2014/10/13更新
川内原発再稼働をめぐる攻防が、決戦局面に突入した。同原発再稼働は、全国の原発再稼働の突破口となるため、重要度は言うまでもない。9月27日には全国相談会が行われ、28日午前、川内原発ゲート前闘争、午後、鹿児島市内で全国集会が行われた。
全国集会には、鹿児島史上最大の7500名が参加。川内現地・福島からの報告のほか、菅直人元首相も特別ゲストとして再稼働阻止を訴えた。午前中のゲート前闘争には、200名が参加。アピール・パフォーマンスが続き、各団体が九州電力への要望書を手渡して、全国集会に合流した。(編集部・山田)
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9月27日には、川内文化ホールで「再稼働反対全国相談会」が行われた。全国から100余名が参加し、活発な議論を交わした。相談会は、実質的に今後の反対運動の具体的作戦を決める場であり、詳しい現地情報も報告されたので、概要を報告したい。
9月26日、川内原発に隣接した久見崎海岸に、再稼働阻止テント村が設営され、「脱原発テント6号店」と名付けられた。九州電力前テント(福岡)を1号とし、続いて経産相前テント(東京・2号)。その後、羽咋(石川)、大飯(福井)など、全国で反原発活動の拠点として建てられたテントの6番目を意味する。 テントは国有地に建てられたために、即日、県・市・県警が聴取にきたが、今のところ、強制立ち退きなどの妨害行為はない。 テントの原則は以下のとおり。@非暴力不服従、A近隣住民との友好関係に強く留意する、B自力更正を基本とし、出入りも自由、C運営上の原則はないが、他者との友好的関係を維持し自由に存在することを前提とする。 こうした原則のもと、第2,第3のテント村建設を期待している。誰かの承認や許可は不必要なので、「自由に建てて反原発の意思を表明してほしい」とのこと。 再稼働阻止テントは、その宣言で「再稼働を目論む者の目的は、あれこれ理屈を並べても、結局は自己の薄汚い経済的野心だけ」、「社会的・経済的に有力な者が原発を推進し、多くの無力な者がそれに反対しているという、ある意味では実に単純な構造」と看破している。 初発メンバーの一人である淵上太郎さんは、「大飯原発再稼働監視テントの地平を受け継ぎ、直接行動の拠点にしたい」と語っている。大飯監視テント村(2012年)は、170張を越えた。川内テント村でも思いをこめたテントを張り、世間の耳目を集めて、「何としても再稼働を止めるための結集点としたい」(淵上氏)という。連絡先:090-3919-0604(淵上) |
再稼働阻止全国ネットは、10月から来年1月を決戦の4カ月としている。この間に、@全国統一行動(10月26日)、A国・県による「住民説明会」への対応と「もう一つの住民説明」、B九州電力全支社への抗議行動、などを行う。相談会では、全国ネット・柳田真さんが主な方針を提案し、議論が始まった。
同氏は、まず小渕優子経産相がしきりに「廃炉」をPRしていることについて言及し、「一見良いことのように見えるが、PRの目的は、再稼働に向けた世論操作だ。廃炉と再稼働をセットにした世論工作として警戒すべきだ」と語った。
さらに「地震保険料の15%増額を政府が認可したことは、政府自身が地震活動活発期になっていることを認めている証拠だ」として、日本列島が地震・火山・津波の活動期に入っており、「原発の危険性は高まっている」と指摘した。
続いて、鹿児島反原連有志・岩井哲さんから、以下のような現地報告。―川内原発再稼働反対運動は、これまで基準地震動が低すぎると批判して主に耐震性を問うてきた。ところが、南日本新聞が春頃から火山問題を特集・連載し始め、火山問題が大きなテーマとしてクローズアップされている。
川内原発周辺には、桜島を含む姶良カルデラをはじめとして、北東に小林カルデラ・加久藤カルデラ、南に鹿児島湾の湾口部分に相当する阿多カルデラ、さらに南側の鬼界カルデラという、5つのカルデラが連なっている。世界中の原発を見渡しても、こんな危険な立地環境は他にない。火山の危険性で言えば、「川内原発は世界一危険な原発である」と、反原連も全国に訴えてきた。
にもかかわらず、全くと言っていいほど対策が立てられていない。その理由は、30〜40年前の原発建設当時、火山問題は、建設する電力会社の視野に全く入っていなかったからだ。規制委員会も全く考慮してこなかったのだが、1990年頃から火山学会の議論と調査が活発化し、火山活動の実態がわかってきたという事情がある。
特に姶良カルデラは、鹿児島湾の海の下にある海底火山なので、正確で継続的な観測が困難である。このため爆発の予測は不可能といわれている。再稼働反対の論拠としていきたい。
続いて「川内の家」・岩下雅祐さんが、「52円運動」について報告した。
―再稼働をめぐる攻防は、決戦局面に入っている。地震・津波・火山という基本的な問題は、住民間で広く議論され、特に避難計画のずさんさについては、住民の不信感が高まっており、確実に行政を追い詰めている。
10月9日から5カ所で規制委員会による住民説明会が始まるが、〆切直前に参加希望者が殺到し、入場者は抽選となった。再稼働推進勢力が、下請土建会社などを動員し、会場での議論を制圧するための動きであることは、明らかだ。
