中心とした民主化要求デモが起こった。その2日前にフクシマ報告した台北の「自由広場」でも、「香港に連帯する人々の群れにあふれている」と、興奮気味にアナウンサーは報じている。すごい。日本とは、どこが違うの?と、疑問は続く。

霧社事件

台湾は、明治生まれの私の父親が若い頃暮らしていた地である。現地招集で「霧社事件」の加害者側の一兵卒として関わっていた。「砲兵隊として、高砂族を標的にして山の上から大砲を撃った。双眼鏡で見ると、クモの巣をつついたように逃げるのがよくわかった」というような話を、生前に聞いた。

父はさすがに「酷いことをしたもんだ」と振りかえり、人々を悼む心情もあったようだが、その父の子として特別な気持ちを抱いたままの台湾訪問でもあった。

LanYu(蘭嶼)島で

台湾南端の東にある島にも行ったので、その話で報告を締めくくりたい。この島は、とてもきれいな島だ。30年以上前、「缶詰工場」と告げられて完成した建物は、放射性廃棄物の黄色のドラム缶の貯蔵所だったのだ。広大な貯蔵所、しかも海辺に。しかもドラム缶は極めて杜撰な保管状況で、人々がガンで亡くなったり、健康被害が出ている。海の汚染と津波も心配だ。住民が測定できる放射線検知器が必要だ。しかし、物をただ贈るだけではない支援(測り方、数字の持つ意味等々)が大切なことも、これまでの交流と経験からわかっている。

村の公民館でミーティングが持たれた。元村長さんが、品格ある挨拶の中にも「昔、日本人学者・鳥居龍蔵が島の大切な物品を持って帰った。返してほしい」と発言。あの場でこの発言は余程のことである。今も昔も、日本人がアジアに対してやっていることは同じではないか。私たちはどう応えたらいいか、大きな宿題を与えられてしまった…。

蘭嶼島で見た息を飲むように美しい海の迫力が忘れられない。童話に出てくるようなおもしろい形をした巨岩たち。ここが核で汚染されるなんて。これは全ての命や、宇宙に対する冒涜以外の何物でもない。

蘭嶼島で誕生日を迎えたが、ツアーに同行していたもう一人の節子さんも同じ月日に生まれたという。島の小さな食堂で皆さんに祝っていただいた。国内外のいろんな人と出会った旅でもあった。漢字での筆談がかなり通じるので、往復の長い船中でもせっせと国際交流。フクシマに敏感に反応する台湾の若者たちでした。

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