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2014/10/13更新

第31回全国地域・寄せ場交流会

貧困・格差の拡大/裏で進められる生活保護の切り捨て

9月27〜28日、大阪市内で「第31回全国地域・寄せ場交流会」が行われた。

今年は、@最近の生活保護制度をめぐる動きについて、A除染労働者の実態について、Bジェントリフィケーション─の3つのテーマでの全体会と、@こども、A居宅後の支援、B野宿者襲撃、C寄せ場と在日、D若者の労働運動、E夜回り─の6つの分科会が行われた。

生保については、吉永純さん(花園大学教授)の講演「いま、改めて『自立助長』の意味を問い直す〜貧困の現状と生活保護の課題」、また谷口伊三美さん(東淀川区役所生活困窮者自立支援担当課長代理)、大口耕吉郎さん(全大阪生活と健康を守る会連合会会長)、徳武聡子さん(司法書士)からの報告・パネルディスカッションがあった。その内容をまとめて、生保をめぐる概略を報告する。(文責・編集部)

2千万人の貧困者

日本では、貧困が拡大している。厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査の結果」によれば、貧困の基準となる貧困線(※注@)は、149万円(1997年)から122万円(2012年)に下降。同時に相対的貧困率(貧困線に満たない世帯員の割合)は、14・6%(1997年)から16・1%(2012年)に上昇している。

これは世界的に見ても高い。2000年代中期のOECD加盟国30カ国中、日本はメキシコ(約18・5%)、トルコ(約17・5%)、米国(約17%)に次ぐ4番目の相対的貧困率となっている。

特に、子どもがいる現役世帯で大人1人(母子・父子家庭)の場合の相対的貧困率は突出しており、58・7%(2003年)の数値は、OECD(経済協力開発機構)30ヵ国中、ダントツの最下位である。

2009年度の貧困率は16%、2040万人が相対貧困の状態だ。しかし、生保を受給しているのが176万人であることから判断すると、生活保護は貧困者の1割未満しかフォローできていない。

保護費削減のための3つの「改革」

こうした現状に対し、政府は3つの「改革」によって対応しようとしている。

第1に、保護基準の引き下げだ。保護費の増大を問題視した政府は昨年8月、今年4月と、生活保護の生活扶助基準の引き下げを行った(さらに来年4月にも予定)。

「8月から月6000円ほど減額された。これは3人家族の夕食1人×1カ月分。来年(2014年)、再来年(2015年)と同じ額が減額されたら、家族全員の夕食がなくなってしまう」「スーパーではまず見切り品を探す。納豆が30%引き、半額とかになっていると、『ああ良かった、これで今日は食べられる』と思う。普段はふりかけご飯とインスタントみそ汁だけ。食べる物がなくて、『お母さんは体調が悪いから、あんたたちで食べて』と言って、子どもたちだけに食べさせることもある」(いずれも母子家庭)との声は、どれも切実だ。

第2に、生活保護法改悪。主な「改正点」は、、@申請手続きの変更(必要書類の提出が義務付けられ、生保申請のハードルが上がる)、A扶養義務の強化(扶養義務者の収入や資産の状況等が調べられる)、B医療扶助の適正化(ジェネリック薬品の使用義務付けなど)、C就労による自立の促進、D不正受給対策の強化(罰金額の引き上げ)、などだ。

第3に、「生活困窮者自立支援法」(昨年12月可決、2015年4月施行)の制定。この支援法の問題点は、@生活保護制度の見直しと一体のものであり、生保見直しによる財源で確保する必要がある、とされていること(財政抑制)、Aあいまいな支援事業(必須事業は相談と住宅確保給付金だけのため、自治体間格差の恐れがあること、「就労支援」への偏り)、などがあげられる。

大阪市の違法な締め付け

大阪市は、全国でも保護率が最も高い(今年1月の保護率5・61%、全国平均は1・63%)。市は生保予算の切り捨てを強行しているが、福祉現場での違法・異常な人権侵害の多発が問題になっている。70代の女性が歯痛を訴えて医療券をもらいに行ったところ、若いケースワーカーに「口を開けてみろ」と言われたり、ガンで退院したばかりの50代女性が「仕事を変わって収入を増やせ」と言われたケースなどが報告されている。

大阪市は2011年3月に、「不正受給防止マニュアル」を作成・配布。そこには、「相談者からの話を疑いもせずに鵜呑みにするようなことはないように、最初から疑ってかからない限り、短時間の調査では不正を見抜くことは困難」とあり、相談者を頭から疑え、という姿勢が現れている。

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「生活保護は社会権(社会的・経済的弱者を守るために保障される権利)であり、人間の『生』を無条件で保障し、肯定するということ。『生きていて良かったな』という人生を保障する制度であり、その条件に該当する人に漏れがあってはいけない、という原則に立ち返らなくてはならない」(吉永さん)。

現在、生活保護費の引き下げ処分は、憲法で保障する生存権を侵害する、として群馬・愛知・三重・宮崎・佐賀・熊本で集団提訴がおこなわれた。引き続き他の地域でも提訴する予定だ。

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※@貧困線…「それ以下の収入では最低限度の生活も維持できない」と考えられる統計上の境界線。OECDの基準では、等価可処分所得(世帯の可処分所得〈収入から税金・社会保険料等を除いた「手取り」〉を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分の数値が算出額となる。

※Aケースワーカーの充足率…社会福祉法は生活保護を受給する80世帯に1人(町村部では65世帯に1人)をメドにケースワーカーを置くように定めている。

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