説明会では、推進派と反対派が膝つきあわせて座り、再稼働反対派が問題点を指摘し規制委員会を批判すれば、賛成派が当局の説明に「異議なし」を叫ぶという、緊迫した直接対決の場となる。
こうしたなか川内現地の反対派は、「52円運動」を始めた。再稼働について葉書で賛成・反対を示してもらうという住民投票運動だ。できれば週単位で双方の票数を公表し、グラフレースにできればいいと思っている。
この運動の要は、住民に52円の切手を貼ってもらうという点だ。署名のようにサインするだけでなく、少なくとも52円の金を払って考えてもらい、自分の意見を表明する決意を求めている。住民個々人の主体性を問う運動となっている。
試しに3人で市内の住宅を訪問してお願いしたところ、断られたのは数軒だった。自治会として投票葉書を配布する地域も出てきた。自治会長の連合会議では、「避難計画について議論すべきだ」という提案もされている。行政の末端組織と思われてきた所でのこうした住民の動きに、推進に前のめりになっている市・県当局が、腰砕けになり始めている。
こうした現地情勢を踏まえて、新たな行動が必要な時期となっている。全国では何をどう進めるのか?具体的に議論し、底辺からの動きを作り出していきたいと思う。─
現地情勢の追加として、鳥原良子さん(川内原発建設反対連絡協)が、住民世論と議会のねじれの実態を語った。
―薩摩川内市で住民アンケートを実施したところ、1800通の回答のうち、85%が反対だった。ところが議会を見ると、市議26人中、反対を表明しているのは4名。実に85%の議員が賛成派となっている。議会と住民の世論が全く逆転している。
市長は、地元同意について「議会の意見を尊重」としているため、市長と議員に地元住民の意見を届けるために52円運動を展開している。―
薩摩川内市では、10月9日に説明会が行われる予定だ。10月15日に規制庁の県内説明会がすべて終わると、川内市議会は、結論を出すための動きが一気に加速する。10月下旬頃から再稼働をめぐる陳情・請願の審議が始まり、市長は臨時議会を招集して、「地元同意」を表明するというスケジュールを組んでいる。
こうした流れのなかで、川内市の「地元同意」を阻止するための戦術が話し合われた。
反対派川内市議からは、「賛成派の議員も真意は変わり始めている」との報告もなされた。住民の不信感は地元議員にも伝えられているため、再稼働の関わる案件について「投票は無記名で」との声が漏れ始めているという。利権ゆえに賛成を表明している議員も、あからさまな再稼働賛成決議には二の足を踏まざるを得なくなっているようだ。
そうした反対世論を市として意思表示しているのが、いちき串木野市だ。同市では、6月から再稼働反対緊急署名が取り組まれ、全住民の過半数に当たる15400筆を集めた。これは、県への大きなプレッシャーとなっているだけでなく、署名集めの体制が維持されているために、原子力規制庁の住民説明会に対抗するため、住民自身の事前説明会を開催し始めている。
住民説明会への参加希望者が低迷したのには、住民説明会自体への不信感があるという。規制庁官僚が来て1時間説明し、住民の質疑は30分だけ、という時間配分なので、「住民への説明はした」というアリバイに使われるのではないか?との不信感である。ネット中継もない。このため、「緊急署名の会」や「かごしま反原発連合」は、当局の一方的な説明会ではなく、公開討論会にするよう求める署名を集め始めている。
川内原発が再稼働第1号に選ばれたのは、「安全」だからではなく、「地元同意」が容易と見られたからだ。地元住民の反乱は、推進勢力にとって最大の打撃となる。30`圏内自治体の動向も含め注視したい。
九州電力鹿児島支社は、管内の8月の販売電力量について、大口電力を除いた一般需要が前年を10・2%下回った、と発表した。天候不順に加えて、自家発電が普及したことが影響している。
このため九州電力は24日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づく契約のうち、すでに申し込みをしている事業者約7万件と、今後の新規申し込みについて、25日から数カ月間回答を保留すると発表した。
北海道電力、四国電力、東北電力も30日に新規の買い取り契約を当面停止すると表明。東京電力や関西電力も受付の制限を行っている。理由は、太陽光発電の申し込み急増で、すべてを接続した場合、季節によっては発電電力が需要を上回る恐れがあるからというもの。
つまり買取中止は、再生可能エネルギーが、原発を含めた全供給電力量を確保できた事の証しであり、原発再稼働は必要ないことを証明していることになる。
2016年には、電力自由化が控えており、既存電力会社が、経営的に窮地に追い込まれることは必至である。
原子力に頼ってきた電力会社が、経営難を見越して、原発を再稼働させ、歴史の針を戻そうとしているのである。
再稼働阻止運動は、確実に電力会社を追い詰めている。あと一押しなのではないか。
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