2014/8/3更新
7月に入り、安倍政権は「辺野古新基地建設」に向けて、動き始めた。沖縄防衛局は1日、キャンプ・シュワブ内の滑走路予定地にある建物の解体工事を開始。工事に先立つ海底ボーリング阻止行動を抑えるため、キャンプ・シュワブ沖の埋め立てエリア一帯を「立ち入り禁止海域」に設定。基地反対派の立ち入りをシャットアウトするため、全国の海上保安庁から人員・船舶を動員(前号6面参照)した。7月19日には、沿岸から約500b沖の長島に、海上保安庁が「使用・立入禁止」の看板を設置。20日には、午前2時という深夜に、トレーラーで「立ち入り禁止海域」のためのブイ・フロート(浮き)などの資材を搬入した。さらに、キャンプ・シュワブの新第1ゲート前や、辺野古漁港で「基地反対」の座り込みを続けている市民への監視も続けられている。
25日に京都市内で行われた「【ジュゴンの海に基地を作らないで!】沖縄・辺野古新基地建設着工を許さない7・25現地報告集会 in 京都」の様子を報告する。(編集部一ノ瀬)
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「安倍首相は、辺野古新基地建設のスケジュールが遅れていることに、ものすごく焦っています」─ジュゴン保護キャンペーンセンター事務局長・蜷川義章さんは、現状を次のように報告した。
今年1月の名護市長選で、「辺野古の海にも陸にも基地をつくらせない」と訴えた稲嶺市長が再選され、「市域を管理し、市民の生命財産を守る責務から、市長としての管理権で阻止する」との立場を堅持している。ブロック製作の仮作業場(=漁港の埋め立て)、燃料タンク設置、上水道の引き込み、工事にともなう文化財保全協議など、名護市の承認を受けなければならない案件は多く、埋め立て準備は、まったく整っていない。
埋め立て用土砂のメドも、まだ立っておらず、政府は、@辺野古ダム周辺の切土、A海砂の搬入、B県外からの土砂購入、の3案を示しているが、それぞれ、@赤土流出の恐れがあり、名護市が反対、Aジュゴンの餌場を横断するため生態系に影響、B外来種が持ち込まれる恐れ、という問題点が指摘されている。
辺野古周辺の海域では、ジュゴンの食み跡が110本確認されている。また、2007年以降、論文発表されたイトアシロウソクエビなどの新種が10種、国内で初めて確認されたオオウラハネウミシダなど6種の発見が伝えられるなど、改めて辺野古の海の豊かさが再確認されている。さらに、日本で初めての事例となるサンゴ礫が付着して成長した鍾乳石が、長島の洞窟で発見されている。
7月1日、キャンプ・シュワブ内の解体工事が開始され、本土のマスコミは、「辺野古基地建設工事が始まった」と報道して、基地建設は既成事実とのイメージ作りに一役買った。しかし、これはV字滑走路の予定地の陸上部にある建物を解体して、作業ヤードを建設する工事だ。しかも、解体予定の12棟のうち6棟にアスベストが使用されていることが明らかになり、解体工事は中断されている。
またボーリング調査の前には、不発弾がないかを確認する磁気探査をやらねばならない(180日程度)。
安倍首相は、7月上旬に防衛省幹部に対して「なぜ作業が遅れているのか!さっさとやれ!」と、机を叩いて怒鳴りつけたという。沖縄防衛局は、7月中にはボーリング調査に入りたい意向だったが、天候の影響で、8月中旬以降に大幅に予定が遅れる見込みだ。
しかし、何より基地建設工事を止め、安倍を追い詰めているのは、名護市民をはじめとする、沖縄県民の闘いの成果なのだ。
続いて、京都沖縄県人会の大湾宗則さんが発言。辺野古は、「普天間の移設」ではなく、キャンプ・シュワブと周辺の辺野古弾薬庫、キャンプ・ハンセンと一体的に運用し、さらに軍事機能を強化した「新基地の建設」であることを指摘した。
具体的には、辺野古新基地は、強襲揚陸艦(軽空母)が接岸可能な軍港機能を併せ持っている。これまで海兵隊の海外出兵時には、佐世保まで移動して強襲揚陸艦に乗り込んでいたが、辺野古に軍港ができれば、直接出撃が可能になる。
安倍政権は、島嶼防衛に必要不可欠として、自衛隊の「日本版海兵隊」創設を目指している。しかし本当の狙いは、海外の多国籍企業の権益を守るために、相手国の「同意」「要望」でどこにでも自衛隊を派兵できるようにすることだ。安倍首相には、昨年1月のアルジェリア人質事件で、プラント建設を行っていた日揮の関係社員が死亡したことが念頭にあるのだろう。海外への多額の投資を行っている日本企業にとって、現地での労働争議やデモは、大きな脅威だ。現に、アジア各国に進出した日本企業は、いまなお法秩序を無視した労働者への対応も多い。
会場から、「沖縄の闘いに勇気づけられながら、京都でも辺野古に基地をつくらせないための取り組みをしている。しかし、最近の集団的自衛権の行使容認など、安倍政権の暴走にどういう闘いを取り組んだらいいか迷ってしまう」との発言があった。それに対して大湾さんは、今年1月の名護市長選の名護市民の闘いを例に出して、「稲嶺市長の当選は、自分たちの主権を守るために、名護市民自身が燃えて立ち上がったことが大きな要因だ。政党や他人に任せるのではなく、『私たちが闘うんだ』ということが大事だと思う」と答えた。
最後に、@今後緊迫していく沖縄現地の情報収集や共有、A現地の人を呼んでの学習会・集会、B緊急時にはデモ・集会を行うこと、C現地に人を派遣して直接辺野古とつながる動きを組織していくこと、を訴え、「NoBase沖縄とつながる京都の会」への参加を呼びかけて終了した。
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